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嘘のしずく(14)

2010 05 01
リビングに面したいくつかのドアのうち、1つが固く閉ざされている。その向こう側には私たちの寝室、更にはバスルームがあった。

かすかなシャワー音がドア越しに聞こえてくる。晃子が浴びているのだ。西脇夫妻を強引な態度で引き止めた私は、その音に気づかぬ振りをした。

「何だか図々しいような気もしますなあ、こんな風にだらだらと・・・・」
先に寝ると言った晃子に恐縮するかのように、西脇は何度もそんな言葉を漏らす。しかし、相変わらず酒を飲むペースを落とそうとはしない。

「いいんですよ、妻はいつもあんな風ですから」
私はそう言いながら、なつみの顔をちらりと見やった。晃子との関係があまりうまく行っていないことを、私は無意識のうちになつみに伝えようとしていた。

「そうですか・・・・、じゃあ、もう少しだけ続けましょうか」
皿の上に並べられたサラミに手を伸ばしながら、西脇がつぶやく。隣に座るなつみのことは、まるで気にしていない様子だ。

彼女もまた、マイペースで振舞い続ける夫のことを、突き放しているかのように見えた。西脇のこんな態度は、いつものことなのかもしれない。

しばらくの後、ドアが開き、晃子が顔を覗かせる。シャワーを浴びた妻は、既に髪を乾かし、薄いピンクのTシャツと白色の膝丈スエットに着替えている。

「すいません、じゃあ、私お先に・・・・」
西脇となつみが立ち上がり、申し訳なさそうな雰囲気で頭を下げる。あとはよろしくと言うように、私に視線を送った後、妻は再びそのドアを閉めた。

彼女の表情には、明らかに安堵の色が浮かんでいた。人見知りが強いとも言える妻にとっては、今夜は確かに苦痛の時間だったのかもしれない。

それから更に30分近く、私たちは飲み続けた。グラスを傾けるのは、専ら西脇だった。私は、彼の様子に満足しながら、何杯ものお代わりを用意した。

やがて、もうそろそろといったムードが漂い始めた頃、顔全体を赤らめ、明らかに泥酔したかのような西脇が突然椅子から立ち上がり、窓のほうへ歩いていった。

「いい眺めですなあ、風間さん」
この部屋に来たとき、なつみが漏らしたのと同じような感想を述べた後、彼はそばにあるソファに遠慮なさそうな雰囲気でどかっと腰を下ろした。

握り締めたままのグラスの中の液体をさらにあおり、黒い革張りのソファに更に腰を沈めていく。足を投げ出し、盛り上がった腹の上にグラスを置く。

「ああ、少し飲みすぎましたよ」
気持ち良さそうにつぶやく西脇が、そっと目を閉じる。テーブルに座ったまま、私はその男の姿を祈るような思いで見つめた。

彼は、私の願望をわかっているかのように、一度閉じた目を開こうとはしなかった。やがて、一定のペースで西脇はいびき交じりの呼吸を開始する。

私の斜め前に座っているなつみは、後方にいる夫に視線を投げようともしない。ワンピース姿で姿勢を正したまま、その人妻はテーブルのワイングラスを見つめている。

「ご主人、寝たかもしれませんよ」
西脇に背を向けたままのなつみに、私はそう教えてやる。彼女はそれでも振り向こうとはせず、私のことをじっと見つめてくる。

「もう耐えられないんです、私・・・・」
「・・・・・・」

「あの人、酒癖が最近特に酷くなって、いつもこんな風になるんです」
「相当に速いペースで飲んでたからね」

「一度寝ちゃうと、あの人、朝まで絶対に起きませんから・・・・」
なつみのその言葉に、私はその人妻の別の意志を感じた。それを察したことを教えるために、私は彼女に言った。

「それは家内も同じですよ」
「えっ?」

「うちのやつも、一度寝ると朝まで目を覚まさないタイプなんです」
閉ざされたドアを見つめながら、私はささやくようにそう告げた。

それは別に嘘でも何でもなかった。ベッドに入ってもなかなか寝付けない私とは異なり、晃子は驚くほどすぐに眠りに落ちてしまう。そして、一度眠ってしまうと、簡単には目を覚まさないのだ。

私となつみは、互いの科白の意味を確かめ合うように、しばらく黙って見詰め合った。張り詰めた空気の中に、西脇の野太いいびきの音だけが響く。

「奥さん、こちらに来ませんか?」
私は、先日のように親しげに彼女の名前を呼ぶのではなく、敢えてそんな風に言った。西脇の意識がまだあるのでは、と恐れていたのだ。

少し迷った様子を見せた後、なつみは立ち上がり、座っていた椅子をテーブルの下に静かに押した。晃子が座っていた椅子に近づき、緊張した風に腰を下ろす。

私たちはソファに寝そべる西脇の姿を見つめながら、テーブルに並んで座る格好になった。なつみは飲み物に手をつけず、ただ静かに私の隣にいた。

明らかに何かを待っている。そう確信した私は、片手でグラスを握ったまま、もう片手を隣の椅子に伸ばし、人妻の細い手首を掴んだ。

あの布団の中での記憶が瞬時に蘇ってくる。俺はこの手で射精にまで導かれたのだ。無意識のうちに、私はなつみの手を自らの股間へと導いた。

「駄目っ、風間さん・・・・・」
かすかな声でなつみがそう漏らすが、私は彼女の手が逃げるのを許さなかった。

チノパンの下で頭をもたげ始めたペニスの存在を伝えるように、私は人妻の手のひらを押し付けた。罠にはまるように、なつみはそれを握るような仕草を見せる。

「ご主人のはこんな風にならないんでしょう・・・・」
私は、数メートル離れた場所に座る西脇を見つめながら、そう言った。テーブルに隠れた場所で、私のものを撫でながら、なつみが答える。

「もう・・・・、もうあの人は私に興味がないんです・・・・」
「こんなに美しい奥さんなのに・・・・」

彼女の手首を離し、私は右手を人妻の脚の付け根へと伸ばした。薄い生地のワンピースの上から、なつみの魅惑的な太股を激しく揉みしだく。

「駄目っ・・・・・、風間さん、主人が・・・・・」
西脇のことを見つめながら、なつみが戸惑うように首を振る。

「もう起きないんでしょう、ご主人は?」
「でも・・・・、こんな場所じゃいや・・・・」

なつみは、熟睡しているとはいえ、夫がすぐそこにいることに激しく困惑していた。そんな人妻の表情が、私を深い興奮へと引き込んでいく。

ワンピースを強引にまくりあげ、私はなつみの美脚を椅子に座ったままで露にさせた。白地に水色の刺繍が入ったショーツを確認し、私は指先でその中心を突いた。

「あんっ・・・・」
私の手首を強く抑え、なつみが激しく抵抗する。構うことなく手を往復させながら、私はこの数ヶ月間思い続けていたことを彼女の耳元で囁いた。

「大場さんには最後までさせたんだろう・・・・」
なつみがそれを否定することはなかった。それどころか、まるで彼との不貞行為を思い出したかのように、その人妻は次第に抵抗を緩め、息を乱し始めた。



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