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妻達のクライマックス~絶頂編(1)

2009 09 01
新宿3丁目、株式会社竹の上建設本社ビル。営業企画部の常務室に、1人の訪問者の姿があった。その部屋の主である男は、愛人としている若い女性秘書に対しても、室内への立ち入りを固く禁じていた。

「それで、首尾よくいきそうなんですか、鮎川さん?」
日の出幼稚園の理事長代理、高津は遠慮なくタバコを吹かしながら、そう言った。

「いや、まだまだ一筋縄ではいかんかもしれませんよ」
遥かに年少の高津を見つめながら、鮎川は恨めしそうにつぶやいた。

「これも全て、高津さん、あなたが幼稚園サイドを固めておかなかったせいですよ」
「まあ、そうでしょうかね・・・・」

鮎川の批判を無視するように、高津は適当な口調でそう言った。

「PTAの反発は簡単に予想できた。事前のミーティングでも何度も念を押したでしょう」
「ええ・・・・」

「PTA会長を抑えているから大丈夫、というあなたの言葉を信じてたんですけどな」
鮎川のその言葉に、高津は岩崎聡美の姿を思い浮かべる。

確かに、岩崎聡美に指示を下せば、PTAの連中の反対運動など、簡単に抑え込めると思っていた。だが、実際はそうではなかった。

岩崎聡美自身、どうにもできなくて戸惑ってしまうほどの強いうねりが、主婦達の間から沸き起こったのだ。中里珠代をはじめ、何人かの人妻達の巧みな戦略のもとに。

「まあ、その点は私もお詫び申しあげますよ」
殊勝にそう言いながらも、高津は言葉を続ける。

「ところで、中里珠代と社長の面談はいかがだったんですか?」
「ああ、あれですか」

灰皿にたばこをもみ消した高津と入れ替わるように、今度は鮎川が手にしたそれに火をつけた。ソファに深く腰を沈め、煙をたっぷりと吸い込みながら、彼は目の前の男を見つめた。

この男は、今回の計画でいったいどれだけ儲けるのだろうか・・・・・

幼稚園周辺に保有していた膨大な土地を手放すにあたり、妥協を見せず、強気な姿勢で交渉を仕掛けてきた高津。

土地収用に抵抗を続けた周辺住民への説得も、彼が行ったと聞く。当然、それなりの手数料が彼の懐に流れ込んでいるはずだ。

一度、経理に確認してみるか・・・・・

高津のもとに渡る金は、会計書類に掲載されるものだけではない。だが、裏の数字を含め、経理部長は詳細を把握しているはずだ。

鮎川は、そんな好奇心とともに高津を見つめながら、話を続けた。

「とりあえず、あの奥さんの弱みを握ることはできましたよ」
「弱み、ですか」
高津の瞳が、強い関心を伴ったことを示すように、鋭く光る。

「詳細は高津さんにもお教えすることはできませんがね」
「冷たいじゃないですか、鮎川さん」

「とにかく、その会談を通じて、我々は優位に立ったのは事実ですよ。社長は、このまま強引に突き進んでしまえって言ってるんですけどね」

鮎川のその証言どおり、山内は確かにそんな指示を出していた。

「もうあの連中に構うことはない。一切無視して、計画を進めるんだ」
「あのビデオはどうしますか、社長?」
「あれはまだ使う必要はない。こっちの首を絞めることにもなりかねんからな」

これが、山内の考えだった。だが、鮎川自身、それに完全に納得しているわけではなかった。高津は、それを敏感に嗅ぎ取っていた。

「鮎川さんも社長と同じ意見なんですか?」
「いや、私はそう簡単に事は運ばないと思ってます。ご存知ですか、最近一段と反対運動の勢いが増しているのを」

確かに、鮎川の指摘通りだった。山内と珠代の一件があった日以降も、人妻達の反対運動は依然として毎朝継続されていた。それをサポートするように、マスコミが取り上げる頻度も上昇する一方である。

「ええ、そのようですね」
「社長は強行突破しようというんですが、私はね、もう一度、あの人妻連中と話し合いの場を持つ必要があると思うんですよ」

そう話す鮎川の表情に、好色そうな色が一瞬浮かんだのを、高津は見逃さなかった。

「社長にはそう進言するんですか?」
「いや、これは私の一存でやろうかと思ってます」

はっきりとした口調でそう言うと、鮎川は決意を示すように、タバコを力強くもみ消した。

「とりあえずは何らかのアプローチをしてみるつもりです」
「鮎川さん、中里珠代の弱みを掴んだとおっしゃいましたね」
高津は、鮎川の胸の内を鋭く見抜いた。

「さすが高津さんですな。よくおわかりでいらっしゃる・・・・」

鮎川の脳裏に、山内に抱かれる珠代の姿が蘇っていた。あの肉体を社長だけに独占させるのは、あまりに惜しい。しかも、同レベルの人妻がまだ何人かグループ内にいるのだ。

社長の指示に背いた鮎川の暴走が始まった。



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