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誘われた妻~香奈の秘め事(1)

2010 10 25
「ねえ、パパ、起きて。あかりが熱出しちゃったみたいなの」

妻のそんな声で私が目を覚ましたのは、ある日曜日の早朝のことでした。別室で眠っていた私は、不安げな様子の妻が、枕元にいるのがわかりました。

「これじゃ、外出どころじゃないわ。もう、何でこんな日に熱出ちゃうのかしら」
「何度ぐらいあるんだ?」
「さっき測ったら8度7分だったよ・・・・」

いつもは陽気な妻の沈んだ表情が、私の目に飛び込んできます。この日は家族3人で遠出をする予定だったこともあり、妻は明らかに落胆していました。

「まあ仕方ないさ。まだあかりは1歳だ。熱ぐらい出すさ」
「でも、こんな高い熱、あかりには初めてよ。あの子、風邪も引いたことないんだから」

「で、どうしてるんだ、今は?」
「布団でぐったりして寝てるよ」

起き上がった私は、娘の様子を見るために和室へと行きました。そこは、妻と娘がいつも二人で寝ている場所です。

穏やかな表情で眠っている娘ですが、やはり、どこかいつもと様子が違うようです。額に手を当ててみると、相当に熱いことがわかります。

「夜、何回か起きたんだけど、その頃から体がほかほかだったのよねえ。咳とか鼻水はないんだけど、いったい何なのかしら・・・・」

「あれじゃないか、この前少し言ってた、突発性何とか・・・・」
「突発性発疹?」
「そうそう、それだ。何の症状もなく、突然高熱が出るんだろう?」

あかりは私たち夫婦にとって初めての子供です。乳児の病気について以前より詳しくなったつもりでも、実際には私たちはまだ何も知らないと言えました。

特に私はそうでした。子育ては専ら妻に任せていることに加え、娘がほとんど病気もせずに1歳を迎えたこともあり、私の知識は極めて貧しいものでした。

「突発性かあ。確かにその可能性もあるけどねえ」
眠っているあかりの頬にそっと触れながら、妻が不安げにそう答えます。

予定していた外出は勿論キャンセルし、その日私たちは終日家にいることにしました。場合によっては休日診療をしている病院に行くつもりでした。

しかし、しばらくして目を覚ましたあかりは、それほど不機嫌な様子もなく、いつものようによちよち歩きをして、おもちゃで遊び始めました。

「これなら病院は大丈夫かなあ」
すぐに熱は下がるだろうという希望を込め、妻がそんな風につぶやきます。

「そうだな。まあ、明日朝も熱があれば病院行けば?」
「そうね。明日は下がってるといいけどなあ。ねえ、あかり?」

ママにあやされて、あかりの顔に笑顔が浮かびます。しかし、どことなくいつもの弾けるような勢いがない笑顔でもあります。

少し食欲は減りましたが、何とか食事も口にしました。結局その日は病院に行くことはせず、自宅で様子を見て、そして、翌日の朝を迎えることにしました。

翌朝も娘の熱が下がることはありませんでした。やはり8度台後半です。会社から何度もメールをして、私は近所のクリニックに行った妻と連絡をとりました。

「先生も何だかわかんないんだって。風邪かなあ、って言ってるぐらいで」
「そうか。じゃあ、しばらく様子を見るしかないのかな」
「パパ、やっぱ突発性かもよ。そろそろやってもおかしくないと思うから」

数日間高熱が続いてその後全身に発疹が出て回復するという、乳幼児特有の病気があることを、私は妻から少し前に聞きました。

確かに、症状を見る限り、そう思えないこともありません。私たちは、あまり深刻に考えることなく、娘の回復を待ちました。

しかし、娘の状況はなかなか改善に向かいませんでした。一時は9度台まで上がった体温は、3日目以降は7度台後半から8度台前半に下がりましたが、いっこうに平熱に戻ろうとしません。

食欲も少しずつなくなり、一日中元気なく、妻に抱っこされているようです。私たちが期待していた解熱、そして発疹が現れることもありませんでした。

不安ばかりの1週間が過ぎ去りました。妻が何度か連れて行ったクリニックでは、「しつこい夏風邪はこれぐらい長引きますよ」と、薬をくれるだけのようです。

咳や鼻水のような目立った風邪の症状はありません。深刻でないといえばそうですが、熱が下がらないのはやはり気になります。

医師は、週が明けても熱が下がらなかったら血液検査をしましょうと言っているようです。1歳になったばかりの娘の体に何が起こっているのか、そのときの私たちには見当もつきませんでした。

「じゃあ、今日、あかりの検査してくるからね」
「結果わかったらすぐにメールくれよ」
「うん。いい知らせだといいけどねえ」

月曜の朝、私は妻とそんな会話を交わして家を出ました。その日の朝も、あかりの熱は8度台前半のままでした。

不安を忘れることができなかった私は、オフィスでも仕事に集中することができませんでした。そんな私の携帯が鳴ったのは、お昼少し前のことです。

メールではなく電話がかかってきたことで、私は何か緊急なことが発生したのだと予想しました。それは間違ってはいませんでした。

「パパ、大変。あかり、入院してくださいだって・・・・」
「えっ、入院?・・・・・・・」

妻、香奈の言葉を、私はすぐに受けいれることができませんでした。



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