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続・波涛の彼方(26)

2010 10 01
椎名の唐突な言葉に、朋子と千佳子はすぐに反応することができなかった。戸惑う二人の決断を聞くのを待たず、椎名は1人で部屋から出て行った。

「姉さん、本気で言ったのかしら、さっきの言葉・・・・・・」
気まずい沈黙を破り、千佳子が朋子に小さな声で質問する。

「本気よ。だから他に客がいないこんな小さな宿に連れてきたんだわ・・・・・・」
「じゃあ、最初からこうするつもりだったって言うの?」
「たぶんね・・・・・・」

しばらくの間、朋子と千佳子はそのまま座り続けた。既に椎名は風呂に向かったのだろうか。耳を澄まし、廊下の様子を聞こうとしたとき、部屋のふすまが開いた。

「お食事はもうお済みになったようですね?」
空いたお盆を持った女将がそこにいた。慣れた様子で素早く片づけを始めた女将とは対照的に、二人は困惑した様子を抱えたままだ。女将が朋子に声をかける。

「お風呂はご一緒されないんですか?」
「えっ?」
「今夜は他のお客様はいませんから、遠慮なさることはないんですよ」

椎名に指示されたかのような言葉を残し、女将はすぐに部屋を退出した。朋子は決意を固めた。どうしても、あの男から話の続きを聞かねばならないのだ。

「千佳子、あなたはここで待ってなさい」
「姉さん・・・・」

「私が彼から全てを聞き出してくるわ・・・・・・」
立ち上がった朋子に、千佳子の心配そうな視線が絡む。

「危険よ、姉さん。あの人は、隆夫さんを殺した男かもしれないのよ・・・・・」
「だとしたら、余計に問い詰める必要があるわ・・・・・」

覚悟を決めたように、朋子は強い調子でそう言った。そして、座ったままの妹の髪を少し撫で、安堵を与えようとする。

「大丈夫よ。浴衣を着たまま中に入るわ。それに、何か危険な目にあいそうになったら、すぐに声を出すから」

「わかったわ。きっとよ、姉さん・・・・・」
「ええ・・・・・」

女将が閉じたばかりのふすまを開き、廊下に踏み出す。静けさに包まれたその先の浴場から、かすかな湯の音が聞こえてくる。

浴衣姿のまま、朋子はゆっくりとそこに向かう。木製のドアを開け、浴場の様子を伺う。狭い脱衣所のかごに、椎名の浴衣が既に置かれている。

緊張を抱えたまま、朋子は浴室に面したガラス戸の前に立つ。湯煙で曇り、中の様子は見ることができない。一瞬のためらいの後、朋子が中に声をかける。

「椎名さん、入ってもよろしいでしょうか?」
「ええ、どうぞ。その声は奥さんですか?」
「はい・・・・・」

中にいる男のことを想像すれば、どうしても入るのをためらってしまう。息苦しさを覚えるほどの緊張を抱える朋子を、椎名の指示が更に追い込む。

「奥さん、おわかりだとは思いますが、服は全部脱いでくださいよ」
「そんな・・・・」
「背中を流すだけと言っても、お風呂に入るんですから当然でしょう」

椎名の言葉は、いかなる容赦も受け付けないものだった。反論する余裕もなく、朋子はしばらくそこに立ちすくむ。そして、亡くなった隆夫のことを思い出す。

あなた・・・・・、私、負けませんから・・・・・・・

夫を激しく苦しめたはずの男の挑発に、朋子は屈するつもりはなかった。帯紐をほどき、浴衣をゆっくりと脱ぐ。曇ったガラスの向こう側から、確かな視線を感じる。

ここに映し出されたシルエットを彼は見つめているのだろうか。体奥の何かが妖しくうごめくのを感じながら、朋子は下着を全て脱ぎ去った。

部屋から持ってきた白いバスタオルを体に巻き、裸体を隠す。それほど大きくないそのタオルは、朋子の豊かな乳房が何とか隠れるほどの長さしかない。

