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脅迫(34)

2010 03 22
これじゃあまりに安っぽいストーリーじゃないの・・・・

体が覚えているか確かめてやる、などという陳腐な科白を口にする赤木に強い抵抗を示さない自らを非難するように、志織は心の中でそうつぶやいた。

冷静さを維持しようとする志織の邪魔をしているのは、久雄の存在だった。既に2階の寝室にいるはずの夫は、この部屋の風景を見つめているに違いないのだ。

夫に見られているという恥ずかしさと同時に、彼の前で大胆に振る舞いたいという、自分でも戸惑うような感情が、志織の体奥に芽生えてくる。

何を考えてるの、私は・・・・

テーブルの下に手を伸ばし、志織はスカートの裾を膝に密着させた。侵入を果たした男の足を追い出そうと、きつく両脚を閉じる。

「奥さん、もっと楽になさってください」
抵抗らしい態度をようやく見せた志織をあざ笑うかのように、男の足は窮屈に挟み込んでくる人妻の柔らかな内腿をいじめ始める。

「やめてってば・・・・」
耐え切れず、志織は遂に声を漏らした。かすかな音量の声が、果たして夫に届いているのかどうか、志織にはわからなかった。

夫に気づかれたくはない。こんな風にカメラから隠された場所で、男に刺激され、それを容認するような態度をとっている自分を、志織は夫に知られたくはなかった。

「声をあげますよ、赤木さん・・・・」
「あげたところで誰か助けにでも来るんでしょうか?」

紳士に徹していた仮面を脱ぎ去り、赤木は少しずつ欲情を曝け出して来る。志織の美脚をつま先で愛撫しながら、じわじわと奥へと進んでいく。

「奥さんの体が何を覚えているのか確かめたいだけですよ」
男のその言葉は、人妻から抵抗の意志を奪う効果が確かにあった。

無理に彼の行為を抑えこもうとすると、赤木の言うとおり、自分の体が敏感に反応していることを認めてしまうような気がする。

しかし、そのままやり過ごすことなどできるはずもない。現実に、自らの下腹部が熱くなり始めていることを、志織は感じていた。

「赤木さん、やっぱりあなたはこんな人だったんですね・・・・」
「奥さんがあまりに美しいからですよ」

つま先を人妻のショーツに触れる部分にまで到達させ、赤木は小刻みにそれを動かした。耐え切れないように、志織は強く椅子を引き、それから逃げた。

「奥さん、随分敏感なんですね」
「・・・・・」

「ご主人に言ってしまいましょうか、あの小屋での出来事のことを」
椅子に座ったまま、赤木は平然とそうつぶやいた。志織はその場に立ち上がり、彼のことを見下ろした。

様々な考えが志織の頭の中を駆け巡っていた。事前の打ち合わせで、武本が口にした言葉を、彼女は今、はっきりと思い出していた。

少しでも赤木に襲おうとする気配が感じられたら連絡をくださいと、確かにあの刑事は言っていた。こうなったら、その瞬間を早く引き寄せればいいだけだ。

志織は、どこかで焦っていた。これ以上、赤木と二人きりの時間が続いてしまうと、自分がどんな反応を示してしまうのか、怖いような気がしていたのだ。

しかし大丈夫だ。すぐに夫が刑事に連携してくれるのだ。脅迫めいた言葉を赤木は口にし始めている。後は、この男に私を襲わせるだけでいい。カメラの前で・・・・。

「奥さん、いいんですか、ご主人に全て話してしまっても」
繰り返される赤木の脅迫に、志織は困惑する態度を敢えて示そうとした。あくまでも彼のペースで事を進めてあげればいい。

「赤木さん、それだけはやめてください・・・・」
「だったらそんな風に逃げないでくださいよ」

「そんな・・・・」
「私は奥さんの体が何を覚えているのか、調べたいだけなんですよ」

どこまでも淫らな表現で、赤木は要求を重ねてくる。志織は観念した様子で床に立ちつくし、赤木を見つめた。

「どうやらわかっていただけたようですね、奥さん」
「だったら、私は何をすればいいんでしょうか?・・・・」

男の拘束が近づいていることを確信してどこか強気の言葉を口にしながらも、内心では志織は全く異なる気分を抱えていた。いつ赤木が立ち上がり、自分に抱きついてくるのか、志織はその瞬間のことだけを想っていた。

早く襲いなさいよ・・・・、その時があなたの最期の瞬間だから・・・・

挑発するような志織の視線に反応するように、赤木が椅子から立ち上がる。そして、志織のいる場所にゆっくりと歩み寄ってくる。

唇を噛み締め、志織はその男を射るような視線でにらみつけた。

「怒った顔はますます色っぽいですよ、奥さん」
志織の耳元で囁きながら、赤木は緊張をはらんだ彼女の意表をつくようにすぐ後ろを通り過ぎ、キッチンの冷蔵庫へと向かう。

遠慮なく扉を開け、冷えた缶ビールを取り出す。それを握り締めたまま戻ってきた赤木が、再び志織の耳元に口を近づける。

「まずは服を脱いでもらいましょうか、奥さん」
「・・・・」
「脱ぐんですよ、全部。ほら、何か思い出しませんか?」

その場に立ったまま、志織は何も反応することができなかった。背後にいる赤木を見つめることもできなければ、彼の言葉を冷静に受け止めることもできない。

「どこかで同じようなことを言われたでしょう、奥さん?」
志織は、彼の脅迫の言葉がカメラを通じて久雄に届いているのか考えようとしたが、すぐに、それはどうでもいいと思い直した。

襲われる光景を、夫に示せばいいだけだ。男の前で服を脱がされるのならば、それだけでもう、十分な証拠になるのではないのか。

「わかったわ・・・・」
志織はそういいながら、胸元のボタンに指先を伸ばした。そして、隠しカメラの存在する壁を、ちらりと見上げる。

あなた、できるだけ早く刑事さんに連絡して・・・・

秘かに夫にすがりながら、志織はゆっくりとボタンを外していった。薄いツイード地のジャケットを脱ぎ去り、志織がそれをテーブルに置いたとき、背後にいる赤木が缶ビールのプルアップを開ける音が響いた。

「次はスカートだ、奥さん」
右腰のホックを外し、ジッパーをおろす。夫にこんな姿を見つめられていることを再び思い出し、志織は濃厚な羞恥心に襲われる。

「早く脱げよ、奥さん」
赤木が握り締めたビール缶で、志織のヒップをスカートの上から撫でる。

人妻の肢体がかすかな反応を示したことに笑みを浮かべながら、彼はそのビール缶を志織の口元に運び、中の液体を強引に注ぎ込もうとする。



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