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妻の素顔(1)

2010 01 28
昨年秋のことです。私は妻と一緒にアジアのある国へ旅行に出かけました。

43歳の私は、昨年、勤続20年を迎えることができました。大学卒業後、大手化学メーカーに就職した私は、大きなトラブルもなく、何とか無事にその20年間を過ごしてきました。

同期の中では決して出世頭とは言えませんが、まずまず順調な昇格を達成しています。バブル期の入社である私の同期は数百人レベルにも上り、退職した人間、或いは何らかの失策を犯してしまった人間も数多くいます。

それを考えれば、私の会社人生は、順風満帆ともいえるものでした。

29歳のとき、私は妻と出会い、そして1年にも満たない交際期間を経て、結婚に至りました。恥ずかしい話ですが、妻を妊娠させてしまったんです。

妻は私より7歳年下で、今年36歳になります。派遣社員として私の会社で働いていた彼女は、結婚当時まだ22歳でした。

私の一目ぼれでした。長身ですらりと伸びる脚が印象的な彼女は、どちらかといえばおとなしいタイプでしたが、よく整った知的な顔立ちをしていました。

周囲の男性社員は、当然彼女にアプローチを仕掛けましたが、結局彼女をものにしたのは私でした。自分で言うのもなんですが、真面目に仕事に取り組んでいる姿が、彼女には好印象に映ったのかもしれません。後日、妻はそんな風に話してくれました。

周囲に隠れて交際を始めましたが、先程書いたとおり、間もなく妻が妊娠しました。二人とも別れるつもりは全くなかったので、迷うことなくゴールインしたのです。

翌年には長男が誕生し、我々は幸せな生活を送ることになりました。結局、子供は一人だけとなったのですが、妻は私の勤続20年達成を、陰ながら支え続けてくれたのです。

「大西君、勤続20年休暇はどうするんだい?」
部長にそんな風に聞かれたとき、私に特段アイデアがあったわけではありません。

「いや、別に計画はないですが・・・・・」
そう答える私に、部長は故意に渋い表情を見せながら、言葉を続けました。

「それはいかんな。とかく会社に来たがる連中ばかりだから困るんだよ。制度は制度だ。今年は大量の勤続20年組を抱えてるんだから、君が率先して休んでくれよ」

「はあ・・・・・」
「はあ、じゃないぞ、大西君。どうだ、たまには美人の奥さんを海外にでも連れていってやれよ」

部長は、妻が派遣社員にいた当時このことを知っています。もう結婚して10年以上というのに、未だに部長は何かあれば、妻のことを「美人の奥さん」と形容して、私をからかってきます。

私の勤務する会社には、勤続20年を迎えた社員に、1週間の休暇が与えられるという制度があります。これまでは、恐らく半分以上の社員がそれを実際に取得することはなかったのですが、最近ではその風潮も変わりつつあります。

有給休暇を含め、積極的に休みはとる、という流れが人事部主導で強まってきており、管理職にもその指示は徹底されつつあるんです。

部長の本心はどうか知りませんが、とにかく昨今の社内の雰囲気も察した上で、私にそんな声をかけてくれたのだと思います。

「どうする優里、部長から今日こんなこと言われたけど・・・・」
帰宅後、私は妻にさりげなくそう聞いてみました。

「あら、1週間も休めるの?」
最近、少し疲れ気味に見えていた妻、優里は、珍しく明るい表情を浮かべました。

「ああ。まあ、有給を絡めればもう少し長く休むこともできるんだけどな」
「ふーん。凄いわねえ、そんなに休めるのかあ・・・・」

私たちがそんな風な会話を交わしていると、息子の大樹が口を挟んできました。中学に入ったばかりの息子は、まだ反抗期らしい気配はなく、私たちと頻繁に会話を交わしてくれます。

「いいじゃん、ママ、パパと行って来れば?」
「えっ?」

「せっかくパパが頑張ったんだから、たまには二人で行って来なよ。俺は一人で留守番してるからさ」

私には息子が、たまには一人で暮らしたい、と要求しているように聞こえたのですが、すぐ近所に私の両親がまだ健在ですので、息子の世話の心配はありません。

私は、次第にその気になっている自分を感じていました。

「どうする、優里?」
「そうねえ・・・・・・」

思案する様子の妻の表情にも、たまには日常の生活から解放されたいという願望が漂っているようでした。この話題を持ち出してから、彼女の顔つきが何となく明るいものに変わったんです。

「よし、じゃあ大樹、いいかな、お前の言葉に甘えても」
「当然だよ。どこへでも好きなところ行って来なよ」

我が家では、国内での泊りがけの旅行は半年に1回程度の割合で今も続けていて、勿論、息子も常に一緒です。それもあってか、息子はたまには私たち夫婦だけで、と彼なりに気を使ってくれたのかもしれません。

私は息子が随分大人になったことを感じながら、勤続20年休暇を取得し、妻と旅行に行くことに決めたんです。

「行き先はどこがいいかな、優里?」
「そうね、突然のことだから、何だか迷っちゃうわね・・・・・」

その夜、私たちは寝室で、早速あれこれと旅行のプランを練り始めました。部長の進言もあり、私はどうせなら海外へ、と考えていました。

海外出張は何度か経験した私ですが、新婚旅行でアメリカ西海岸に行って以来、妻と一緒に海外に行ったことは一度もなかったのです。

「せっかくだから海外に行こうか、優里?」
「えっ、本気なの、あなた?」

「ああ。部長もそう言ってくれたからね。世界遺産なんかどうだい?」
「あ~、いいなあ、それ」

妻は昔から歴史への関心が強く、テレビでもそういった類の番組をよく観ています。私はそれを踏まえながら、そんな提案をしたんです。

そんな風にして、私たち夫婦の海外旅行は始まろうとしていました。

私はこの旅行に対して、勤続20年とは別に、ある目的と言うか願望を抱いていました。結婚してから数年後、妻を襲ったある出来事の記憶を、少しでも払拭したい、と思っていたんです。




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↑「密会」続編、完結しました。長い間、応援本当にありがとうございました!




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