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夫の秘密、或いは妻の秘め事(17)

2014 09 16
2人の男の間に会話はなかった。人妻のダンスパートナーである紳士の意志を読み取ったかのように、白い制服に身を包んだ給仕が、静かに希美子の肢体に接近した。

太い柱の陰、こちら側での出来事だった。夫を含め、テーブルに座る客たちからは完全に死角になっている。沈黙を貫いたまま、若い給仕が希美子の両腕をとった。

「ちょっと、何するの?・・・・・・・・」
希美子は、やや強い口調で彼を制しようとした。

だが、若者の腕に込められた力は、それを上回る強さを備えていた。希美子のすぐ隣に身を置き、彼はそこにいる人妻の両腕を束ねて上方に固定するような姿勢を強要した。

「やめなさいっ・・・・・・・・・・・・」
突然のことに戸惑ったまま、希美子は給仕を非難するように言葉を吐いた。長身の彼にとっては、希美子の両腕を束ねて固定することは、さして困難ではないようだった。

「奥様、あまり手荒な真似はしたくないんですが」
麻スーツに身を包んだ目の前の男が、希美子を見つめながら相変わらずクールな声でささやいてくる。かすかな嫌悪感を彼に覚えながら、希美子はきつい視線で見つめ返した。

「こんなこと、許した覚えはありません・・・・・・・・」
「ご主人に叱られるでしょうか・・・・・・・・」

「当たり前です・・・・・・・・、許すはずがありませんわ・・・・・・・・・・・」
「奥様はどうですか?」

「ふざけないでください・・・・・・、私だって・・・・・・・・・・・・」
「聞こえますよ、奥様の本能の声が・・・・・・・」

「えっ・・・・・・・・・・」
「奥様の本能は、どこかでこんなことをお望みではないでしょうか」

「馬鹿にしないでください・・・・・・・・・」
希美子のきつい口調は、しかし、目の前の男を喜ばせているだけのようだった。

依然として、生バンドの演奏が淡々と続けられている。周囲で踊るカップルの数は、増える一方のようだった。だが、彼らの誰もが、希美子たちに関心を注ごうとはしなかった。

黒色のワンピースを僅かに乱し、両腕を給仕の手で強引に固定されている人妻の姿を、周囲の客はちらりと見つめながらもダンスを続け、自分たちの情熱的な行為に没頭している。

周囲の変化のなさが、希美子の心に妖しげなさざなみを与えてくる。男の行為がここから先に進んでしまうことを希美子は想像し、柱の向こう側にいるであろう、夫のことを想像する。

あなた・・・・・・・、助けてください・・・・・・・・・

夫の秘めた欲情のことを意識しながらも、希美子はそう祈った。あの海の家とは違う。妻がこのような仕打ちにあっている姿を、はっきりとその目で目撃したのなら、きっと夫だって・・・・・・。

いったん離れていた目の前の男の手が、拘束された希美子の肢体に再び伸びてきた。人妻のすべやかな肌を確認するように、希美子の頬でその指先を上下させる。

微妙な手つきだった。その指先が耳元に及ぶだけで、希美子は確かな震えを感じた。彼のことを見つめたまま、希美子は厳しい視線を注ぎ続け、そして、何度も首を振った。

彼の手が、希美子の顔を固定した。そして、再びその唇を重ねてくる。

「いやですから・・・・・・・・・」
小さな声を漏らしながら、希美子は頬を振って彼の責めから逃げようとした。だが男の要求は先刻とは一転して、厳しいものだった。希美子の顎を固定し、強く唇を押し付けてくる。

「ううんっ・・・・・・・・」
逃れることもできず、希美子は男の吸い付いてくる唇の刺激を感じた。硬く唇を閉ざし、希美子はそれが過ぎ去るのを待つことしかできなかった。

次第に荒々しく、乱暴な様子で、麻スーツの紳士は希美子の唇を吸い始めた。興奮を隠そうともしない男の姿に強い嫌悪を覚えながらも、希美子は同時に羞恥に似た気分を感じ始めていた。

肢体が熱く、全身が火照ってくるような気がする。このような激しいキスを与えられている光景を別の客に見つめられていることを知るだけで、希美子は体奥に形容できない熱を感じた。

両腕を動かそうとするが、完全に固定されている。無防備な自分を感じながら、希美子は肢体を振るようにばたばたとくねらせ、苦しげな息を漏らし続けた。

「うっ・・・・・・・・・・・」
男の舌先が唇をこじ開けようと伸びてくるのを感じながら、希美子はかすかな声を漏らした。彼の指先は、依然として撫でるように希美子の耳から頬、そして首筋を刺激してくる。

