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続・波涛の彼方(2)

2010 08 24
二人姉妹の姉として育った朋子にとって、4歳年下の妹、千佳子は、いつも一種のまぶしさを感じるような存在だった。

優等生タイプとして育ち、教職に就いた朋子。そこには清楚さとともに、どこか世間の荒波を知らずに生きてきたような面も共存していた。

公立中学の女教師としての日々を過ごしていくうちに、朋子は自分自身の芯の弱さを感じることも少なくなかった。

生徒からのセクハラまがいの攻撃。望んだわけでもないのに、男たちの欲情をそそるような肉体を自分が獲得してしまったことを、朋子は恨んだことさえあった。

隆夫との見合い話もあり、中学を退職した朋子だったが、教師としての生活に疲れていたことも、家庭に入ることを選択した理由のひとつだった。

妹の千佳子は、そんな姉とは正反対の性格の持ち主だった。

両親の過度な期待が姉に注がれるのを見つめながら、千佳子は要領よく生き抜いていく術をいつしか身につけていた。

そんな妹を束縛しようとする両親の試みは、いつも徒労に終わった。千佳子は姉の欲求を代わって満たしてやるかのように、好奇心旺盛に人生を楽しんできた。

高校時代に1年間海外留学をしたこともあり、千佳子は短大を卒業後、再び海外に渡り、就職をした。日系企業のアシスタント的な仕事で条件はそれほどよくはなかったが、千佳子はそれで満足だった。

家族の誰の監視も受けず、自分のペースで生きていけることに、千佳子は快感を覚えていた。そんな彼女の姿が異性の関心を集めるのは必然といえた。

姉の朋子よりも更に背が高く、千佳子は身長168センチの長身の女性だった。ボーイッシュなショートカットは、彼女の奔放な性格をどこか強調していた。

朋子とは異なり、胸のサイズはそれほど大きくはない。小ぶりともいえる乳房の持ち主だが、体型がスリムなだけに、胸の控えめな曲線はかえって目立っていた。

彼女周辺の日本人駐在員、その中には独身男性も多くいた。千佳子に興味を示す人間も少なくはなかったが、しかし、彼女は簡単になびく女ではなかった。

「私、そんな軽い女じゃないですから」
どうせ現地採用の女だろう、と高飛車な態度で体を要求してきたある管理職の男性社員に、千佳子はクールにそう言い放ったことがある。

それが千佳子の本音であったのかどうか、それはわからない。ローカルばかりが集まる深夜のクラブエリアで、彼女の姿を何度も見かけたという噂は、様々な憶測を伴って社内で流されたものだ。

「千佳子、昨晩、白人の男と一緒にいたらしいぜ・・・・」

「やっぱ日本人じゃ物足りないんじゃないか・・・・」

「あの子、外人モデルみたいなスタイルしてるからなあ・・・・・」

そんな男達の陰の噂を、千佳子はどこか楽しんでいる風にも見えた。自分の周囲で男達が翻弄されているのが、彼女には痛快でならなかった。

それは、生徒達からのいやがらせに苦悶していた朋子とは明らかに違っていた。千佳子は、自らの魅力を自覚し、それをある種の武器として使いこなす術を得ていた。

千佳子が海外に渡ってから、朋子が彼女にコンタクトをとることはほとんどなかった。姉妹とはいえ、異なるタイプの二人の間には微妙な距離が存在していた。

しかし、朋子が千佳子のことを嫌っていたわけではない。むしろその逆で、朋子は自由きままに生きていく妹のことを、いつも温かな眼差しで見つめ続けてきた。

千佳子もまた、そんな姉の態度に気づいていた。親密に連絡をとりあうことはなくとも、二人は血の繋がる姉妹として、互いのことを想い続けていたのだ。

一生海外にいるのではないのか、と両親が考えていた千佳子が突然帰国したのは、朋子が結婚した頃だった。

「私、そろそろ東京で暮らそうかと思うの」

そう告白した千佳子に対し、両親はその背後に男性の存在を疑った。しかし、外資系企業に職を見つけた彼女は、相変わらずの独身生活を謳歌し続けた。

同じ東京にいることもあり、朋子と千佳子は度々顔をあわせるようになった。新婚である姉の家に、千佳子が食事に招かれることもあった。

「姉さん、幸せそうね」
「千佳子はどうなの? 誰かいい人いるのかしらって、お母さん心配してたわよ」
「あら、私はまだそんな気はないわよ。一生独身だって構わないんだから」

遠慮なくそう言い切る妹に、朋子はしかし嫌味な部分を感じることはなかった。この子には好きに生きていって欲しい。朋子は本音でそう思っていた。

やがて、隆夫の転職に伴い、朋子は東京を離れ、瀬戸内の小島に移転した。珍しく寂しげな態度を見せた千佳子は、すぐにでも島に遊びに行くと姉に宣言した。

しかし、それが実現することはなかった。島に行って半年後、隆夫が急死したことで、朋子のそこでの生活は唐突にエンディングを迎えたのだ。

そして2年が経過した。

千佳子は姉が暮らしていた島に、遂に足を踏み入れようとしている。隣に座る姉の秘めた決意を感じているのか、千佳子の表情もどこか緊張した風に見える。



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