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共犯者~美奈子の水着姿(1)

2009 01 01

ウェスティンホテルを背に、ホテルロードからマリンドライブへの急な坂道が続く。


5月だというのに、焼けつくような暑さだ。真っ青な空から降り注ぐ日差しの強さは、日本のそれとは明らかに違う。後方を振り返れば、タモン湾の濃いブルーの海面が一面に広がっている。


「今頃が一番暑いらしいわよ、グアムは」

助手席に座る妻、美奈子が私にそう語りかけた。整ったその顔に、島内最大のスーパー「Kマート」で買ったばかりの超格安サングラスがよく似合っている。


「そうかもな・・・・、暑さの質が違うな、日本とは・・・・」

まだ慣れぬ右側通行の道路だ。赤信号でも右折は可能である。私はマリンドライブを右折し、一気にグアム南部へ向けて、愛車、日産セントラを加速させた。


観光客が集中するタモンを後にし、しばらく車を走らせれば、政府関連施設、銀行などが立ち並ぶアガニア地区はすぐそこだ。


「へえ、野球場があるんだ・・・・」

地球の歩き方最新版を片手に、折り込み地図を睨みながら、妻は周囲の観光スポットを、新人ツアーガイドのように説明をしてくれる。


「そうだよ。巨人はよくキャンプに来るからな、グアムは・・・」

特にジャイアンツファンでもないが、野球好きの私は、そのパセオ球場の外観を見て、つい子供のように心を弾ませてしまう。


「今年の春も投手陣だけはキャンプしたんじゃないかな。確か長嶋も来たはずだよ」

ミスターと遭遇するチャンスを数ヶ月の差で逸したことを少しばかり悔やみながら、私は空いた二車線の道路に車を走らせていく。


「グアムに駐在だってさ・・・・」

私の初めての海外赴任の辞令は随分と急なものだった。


ホテルマンになってまだ10年足らずであったが、系列ホテルがグアムに新規開業することとなり、私は経理担当補佐として駐在を命じられたのだ。


「え~、グアム!?・・・・・」

あまりの突然の展開に、妻の美奈子もただ驚くだけだった。


結婚してまだ1年足らず。当時、我々にはまだ子供もおらず、長い新婚生活を楽しんでいるような状況だった。そもそも私達が出会ってからもそれほど時間が経っていたわけではない。


私が勤務していた都内のホテルに、友人の結婚披露宴のために妻が訪れたとき、私達はひょんなことから出会った。抜群の美人、とは言えないが、私は妻の雰囲気に強く惹かれた。


スリムな体形に、清楚な顔立ち、そこには何か男好きのするような要素が見え隠れしていたのだ。短い交際期間を経て、我々は急ぐように結婚し、二人だけの生活を始めていた。


「私、行った事ないわよ、グアムなんて・・・・」

「俺だってないさ・・・・・」

ハワイとは異なり、グアムの知識など我々はほとんど持ち合わせていなかった。サイパンとグアムの区別さえできないほどだ。


しかし、そんな諸々の不安も、いざ島に到着してしまえば、すぐに吹き飛んでしまった。私達はタムニング地区の海を望んだコンドミニアムに居を構え、お互い初めての海外生活をスタートさせる。


結局、そこでの生活は約3年続いた。長い新婚旅行ともいえるようなその日々を終え、現在私達は、5歳になる娘とともに、東京近郊で暮らしている。


私は相変わらずのホテル勤務だ。毎日碧い海を自宅から眺めていたあの日々は、もはや夢のように遠い。


時々、私はあの頃の生活をぼんやりと思い出す。懐かしむのではない。私がいつも抱くのは、かすかに悔やむような気持ちだ。


ちょうどグアムでの生活が半年を過ぎた頃、私達夫婦はある出来事に遭遇した。その影響は、今もなお我々夫婦の間に濃厚に存在し、二人を激しく揺さぶり続けている。


その出来事のことを、私はこれから話したいと思う。そうすることで、未だに混乱した自分自身の気持ちが少しでも整理できるような気がするからだ。


あれは、今からちょうど8年前、私が30歳、妻美奈子が27歳の年のことだ・・・・。



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