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続・波涛の彼方(14)

2010 09 09
「まさか奥さんにまた会えるとは思ってもいませんでしたなあ」
相変わらずよく日に焼けた老人は、嬉しそうに歓迎の言葉を述べた。彼の笑顔を見つめ、朋子はどこか懐かしいような気分に浸った。

「ご無沙汰しておりました、三原さん。お元気でいらっしゃいましたか?」
「ええ、私のほうは何も変わりありませんよ。奥さん、もう何年になりますかな」

「早いものでもう2年になります。その節はちゃんと挨拶もせず島を去るようなことをして、申し訳ございませんでした」

そう詫びる朋子を、三原は優しげな視線で見つめた。それは、2年前にこの島で起きた殺人事件のことを改めて思い出している風にも見えた。

自分宛に届けられたあの新聞記事について、誰かに詳しく聞いてみたい。そう考えた朋子が思いついた相手が、この老人、三原だった。

夫が殺害されたあの夜に開催された夏祭り。準備委員として数週間過ごした中で、朋子は三原と随分親しくなることができた。

三原さんなら何かを知っているに違いない。そして、それを隠すことなく教えてくれるんじゃないだろうか。そんな確信とともに、朋子は三原に連絡をとった。

突然の電話に驚いたものの、彼は自宅を訪問するよう快く言ってくれた。そして、朋子は千佳子を連れて三原の家に向かった。夏の日の夕刻だった。

「奥さん、こちらの女性は?」
畳敷きの居間に二人を招きいれた三原は、朋子の傍らに座る千佳子を見つめ、そう訊いた。

「妹の千佳子です」
「おや、妹さんですか?」

少し驚いた様子の三原に、千佳子は丁寧にお辞儀をし、自己紹介をした。興味深そうにそれを聞きながら、三原は千佳子の姿を眺めた。

「さすが奥様の妹さんですなあ。同じようにお美しい」
「まあ、そんなこと・・・・・・」

千佳子が少し照れたように笑う。そこで雰囲気が一気に和やかなものになった。テーブルには、既に三原自身が用意したという魚料理が並べられている。

「奥さん、難しい話は後にして、まずは食事にしようじゃないですか」
朋子たちが何の目的でここに来たのか、三原は既に想像しているようだった。彼の提案に逆らうことなく、二人は夕食をそこで摂ることにした。

「これ、全部三原さんが準備されたんですか?」
三原が手にしたお猪口に酒を注ぎながら、朋子がそう訊いた。

「ええ。準備と言っても、刺身をただ並べただけですよ」
「そんな・・・・・。お刺身のほかにもこんなにたくさん・・・・・・」

「まあ、わしも1人暮らしが長くなってきましたから、もう慣れましたけどな」
朋子たちが招かれた三原の自宅は、古い木造2階建ての家だった。そこに彼が1人で暮らしていることを、朋子は初めて知った。

「奥様はいらっしゃらないんですか?」
千佳子の遠慮ない質問も、酒を舐め始めた三原には何の問題もないようだった。

「ええ。もう随分前に亡くなりましてね。子供も二人おるんですが、こんな島は退屈だからって、とっくに都会に出て行きおって。寂しいもんですよ」

言葉とは裏腹に、三原は楽しげに笑みを浮かべている。建前ではなく、彼が今の1人暮らしを満喫しているらしいことを、朋子は感じた。

「失礼ですが、三原さん、おいくつになられるんですか?」
空いたお猪口に今度は千佳子が酒を注ぎながら、そう訊いた。

「今年で72ですよ」
「ええっ、見えませんよ、全然。もっとお若いかと思いました」

千佳子のその言葉に、三原が更に嬉しそうに笑う。老人の年齢を知って、朋子も少し意外に思った。もう少し若いのかと思っていたのだ。

のんびりとしたペースで食事は進んだ。強く奨められたこともあり、千佳子は途中から酒を口にし始めたが、朋子はそれを断り続けた。

その代わり、彼女は三原の隣に座り、その老人を接待するように酒を注いでやった。それは、朋子に2年前の体験を思い出させるものでもあった。

「奥さんにお酌してもらうと、昔を思い出しますなあ」
三原の手が、さりげなく朋子の脚に触れる。久しぶりにその老人に会うこともあり、朋子は白いシャツに黒のタイトスカートという正装に身を包んでいる。

「ええ。そうですわね」
老人の手を制することもなく、朋子はそう答えた。座布団の上、崩した美脚を隠すスカートを、三原の手が撫でてくる。それは、以前と同じ感触を彼女に与えた。

夏祭りの準備のため自治会が最初に集った宴席。そして、夏祭り打ち上げの席。朋子は三原とこんな風に一緒に食事をしたことを思い出す。

この島では当然だとして、三原は横に座る朋子の肢体を撫でまわしたものだ。そんな老人のささやかな愉しみを奪うように現れたのが、村岡だった。

最初の夜、村岡に服を脱がされ、乳房を揉みしだかれた朋子の姿を、三原はただじっと見つめていた。あのときの彼の目には、どこか羨むような色が浮かんでいた。

では、打ち上げの夜はどうだったのだろう。座敷反対側の個室に連れ込まれ、朋子は村岡に激しく陵辱された。果たして三原は、それに気づいているのだろうか。

「奥さん、ご主人は残念なことをしましたなあ」
太腿の上を這ってくる老人の指先に操られるように、朋子は過去の記憶を辿っていた。そんな彼女に、三原がぽつりとそう漏らす。

どうやら、話の本題に入ることを、彼は許したようだった。三原の老いた指先が腿の間に割り込み、その愛撫が本格化してくる。それを許したまま、朋子は話を始めた。

「主人の事件のことを調べるために、私達はこの島に来たんです」
「ほう、そうでしたか・・・・・」

「島の皆さんは、私たちをあまり歓迎してはいないようなんですけど」
誘うような朋子の言葉に、三原が反応することはなかった。淡々とした表情で酒を飲みながら、朋子の美脚への控えめなタッチを続けている。

「事件と関係あるのかわからないんですが、実はこんなものが届きまして・・・・」
財布の中に折りたたんで持っていたあの新聞記事を、朋子はテーブルの上に置いた。その下で老人の手が活発に動いていることを、千佳子はまだ気づいていない。

「ほう、これは古い新聞ですなあ」
それを手にした三原が、目を細めながら文面を追う。そして、彼は朋子のことを見つめた。

「奥さんはどうお考えなんですかな、この記事について」
「よくわからないんです。でも、主人がこれに関係していることはないように思います」

テーブルの下の老人の手の動きが止まった。何か迷うようにうつむき、そして顔をあげる。朋子と千佳子は、緊張気味に彼の言葉を待った。

「知っていますよ、奥さん。わしはこの事故のことはよく知ってる・・・・・」
「三原さん・・・・・」
「奥さんのお考えは間違ってます。ご主人はこれに大いに関係があるんですよ」

三原の告白が始まろうとしていた。



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