FC2ブログ

波涛の彼方(完)

2010 07 31
「奥さん、ほら、家に着いたぜ」

村岡が最後に口にしたその言葉が、朋子の耳にまだ響いている。自宅居間の畳の上でぐったりと寝そべったまま、朋子は長い夜の記憶に未だ翻弄されていた。

ガラス戸の向こうに広がる外の景色は、漆黒からかすかに碧い色をはらみ始めたように見える。夜明けが近いのだ。

夏祭りの打ち上げが行われたあの料亭の個室。周囲の参加者の視線が遮断されたその空間で、朋子は二人の男にたっぷりとその裸体を弄ばれた。

夏祭りの闇の中で、見知らぬ男に犯された人妻の体は、静粛な主婦という立場を捨て去ってしまうほどに、欲深く男を求めていた。

童貞である宮本に抱かれたとき、朋子は彼の早いフィニッシュに物足りなささえ感じてしまった。だが、朋子の理性は、そんな自分をどこかで責めてもいた。

村岡にどんな風に抱かれようと、自分は冷静さを失わないつもりだった。愛情のかけらどころか、強烈な敵意と嫌悪感しか抱いていない男なのだ。そんな男に何をされようと、自分が揺らぐはずはない。

勿論、男の腕力から逃げることはできない。体がそれらしい反応を仕方なく見せてしまうかもしれない。それでも朋子は、自分を完全に失うつもりはなかった。

男が満足を得るまで、ただ静かに待ち続ければいい。感情を完全に抑え込み、無心の状態で、男の好きにさせてやれば、やがてそれは終わるはずだ。

そう思っていた朋子は、しかし、想像もしなかった衝動に襲われた。

村岡の上に跨った自分がどんな淫らな動きを披露したのか、教え子である宮本の前で自分がどんな淫らな声をあげたのか、朋子には一切記憶がなかった。

村岡のペニスは強靭で、果てる気配はなかった。絶頂と思われる快感を何度か与えられた後でも、朋子はその男のものを更に求めた。

体が蕩けてしまうほどに、男に激しいピストンをして欲しい。壊れてしまうほどに荒々しく突き上げ、そして自分が知らない体位で貫いて欲しい。

罪深い蜜はどこまでも膣を濡らしてくる。熱を帯びた心地よさが永遠に続くことを、朋子は願った。そんな人妻を、ある瞬間から更に濃厚な快感が包み込んだ。

イッたんだろう、と村岡に訊かれ、うなずいた自分。そのときは、それが確かに絶頂だと感じていた。しかし、それとは全く別のステージが朋子を待っていたのだ。

挿入された村岡のもので、長時間にわたって責められているうちに、朋子は波のように次々に押し寄せる悦びを感じ始めていた。

激流と呼べるようなものではない。穏やかだが、少しずつその深みが増していく。収まったかと思えば、またそのさざ波は押し寄せてくる。

息苦しさを感じながら、朋子は快感の中をふわふわと漂い始めていた。声をあげてしまうほどの気持ちよさが自分を包み、そして去っていく。しかし、しばらくの後、更に深い快楽が体を包み込んでくる。

あんっ・・・・・・・、ああっ、気持ちいいっ・・・・・・・・・・

自分が果たしてそんな言葉を口にしたのか、朋子には覚えがない。しかし、心の中で、その人妻は何度もそんな台詞を叫び、更にそれを男にねだった。

初めて知るエクスタシーだった。深く愛しているはずの夫に抱かれても、そんな気分になったことは一度もなかった。激しく憎む男にそれを初めて教えられたという事実が、朋子を深く混乱させていた。

