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目覚め(10)

2017 02 17
二日目の体験教室が始まった。

「午前中はゆっくりできましたか、佐代子さん?」

今日も自分だけしか生徒はいないようだ。それをどこかで望んでいたはずだったが、いざ川原と二人きりになると、佐代子はなぜか昨日とは違った緊張を感じた。

「ええ。主人はまた朝から釣りツアーに出かけましたので」

「じゃあまたお一人でプールに?」

川原は広い室内を準備のために動きながら、佐代子にそう訊いた。

「今日はずっと部屋で過ごしました」

「それはもったいない。せっかくだから水着でリラックスされればいいのに。でも、ご主人とご一緒じゃなければ楽しくないですね」

「そういうわけじゃないんですが、ただ・・・・」

佐代子は昨日午前の出来事を再び思い出し、少しばかりの戸惑いを感じた。だが、彼には言ってしまってもいいような気がした。

「昨日一人でプールに行ったんですが、他のお客様に少しいたずらされたものですから」

「いたずら?」

「泳いでいたら3人の男性の方に声をかけられて、それで強引に取り囲まれて・・・・」

川原は少し驚いたような顔を浮かべ、作業の手を止めた。

「それはいけないな。ホテルスタッフには言いましたか?」
「いえ・・・・、何とかその場を逃げることができましたから」

佐代子は少し顔を赤らめて、川原にそう答えた。プールでいじめられる自分の姿を彼が想像しているような気がして、佐代子はもう何も言うことができなかった。

午前中にはまりこんだ戸惑いから、彼ならば救い出してくれるかもしれない。そんな期待を抱いてここに来た佐代子。だが、自分が迷路の更に奥深くに向かっていることを、佐代子は感じ始めていた。

「始めましょうか、佐代子さん」
人妻の嫌な記憶を消し去ろうとするように、川原が明るく声をかけた。

「お願いします」
「今日はろくろを回してみましょうか」

川原は、佐代子を昨日とは違う場所に案内し、座るように促した。目の前には電動で動くというろくろが設置されている。

「できるかしら、私に」

「佐代子さんはセンスがありそうですから大丈夫ですよ。どうか、無心になってろくろを見つめてください」

「無心、ですか?」

意外な言葉に、佐代子は少し不思議そうに聞いた。

「自分が誰で、どんな生活を普段しているんだとか、ご主人はどんな方だとか、そんな日常をきれいさっぱり忘れ去って、生まれたときの姿に戻っていただきたいんです」

「生まれたときの姿・・・・」

「そうすれば、土のほうから佐代子さんに向かってきて、ろくろを回しているだけで自然に陶器が完成します」

川原の言っていることは難解だったが、でも佐代子にはわかるような気がした。

「そうやってできた陶器が私自身が望んでいた陶器ということなんでしょうか」
「さすがですね、佐代子さん」

ろくろが音を立てて回り始めた。単調だが、意思を持っているかのようなその回転は、佐代子を非日常の世界へと少しずつ引き込んでいった。

川原に言われた通り、佐代子は無心になろうと試みた。それは、初めての試みだった。ヨガや瞑想をする人たちは、こんな風なのだろうか。佐代子は過去の自分を洗い流し、雑念を忘れ去ろうとした。

