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波涛の彼方(41)

2010 07 28
「宮本君、ねえ、いったいどういうことなの?」
男の決定的な言葉が、人妻の心を激しくかき乱した。朋子は、戸惑いを何かにぶつけずにはいられないかのように、宮本にそう問いかけた。

若者は顔をあげようとはしなかった。半袖の白い開襟シャツを着た宮本は、じっとテーブルを見続けている。その肩は、かすかに震えていた。

「奥さん、全て彼のせいにしようったって、そうはいきませんよ」
「そ、そんなこと・・・・・・」
「どんな風に誘惑したのか、ちゃんと自分の口から説明してもらいましょうか」

テーブル上のコップを握ったまま、朋子は村岡の顔を見つめた。男の表情に怯む様子はなかった。彼は全て知っているのだと、朋子は悟った。

だが、いったいどうやって知ったというのだろうか。あの夜、宮本は単独で自宅にやってきたはずだ。事前に誰かに自分の行動を教えていたのだろうか。

それであっても、村岡がその情報を掴むことは考えられなかった。この男と高校生の間に、接点などあるわけがない。

「不思議だろう、奥さん?」
「・・・・・・・」
「どうして俺がそんなこと知っているのか。教えて欲しいかい?」

村岡の誘いを無視し、朋子は考えを巡らせた。あの夜、この男は庭に忍び込んでいたのかもしれない。あの淫らなDVDを鑑賞した昼間のように。

「ちょっとした巡りあわせでこの高校生と知り合ったんだよ。そして、奥さんとの特別な関係も知ってしまったのさ」

真相を隠したまま、村岡は朋子にそんな説明をした。宮本に、男の言葉を否定する気配はなかった。朋子の視線から逃げるように、彼はただ下を向き続けている。

「宮本君、ねえ、本当なの、それは?」
村岡の言葉を信じれば、宮本が全てを暴露したことになる。その真偽を確かめようと再度若者を問い詰める朋子を、村岡がやんわりと制する。

「奥さん、もういいでしょう、そんなことは」
「・・・・・・・・」

「肝心なのは、奥さんに反省の気持ちがあるかどうか、ってことですよ」
「そ、そんな・・・・・・」

「旦那のいない隙に高校生を自宅に連れ込んで、猥褻な行為に耽った主婦。奥さん、これがばれたら、あんた警察につかまっちまうぜ」

警察という単語が、朋子の冷静さを確かに揺さぶってくる。これがもし夫に知られてしまったら、という恐怖が、朋子を初めて包み込む。

「行き過ぎたことをしたとは思ってます・・・・・・・」
朋子は、村岡の術中にはまるかのように、つい素直な口調でそう漏らした。意味深な笑みが、村岡の顔に浮かぶ。

「旦那に教えてもいいのかい、奥さん?」
「やめて・・・・・・、それは困ります・・・・・・」

「勝手だねえ。自分は好きなことをしておきながら・・・・・・・」
「別に・・・・・・、私、好きなことをしたわけじゃ・・・・・・・」

「じゃあ何だって言うんだい?」
「それは・・・・・・、この子が凄く悩んでいるみたいでしたから・・・・・・」

宮本に施したあの行為が正当化されることはないとわかっていながらも、朋子はそう言わずにはいられなかった。あれは、彼のためにしてあげたことなのだ。

自慰行為を望んだ高校生の前で、挑発するように肌を見せた自分。そして、露出された若いペニスに誘われるように、それをしゃぶり、放出された欲情の証を最後まで飲んでしまった自分。あの夜の記憶が、朋子を襲う。

「ほう、悩める若者を助けてやったつもりですか、奥さん」
ビールをちびちびと飲みながら、村岡はそう言った。その狡猾な目は、次の一手を考えているように見える。

「村岡さん、いったい私にどうして欲しいんですか?」
村岡の次の言葉を怖がるように、朋子はそう言った。攻勢に出ようとする人妻の姿を、男はにやにやと見つめている。

「警察に言うならそうすればいいでしょう・・・・・」
男の笑顔は、朋子に激しい感情を与えた。憎悪にいざなわれるまま、朋子は男を煽るような言葉を言い放った。

「奥さん、まあ落ち着いてくださいよ。俺は奥さんの味方なんだから」
村岡の手が、コップを握っていた朋子の指に伸びる。男への気持ちを伝えるように、朋子は強くその手を引き抜いた。

「今夜こそ、逃がしませんよ、奥さん・・・・・」
閉ざされた背後のふすまを見た後、村岡はそうつぶやいた。

海岸、そして蕎麦屋2階の座敷。村岡に受けてきた何度かのいやがらせを、朋子は思い出す。その都度彼女は、危ないところで逃げ出すことができた。

だが、今夜は誰も助けに来てくれそうもなかった。すがるように、朋子は宮本を見た。彼が果たして自分に味方してくれるのか、彼女に確信はなかった。

「いったい私をどうするつもりですか、村岡さん・・・・・」
逃がさないと宣言した男に、朋子はきつい視線を投げた。村岡は、しばらく考えるようなふりをした後、納得した口調で言った。

「この子にしてあげたのと同じことをここで再現してもらいましょうか」
「・・・・・・・」
「悩める男は、ここにもいるんですよ、奥さん」

笑いをこらえながら、村岡はクールにそう言った。自分を逃がすつもりはない、という彼の言葉が本気であることに、朋子はようやく気づく。

三原の姿が朋子の頭をよぎる。大声を出して助けを求めたなら、あの老人はすぐに来てくれるだろう。しかし、村岡は秘密を暴露してしまうのかもしれない・・・・・。

「さあ、奥さん、いったいどんな風に彼を楽しませてやったんですか?」
宮本がどこまで話をしたのか、朋子にはわからなかった。汗ばんできた肌を感じながら、朋子は沈黙を続けた。

「忘れたっていうなら、俺が思い出させてやろうか?」
しびれをきらしたかのように、村岡が立ち上がり、朋子に接近する様子を見せる。朋子はそれを強く拒絶した。

「わかりました・・・・・。やればいいんでしょう・・・・・・」
村岡に無理に浴衣を脱がされるところを、朋子は宮本に見られたくはなかった。それならば、自分の意志で何かしたほうがまだいい。

あの夜を全て再現する必要はないのだ。少しばかり浴衣をはだけさせ、肌を見せてやればそれでいい。決心をしたように、朋子は少し膝を崩した。

浴衣のあわせに手を伸ばし、そこを僅かに広げる。人妻のなまめかしい肌が、少しずつ露にされていく。同時に朋子は、浴衣の裾を少しだけ引いた。

「奥さん、俺は高校生じゃないぜ。もっと見せてもらわないと困るねえ」
遠慮がちな朋子の行動を、村岡が早々に否定する。コップを傾けながら、男は目の前の人妻に更に大胆に振舞うことを、目で求める。

ずっとうつむいていた宮本が、我慢できない様子で朋子に初めて視線を投げる。



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