指で払われれば、すぐにその白い生地は落ちてしまうだろう。風呂場に漂う湯気のせいか、朋子の肌には既にうっすらとした汗が浮かんでいる。

「失礼します・・・・・・・」
ドアをそっと開き、固い石が敷かれた浴場の床に足を踏み出す。湯船の中から、椎名がこちらを見つめていることに気づく。

「申し訳ないですなあ、奥さん・・・・・」
タオルで裸体を隠していることを、椎名が非難することはなかった。恐縮した様子でそう言うと、彼は立ち上がり、湯船から出た。

曝け出された男のものを見たくはなかった。朋子はすぐに顔を横にやり、視線を逃がした。立ったままの朋子の前に椅子を置き、椎名がそこに背中を向けて座った。

「ではお願いしますよ、奥さん」
椎名の横に、ボディソープやタオルが入ったラックが置かれている。朋子は迷いながらもそれに手を伸ばし、柔らかなタオルにたっぷりと石鹸をつける。

部屋で指示されたとおり、椎名の背中を流し始める。男の体をそんな風に洗うことは、朋子にとって初めての体験だった。

「亡くなった城崎先生に怒られますなあ」
「えっ・・・・・」

「お風呂で奥さんにこんなことをさせると、彼は私に怒るかもしれませんね」
どこか楽しそうな雰囲気で椎名がそう言った。

「椎名さん、話の続きをお願いします・・・・・」
「まあ、そう焦らないでくださいよ、奥さん」

話の再開を拒絶された朋子に選択肢はない。首筋から腰のあたりまで、朋子は丹念に椎名の背中に石鹸を広げた。

「背中だけじゃなく、全身をお願いしますよ、奥さん」
椎名のさりげない言葉に卑猥な欲望は感じられない。否定すれば、自分が妙なことを考えていることをかえって露呈してしまうような気がする。

再びタオルを石鹸で浸し、朋子は椎名の肩の辺りを洗い始める。椎名は沈黙したままだ。膝を床につき、朋子は椎名の胸の辺りに遠慮がちに手を伸ばす。

「奥さん、その辺をもっと強くお願いします」
言われるがまま、椎名の胸板に石鹸を広げる。タオルで隠した朋子の体が椎名の背中に軽く触れる。男に奉仕する自分に、朋子は妖しげな熱を感じ始める。

「もっと下もお願いできますか、奥さん?」
「・・・・・・」
「ははっ、冗談ですよ」

笑いながらも、椎名が突然朋子の手首を掴む。前を向いて座ったまま、それを強く引き寄せる。バスタオル越しに、その男の背中に密着するような格好になる。

「やめてくださいっ・・・・・・」
「奥さん、ご主人は私から何十年も逃げ回っていたんですよ・・・・・」

椎名の突然の告白に、朋子は息を呑んだ。夫が椎名から逃げていた。やはり私の推測通りだ。そう考えた朋子に、ヒントを与えた代償を要求するように椎名が言う。

「さあ、奥さん、そろそろ代わりましょう」
「えっ?・・・・・・」
「今度は私が奥さんのお体を洗う番ですよ」

立ち上がった椎名に対し、朋子は目を伏せるしかなかった。素早く背中にまわられた朋子は、それまで男が使っていた椅子に強引に座らされてしまう。

「さあ、タオルを外してください・・・・・」
背後から椎名の声が聞こえる。唇を噛んだまま、朋子は胸元を覆うタオルを強く押さえる。女の抵抗をしばらく見つめた後、男は本性を現すように行動に出る。

強く掴んだ白い生地を、椎名が瞬く間に剥ぎ取る。小さな声を漏らし、朋子が乳房を隠すように両手を交錯させる。白く光る朋子の背中に、男の手が触れる。



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Comment
キタキタ待ってました !朋子がどうなるか楽しみです。
村岡のときのように快楽に屈してしまうのか、事件の真実にたどり着けるのか。楽しみです。
残された千佳子にもきっと何かが・・・
次はエロく堕ちていって欲しいです。

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