日々の生活、そして夫のことを忘れた。川原が言ったように、佐代子は生まれたときの自分にまで回帰しようとした。

波の音が、ろくろの回転音に入り混じって聞こえてくる。なのに、佐代子はかつてないほどの静寂を感じた。

手の中の粘土が、気づかなかった自分の夢想を具体化するように、様々な形で動いている。本当に、土が意志を伴って動いているように思えてくる。

「佐代子さん、少し手伝いましょう」
川原が、いつの間にかすぐ後方に座っていた。佐代子の腕をとるように手をそっと差し出してくる彼。

初めて彼に触れられた佐代子。だが、人妻は何の抵抗も覚えなかった。

彼に全てを委ね、佐代子は細い腕を、そして指先を動かした。少しずつ川原の体が接近してきても、佐代子は嫌がる素振りは見せなかった。

彼の指導する指が、佐代子の腕を押すように何度も動く。彼は足を開き、佐代子を後方から抱え込むような格好で座っている。

「もう少しこっちのほうから土に触れてみてください」
川原のささやきが、耳元で聞こえる。彼の息が、佐代子の耳を震わせる。

彼に言われるまま、粘土を撫でるように、指先を動かしていく佐代子。ろくろの回転音が、催眠行為を誘うように響き続ける。

やがて、佐代子は目を閉じた。川原の両手が、佐代子の両腕を優しく掴んだ。そして、人妻の剥き出しの腕を撫でるように、彼の手が動き始めた。

身に着けている薄いピンクのワンピースはひざ丈の短いものだった。佐代子の生脚は、ろくろに向かうために最初から広げられていた。

佐代子の指先が、土を離れた。ろくろは音を立てて回り続けている。まるで、秘匿行為を隠そうとするように。

心地よさを伴った刺激。人妻の腕を後方から愛撫していた彼の指が、弧を描きながら動きを拡大していく。

ワンピース越しに背中から脇腹の辺りを撫でられたとき、佐代子は初めて気づいた。自分が激しく鼓動を高めていることに。

「佐代子さん、嫌ならすぐに教えてください」
人妻の太腿を撫でながら、彼がそっとささやいた。

目を閉じた知的な人妻の表情が、ほんの少しだけ歪んだ。だが、佐代子は何も言葉を発しなかった。

彼に何かをされたかったわけではない。佐代子はただ、生まれたままの自分になって、彼にもう少しだけ身を任せたいと感じていた。

触るか触らないかのような距離感を維持しながら、彼の指先が佐代子の太腿をワンピース越しに撫でていく。

佐代子の下半身に震えを伴った熱が走り始める。膝頭をくすぐるように動く彼の指先が、何度も佐代子のワンピースの裾を掴んだ。

どうしようもなく熱い自分を、佐代子は知った。その熱は、彼の指先がスカートの内側に滑り込んできたとき、一気に高まった。

あっ・・・・・・

無意識のうちに、人妻は唇を噛んだ。しかし、彼の手はすぐに外に退行し、再びワンピースの上から佐代子の太腿を撫でていく。

延々と続くろくろの音が、佐代子から時間の感覚を奪い去っていく。まわりこんだ彼の手が、今度は佐代子の腹部を撫でる。

その手の端が、人妻の盛り上がった胸の裾野に何度も触れる。ブラの感触を確かめるように動く彼の指先。

だが、柔らかな膨らみを、その手は決して触らない。ぎりぎりまで接近しながら、それを覆うことなく、再び指先は佐代子の美脚へと向かう。

太腿からヒップにかけた熟れた曲線を撫でてくる彼の手。ショーツのラインに沿うように動く彼の指。佐代子はまっすぐに座り続けようと懸命に姿勢を正すが、全身に力を入れることができない。

彼の手がまたスカートの中に伸び、佐代子の両内腿をこまやかに揉み始めた。僅かにめくりあがるワンピース。最奥にある泉が、既に大量の蜜で濡れ始めていることを佐代子は感じていた。

だが、彼は決してそこに手を伸ばそうとはしない。佐代子は次第に、自分が罰を与えられているような気分になってきた。

夫にここまで時間をかけて何かをされることはない。体奥が激しく疼く。乱暴に彼に扱ってほしいという、屈折した欲情が湧き上がってくる。

ああっ・・・・・・・・

叫びたい。あられもない風に、振舞ってみたい。熱く蕩ける蜜が下着を濡らし、ワンピースを汚すほどに滴り落ちてくるような気がする。

駄目っ・・・・・・・・・

彼の手は、泉のすぐそばで佐代子の柔らかな腿肉を愛撫し続けている。下半身が何度も震える。つま先で立つように佐代子の脚の指が緊張をはらみ、サンダルが滑り落ちる。

椅子の上で動き始めた人妻の腰。いつしか、佐代子はぐったりと後方の彼にもたれかかっていく。

ろくろの音は続き、焦らすような彼の指の責めも終わろうとはしない。激しいのどの渇きと、どうかなってしまいそうな秘所の熱。

彼に強引に唇を奪われ、服を脱がされる自分を、佐代子は想像する。

いやっ・・・・・・・・

佐代子の頬に赤みが差し、閉じていた唇が僅かに開いた。彼の手に初めて力が込められ、人妻の両脚を広げた。

「あっ・・・・・・・・」
人妻が遂に漏らした小さな喘ぎ声が、ろくろの音にかき消された。


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