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波涛の彼方(28)

2010 07 09
そこには更にもう1台車を停めるスペースが存在していた。朋子は、誘い込まれるように減速し、菊地あずさの車の隣に乗り入れた。

改めて2台の車を観察する。間違いなく村岡とあずさのものだった。浜辺での苦い体験が、朋子にそれを強く記憶させていた。

午後3時になろうとしている。強い日差しが降り注ぐ中、朋子はエンジンを止め、座席に座ったまましばらく隣の車を見つめ続けた。

共に、誰も乗ってはいない。運転者はどこに行ったのだろうか。フロントガラスの向こう側に広がる深い茂みを、朋子は見つめた。

原生林とでも形容できそうな深く濃い林だ。人を寄せ付けるような場所にはとても思えないが、朋子はその中央に細い道らしきものが存在しているのに気づいた。

そこを辿れば中に入っていけそうだった。食べることのできる、植物か何かが繁殖しているのだろうか。再び朋子は、そんなことを想像した。

エンジンを切った車内はすぐに汗ばむほどの暑さになった。朋子はたまらずにドアを開き、外に出た。濃厚な潮の匂いが彼女を出迎えた。

だとしても、あの二人がどうして一緒に・・・・・・

朋子は、改めてあの日の午後のことを思い出してみた。村岡のことを、あずさは確か、子供の頃から知っていると言っていた。

島の女に手を出しては何度もトラブルを起こしている。そんなあの男を昔から懲らしめているから、私のことをあいつは嫌っているのよ。

走り去った村岡の車を見つめながら、あずさはそんな風に話したものだ。そんな二人の車が、ここに並んで停車している理由はいったい何だろう。

朋子は、1つの推測に思い当たった。あの男はまた悪事を働こうとしたのだ。通りがかったあずさが、それを糾弾しようとしているのではないか。

村岡に車の中に引きずり込まれ、レイプ寸前にまで追い込まれた。夫の前任者の妻、井山は確かそんな証言をしていた。

あの男は、この場所で再び女性にいたずらをしていたのだろう。彼の家はここからすぐ近くだ。それは、十分にあり得そうなことだった。

しばらくの間、朋子は車の脇に立ち、どうすべきか思案した。このまま走り去ってしまっていいのではないか。何も、自分が首を突っ込む必要はない。あずさは、それほどに強い女のはずだ。

しかし・・・・。朋子はなかなか決心ができなかった。村岡の反撃にあい、あずさが危険な目に遭遇している可能性だってある。

それを示唆するように、車の中には誰もいない。村岡は、逃げるように林の中に侵入し、それを追ったあずさが、思わぬ事態に巻き込まれているかもしれない。

耳を澄ました朋子に、林の奥から聞こえるものは何もなかった。通行量もほとんどないため、静寂の中に堤防の向こう側の波音だけが聞こえている。

確かな緊張を抱きながら、朋子は林の中に足を踏み入れた。湿った落ち葉が広がる中央に、人の侵入を示すように一筋の細い道が存在している。

頭に触れる枝を振り払いつつ、朋子は少しずつ歩を進めた。海岸沿いの道路とは異なり、そこはやや薄暗い空間だった。

何日も続いた雨の匂いがまだ立ち込めている。蒸し暑さに汗ばむ素肌を感じつつ、朋子はしばらく歩き続けた。

10分程度が経過した。これほど奥にまで道が存在していることに、朋子は驚きを感じていた。上からの日差しは更に弱まっている。

引き返すことを考え始めたとき、朋子は突然、それを聞いた。

「ああんっ・・・・・・・・、ああっ、駄目っ・・・・・・・・・」
搾り出されたようなその声は、紛れもなく女のものだった。朋子は、思わず立ち止まり、声がする方向に視線を投げた。

二人は僅か数メートル先にいた。細い木に両手でしがみついた格好で立つあずさ。デニムとショーツを引き摺り下ろされた下半身を、後ろに突き出している。

半袖のシャツのボタンは外され、羽織っているだけのようだ。緑が色濃い林の中に、露にされたあずさのヒップと熟れた生足が、白く浮き上がっている。

背後から見える村岡は、服を着ていた。だが、ベルトは緩め、その下腹部を曝け出している。男は露出したもので、あずさをバックから激しく犯していた。

あずささんっ・・・・・・・・

朋子は、自らの危惧が事実だったことを知った。村岡の愚行を止めに入ったあずさが、思わぬ反撃に遭い、逆に体を奪われてしまったのだ。

助けなくてはならない。わずか数メートル先にいる二人の男女を見つめながら、朋子はそう思った。ともかく、自らの存在をあの男に伝えるのだ。

朋子はしかし、すぐにそうすることができなかった。被害にあっていたであろう、もう1人の女性がいないのだ。朋子はまずその事実に気がついた。

だが、それは些細なことだった。朋子の想像を無残に否定するように、あずさの悶える声が再び周囲に響いた。

「いいっ・・・・・・・、ああんっ、もっと・・・・・・・・」
「あずさ、まだ物足りないのか・・・・・、ほら、どうだっ・・・・・・・」
「ああんっ・・・・・、そうよ・・・・・・、もっと激しくしてっ・・・・・・・」

見てはいけない光景がそこにあった。朋子は息苦しさを感じるほどの戸惑いに包まれたまま、その場から逃げるように走り出した。

ハアハアと息を乱しながら、ぬかるんだ泥道を朋子は走った。あずさの官能的な声が、何度も頭の中でこだまする。思うように足が進まない。

時折、滑りながらも、朋子は懸命に車を目指した。背後を振り返る余裕はなかった。そうした瞬間、村岡とあずさの視線に捕まるような気がした。

ようやく周囲の明るさが戻ってきた。車に何とかたどり着いた朋子は、転げるようにその中に飛び込むと、すぐにエンジンをかけた。

あずさはあの男の行為を要求していた。襲われてなんかいない。支配していたのは彼女のほうだ。あずさが村岡をこの林の奥に誘い込んだのだ・・・・・・。

あの二人が・・・・・・、そんなことって・・・・・。信じることができない。何かの間違いだ。しかし、あずさは確かに自分から・・・・・・。

様々な想いが、朋子の頭を駆け巡った。目にしてしまった光景は、朋子を激しく動揺させると同時に、秘め事への妖しい欲望を与えるものでもあった。

村岡に犯されるあずさへの濃厚な嫉妬心・・・・。自分も同じようにされたいという欲情が芽生え始めている。勿論、朋子はそれを認めようとはしなかった。

***************

その夜、一人きりで過ごす朋子の自宅に、突然の訪問者があった。



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