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波涛の彼方(29)

2010 07 12
突然の訪問者があったのは、朋子がちょうど夕食を食べ終えたころだった。

夫の不在、そして昼間目撃したあの光景。その夜、朋子は自分がいつもとは違う状態でいることを、はっきりと感じていた。

どうやって帰宅したのか、それさえもよく覚えていない。誰かに追われているかのような気分で、朋子は逃げるように車を走らせ、家の中に飛び込んだ。

激しく息が乱れていた。村岡とあずさに、覗き見した自分の姿を見られたかのような気がした。その脅迫概念は、朋子を逃がすことはなかった。

朋子さん、見てたでしょう・・・・・・・

あずさのそんな声が聞こえてくるようだ。朋子は、彼女からの電話が今にも届くのではないかと、気が気ではなかった。

時間が経過しても動揺が収まることはなかった。それを忘れ去るために夕食の準備を始めた後も、朋子は林の中で行為をする二人の姿を何度も思い浮かべた。

「してっ・・・・・、ああんっ、もっと激しくっ・・・・・・・・・・」

木にしがみつきながら、あずさはそんな風に村岡にせがんでいた。熟れた下半身を自分から振り、彼女は男の与える刺激を淫らに欲しがっていた。

彼女のシャツのボタンは全て外されていた。ブラがずらされ、あずさの豊かな乳房が露にされていたことを、朋子は今更ながら思い出してしまう。

男のごつごつとして手のひらは、その膨らみを下から覆いつくし、腰の乱暴な突き出しに呼応させるように、激しく揉みしだいていた。

奥さん、駄目じゃないか、こっそり覗き見するなんて・・・・・・・

村岡の勝ち誇ったような笑いが、朋子の脳裏をよぎる。あの男に寝室で組み伏せられ、服を剥ぎ取られる自分を想像する。

いけない、隙を見せちゃ・・・・・・・・

今夜、夫はここにいないのだ。朋子は、自らの妄想を強引に抑えつけ、それ以上昼間の出来事のことに翻弄されることを避けようとした。

あずさがまた、この家に忍び込んでくるかもしれない。いや、今度はそれが村岡という可能性だってある・・・・・。

先日の夜、あずさの侵入を許してしまった理由を未だ知らない朋子ができることは、全ての施錠を確認することしかなかった。

緊張感を持ちながらの夕食を何とか終え、朋子は手早く後片付けをした。玄関の呼び鈴がなったのは、まさにそんなときだった。

「えっ?・・・・・・・・」
静寂の中に突然鳴り響いたベルの音に、朋子は驚きで動きを止めた。

週末の夜、こんな時間にいったい誰だろう。まさか、村岡・・・・・・。緊張したまま、その場を動けない朋子を催促するように、ベルは何度も鳴った。

居留守を使うわけにもいかない。部屋の灯りは、外からでもはっきりと確認できるはずだ。朋子は怖いような気分を振り切り、一転して小走りで玄関に向かった。

「どちらさまでしょうか?・・・・・・」
玄関の引き戸の鍵をかけたまま、朋子はこちら側からそう声をかけた。ガラスの向こうに、男性らしい人間が、1人立っているのが見えた。

「あ、あの、城崎先生の家ですよね・・・・・・」
声の主は村岡ではなかった。予想に反し、それは若い声だった。朋子は緊張が緩むのを感じながら、返事を口にした。

「はい、そうですが」
「僕・・・・・、先生のクラスのものなんですけど・・・・・・」

声の印象どおり、そこにいるのは若者のようだ。夫が勤務する私立高校の生徒らしい。朋子は、村岡に対するのとは別な理由で、鍵を開けることを躊躇した。

夫から高校の様子を聞いたことはほとんどない。特に、この島に来てからはそうだった。夫は、自らの仕事のことを、頑なにヴェールに包み続けていた。

しかし、その一端を朋子に教えてくれた人間がいた。自治会の老人、三原だ。夏祭りの準備を重ねていく中で、彼は朋子に何度かそれを話したことがある。

「問題がある生徒ばかり集めているからねえ。ご主人も大変でしょう?」
三原からの情報は、朋子が何となく把握していることを補うものだった。

非行、暴力事件等、様々な理由で高校を退学処分となった生徒。或いは、いじめや引きこもりなど、複雑な問題を抱え、高校に通学できなくなった生徒。

そんな若者達を一同に集めて、全寮制という環境を存分に活かしながら再教育を試みていく、という目的で設立されたのが、その私立高校だった。

「この島に来ても悪さを繰り返す生徒もいるみたいだからねえ。寮を抜け出してバイクを乗り回す集団もいるそうだ」

朋子が知らない事実を、三原はいろいろと教え、注意を促してくれた。高校の生徒の訪問、と聞いたとき、朋子はその老人の言葉を思い出していた。

「あの・・・・・・、今夜、主人は出張でいないんですが・・・・・・・」
朋子は鍵を閉めたまま、ガラス戸の向こうに透けて見える若者にそう答えた。

「あっ、それは分かってます。僕が会いに来たのは奥様のほうなんです・・・・・」
「私に、ですか?」
「は、はい・・・・・・」

小声でそう告白するその若者に、不良生徒の匂いは感じられなかった。このまま彼を追い返すわけにはいかない。朋子はそう思った。

「いいわ。少し待ってて・・・・・・・」
自分にどんな用件があるのか知らないが、朋子はとにかく彼に会ってみることにした。サンダルを履き、朋子は玄関の鍵を開けた。

「先生、こんばんは」
恥ずかしげに挨拶をする若者。彼の姿を見た朋子を、確かな驚きが襲った。



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