村岡の車に強引に引きずり込まれ、朋子はこの自宅にまで何とかたどりついた。だが、自宅前に停めた車の中でも、男はその行為を続けようとした。

「奥さん、別れるのはまだもったいないな」
助手席の人妻の唇を奪いながら、村岡は朋子の浴衣の帯を再び緩めた。

男の手が乳房に伸びてくる。女としての悦びを教えてくれたその手の侵入を、朋子は拒むことができなかった。倒されたシートの上で、朋子は乳房を吸われた。

「ううんっ・・・・・・・・・・」
「また夢のような気分にさせてやろうか、奥さん」
「はんっ・・・・・・・・・・、いやっ、許してっ・・・・・・・・・・・・・・」

男の手で、いつしか太腿の内側を撫でられていることに朋子は気づく。村岡と舌を絡めあいながら、朋子は脚を少しずつ広げようとする自分を制することができない。

その奥の泉が、熱く濡れていることを感じる。この汚れた男の手でそこをいじめてほしい。あの硬いもので、また狂ったように花芯を突いてほしい。

過去の平凡な人生の代償を得ようとでもしているかのような自分の感情に、朋子は困惑するとともに、どこかでそれを認めようともしていた。

こんな行為が幸せに繋がることは決してない。それがわかっていても、朋子はあと僅かな時間だけ、現実の世界から逃れる自分を許したかった。

しかし、男はどこまでも狡猾だった。

「奥さん、車の中でもう1回して欲しいんだろう?」
「・・・・・・・・」
「そう簡単にあんたの望みを叶えてやるわけにはいかんさ」

浴衣の下で人妻の肌を撫でまわっていた手をあざ笑うかのように引き抜くと、村岡は朋子のシートを戻し、長い夜の終わりを告げた。

「奥さん、ほら、家に着いたぜ」
村岡に促されるまま、朋子は車の外に出た。自分の欲情を見透かされていることを知り、朋子は完全にこの男に屈した自分を感じていた。

あんたはまた俺に連絡してくるさ。もう一度、抱いて欲しいってな。運転席に座ってほくそ笑む男の横顔には、そんなメッセージが浮かんでいるようだった。

居間の畳に横たわったまま、朋子はそんな一連の出来事をぼんやりと思い出していた。膣奥はまだ熱い。しかし、朋子は少しずつ理性を回復させてもいた。

冷静さは一度その気配を教えると、瞬く間に朋子の胸の中に舞い込んできた。乱れた浴衣を直し、朋子はようやくその場に起き上がった。

しんと静まり返った居間。壁の時計を見る。午前6時になろうとしている。外の明るさは、もはや日中のそれと区別できないほどに確かなものだった。

そのとき初めて、朋子はその不自然さに気づいた。慌てて立ち上がると、朋子は寝室として使用している座敷のふすまを開けた。

予感は間違ってなかった。そこにいるはずの夫、隆夫の姿が見当たらないのだ。布団が敷かれた形跡もないことは、夫が昨夜帰宅していないことを告げていた。

高校での研究が深夜にまで続くことは何度もあったが、帰宅しないことは一度もなかった。何か連絡がなかったか、朋子は自らの携帯電話を手にした。

着信履歴もなければ、メールも受信していない。朋子がそれを確認した直後だった。握り締めていた携帯が突然鳴った。知らない番号だった。

「もしもし・・・・・・・・」
「あっ、奥さんですか?」

「は、はい・・・・・・・・」
「私、あの、椎名です。ご主人の高校の・・・・・・」

その男のことを、朋子はすぐに思い出した。この島に到着したとき、港にまで出迎えてくれた男だ。高校の教頭を務める彼の声を久々に聞いた瞬間に自分を襲った嫌な予感のことを、朋子は後々まで忘れることはなかった。

「奥さん、いいですか、落ち着いて聞いてください・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「ご主人が・・・・・・、ご主人がお亡くなりになりました・・・・・・・・」





(↑来週月曜から「続・波涛の彼方」を連載します。クリック、凄く嬉しいです)

http://ameblo.jp/norinori2009/
↑アメブロで新作連載開始しています。こちらも読んでいただけると嬉しいです。


エルシーコスメ&ラブグッズ体験談


Comment
突然のエンディングにおどきました

続編はどうなるんた?
ストーリーが読めない?


だけど奥さんはセックスの快楽に
溺れて行くんだろう
これで終わりなら
終わらせてから休みで良かったのでは?!ちと肩透かし(ToT)
なんだか、らしくない終わり方でした。
終わりを急がれたのかしら。

管理者のみに表示