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波涛の彼方(21)

2010 07 01
隆夫が到着した後、30分も経たぬうちにその会合はお開きとなった。住民達は、人妻の夫の突然の登場に明らかに戸惑っているようだった。

しかし、村岡だけは例外だった。どこまでも狡猾な彼は、直前までいじめ続けていた人妻から素早く距離を置き、平然とした様子で食事を再開した。

朋子もまた、そんな男の偽装工作を助けるように、乱れていたシャツをとっさに整え、姿勢を正した。夫が、妻の様子に不審を抱くことは、結局なかった。

「あなたがいらしてくれるなんて思ってませんでした・・・・・」
帰宅後、朋子は隆夫に対し、素直にそう漏らした。事実、今夜の会合には朋子だけが参加するはずだったのだ。

「予定より早く仕事を切り上げることができたんだ」
「そうですか・・・・・・」

「今夜は特に打ち合わせもせず、顔合わせの食事だけだったようだな」
「え、ええ・・・・、そうでしたわ・・・・・・」

夫は、今夜の詳細につき、それ以上聞いてくることはなかった。朋子もまた、村岡とのやり取りに関し、夫に告白することをしなかった。

あの男にいたずらをされたと、素直に打ち明けることができない自分がいる。朋子は、村岡と自分の間の秘密が、確実に増えていくことを感じていた。

それでもなお、彼女は隆夫に訴えようとはしなかった。夫に何か誤解されてしまうことを朋子は恐れていた。それに、あのDVDの件も心に引っ掛かっている。

DVDを投函したはず、という朋子の指摘を、村岡は平然と否定した。彼を信用したくはないが、朋子はその時の村岡が嘘をついていないような気がした。

教師をしていた経験から、彼女にはそれがわかった。村岡の表情には、何かを隠すような色は、全く浮かんではいなかったのだ。

だとしたら・・・・・。やはり夫があれを入手しようしたのだろうか。そんな猜疑心が、村岡との件を夫に隠し続けることを朋子に選択させていた。

隆夫が風呂に入っている間、朋子は1人居間の畳の上に座り、テーブルに腕を置いてぼんやりと今夜のことを考えていた。

服もまだ着替えていない。大切な部分を破られたパンストで、まだ美脚を包んでいる。朋子は、嫌な記憶を振り払うように、その場に立ち上がった。

そのときだった。携帯の呼び出し音が静かな室内に響いた。バックからそれを取り出し、番号を確認する。知らない携帯からだった。

「もしもし・・・・・・・」
「やあ、奥さん・・・・・・」

今夜の食事会で感じていた嫌な緊張が、再び朋子を包み込む。村岡のいやらしい声は、決して聞き間違うことのないものだった。

「どうして私の携帯の番号を知ってるの・・・・・・・」
隆夫に気づかれるのを防ぐかのように、朋子は無意識のうちに潜めた声で村岡を詰問した。

「さあね。それより奥さん、今、何してんだ?」
「別に・・・・・・、関係ありません、あなたには・・・・・・・」

「旦那に抱かれる準備でもしてたんだろう?・・・・・・・」
「馬鹿なこと言わないでくださいっ・・・・・・・」

卑猥なことを聞かれただけで、朋子は何か体が熱くなるような気分になった。あの男の指先でいじめられた秘唇は、まだその奥で確かに潤っている。

「俺にさんざん気持ちよくさせられて、もう我慢できないんじゃないのかい?」
「・・・・・・・」

「旦那にせがんでみればいいじゃないか。絶頂に連れて行ってくだ・・・」
「いい加減にしてくださいっ!・・・・・・」

村岡の言葉を遮り、朋子は思わずそう叫んだ。真実の一端を男に見透かされていることが、朋子には我慢ならなかった。

「そう怒るなよ、奥さん・・・・・。なあ、いいこと教えてやろうか?」
電話を切るつもりだった朋子だが、村岡のその言葉に手が止まった。

「今夜、旦那がいつあの店に来たか知ってるかい?」
「えっ?・・・・・・」

「ご主人、ずっと前から店にいたらしいぜ」
「・・・・・・・・・」

「障子の向こう側から、奥さんの様子をずっと見てたんだってよ」
「・・・・・・・・・」

「自分の妻が別の男にキスされて、テーブルの下で何かされてる姿を覗き見してたらしいぜ。知ってたか、旦那がそんな趣味持ってることを?」

朋子は言葉に詰まった。嘘だ。嘘に決まっている。適当なことを言って、この男は私をからかっているだけに違いない・・・・・・。

「いい加減なこと言わないでください・・・・・・」
「おいおい、ちゃんと証言者がいるんだぜ、教えてや・・・」

更に何か話そうとしてくる村岡の声を、朋子は通話停止ボタンを押して完全に消し去った。そして、彼の番号を着信拒否設定にした。

再び朋子は、その場にしゃがみこんだ。たった今、村岡が話した言葉が、ぐるぐると頭の中に渦巻き、自分を激しく揺さぶってくる。

夫の隠された一面は、やはり存在するのだろうか。別の男にいじめられて嫌がる妻を、夫はそのまま放置し、鑑賞していたというのか・・・・・。

いい加減、何か行動に出なくてはいけない。朋子はそう感じていた。これ以上、村岡のペースで翻弄され続けるのは嫌だった。

朋子は菊地あずさのことを思い出した。一度、彼女に連絡してみようか。しかし朋子は、村岡と一緒にこの島で育った彼女を選択することを、少しためらった。

村岡という男の本当の姿を教えてくれる、もっと客観的な情報が欲しかった。しばらくの後、朋子は1人の女性の存在に思い当たった。



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