その指先が辿る部分が、特に熱を帯びてくるような気分になっていく。その指が、やがて希美子の背中にまわり、ダンスのときのように、そこを優しげに撫で始める。

一方の手が背中から前方に向かってくる。ドレスの下に豊かに膨らんだ希美子の美乳に、彼の手が置かれる。両腕を拘束された人妻の胸元を、彼がたっぷりと愛撫し始める。

「やっ・・・・・・・・・・」
声を漏らした希美子の唇に、男の舌先が素早く侵入する。己の舌先にそれが触れた瞬間、希美子は一瞬動きを止める。だが、すぐに我に返ったように唇を閉ざす。

ようやく口づけをやめ、彼が希美子を再び見つめる。そのまま、10本の指先をねっとりと運動させ、希美子の乳房をどこまでもいやらしく、官能的に揉みしだいていく。

「奥様、どんな気分ですか」
「不快なだけですわ」

「ご主人はなかなか助けにいらっしゃいませんね」
「ここでは・・・・・・、ここでは見えませんから・・・・・・・・・・」

「そうでしょうか・・・・・・・、それが理由でしょうか・・・・・・・・・・・」
「何をおっしゃりたいんでしょうか・・・・・・・・・・」

僅かな戸惑いを浮かべた人妻の首筋に、男はそっとキスを与えた。そのまま舌を伸ばし、先端を震わせながら、希美子の肌毛をくすぐるように、舐め始める。

しないでっ・・・・・・・・

鳥肌が立つのを感じながら、希美子は激しく首を振った。揉まれ続けている乳房から、妙な感覚が拡散し始めてくることを感じる。あのマッサージ師のことを、希美子は想起する。

彼に全身を愛撫され、緊張から解き放たれた肢体は、あの日、脚を自分から広げるような状態にまで導かれた。それが不貞で背徳的な行為であることを、希美子は勿論自覚している。

自分自身をこれ以上、妙な行為に溺れさせてはいけない。心の中でそう繰り返しながらも、希美子は自問する。それが本当に本能に素直な気持ちなんだろうか、と。

確実に息が乱れ始めていた。このような姿勢を強制され、乳房を愛撫され続け、首筋を舐めるように犯されては、平静な息遣いを維持することなど、無理に決まっている。

希美子はそう考えながら、次第に息を漏らしそうな自分を許そうとした。首筋にキスを浴びせてくる男の舌が、何度も希美子の顎に伸び、そして唇をこじ開けようとする。

乳房を責めている一方の手が、再び希美子の背中に伸びる。背中のファスナーに彼の指先がかかり、僅かではあるが、下方に引きずりおろされる。

「何するんですか・・・・・・・・」
想像以上の行為を試みてくる男に、希美子は深い戸惑いを隠しきれない。

彼の指先が、希美子の素肌を撫でながら、ブラのホックに素早く到達する。片手の指先だけで、彼は人妻の下着のそれを外す。ドレスの下で、希美子はブラの拘束が緩んだことを感じる。

再び双の手を駆使し、男は前にも増して激しく希美子の豊乳を愛撫してくる。その責めに屈するように、希美子のドレスの下で、少しずつブラがずらされていく。

「・・・・・・・・・」
唇を噛み、希美子は瞳を閉じた。ドレスを着ているにもかかわらず、乳房が少しずつ露わにされていくような気分を希美子は感じた。やがて、右側の乳房から、ブラが完全に剥ぎ落ちていく。

明らかに硬く突起した乳房の先端がドレスに触れる。その敏感なポイントを、男の指先がドレス越しに撫でまわす。ドレスの乱れが少しずつ加速し、背中のファスナーが下方に移動していく。

素肌が外気に触れてくることを感じる。ドレス越しに乳首をつままれ、乳房をたっぷりと愛撫される。首筋に吸い付いた男の舌先が、希美子の鎖骨付近を舐め回す。

胸元から拡散する妙な感覚が、希美子の冷静さを少しずつ奪っていく。周囲の踊り手、そして生バンドのメンバーまでもが、自分のあられもない格好を見つめている気がする。

見ないで・・・・・・・・・

いつしか、希美子の両腕は解放されていた。給仕の姿はどこかに消え去っている。柱と自分の間に麻スーツの男がいる。人妻をバックから抱擁し、肩越しに伸ばした両手で乳房を愛撫してくる。

「もう・・・・・・・、もうやめてください・・・・・・・・・・」
希美子の懇願を制するように、男の指先が口元に伸びてくる。希美子の唇を撫で、男はその指先を濡らし、やがて強引にそこに挿入する。

「はんっ・・・・・・・・・・」
男の指先を咥えたまま、希美子は何かにすがるように周囲に視線を投げる。そして、希美子気づく。正面の巨大なガラスに、店内のテーブル席が反射して映し出されていることに。

ガラスに浮かび上がる妻の姿を、食い入るように見つめる夫がそこにいる。


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