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誘われた妻~香奈の秘め事(3)

2010 10 27
その日から、娘の入院生活が始まりました。1歳児の入院ですので当然付き添いが必要です。娘と一緒に過ごすことになる妻が、私に声をかけます。

「パパ、大丈夫、1人で?」
「俺は適当にやるさ。香奈こそ大変じゃないか、ここで泊まるなんて」
「そうねえ。出産の時とは待遇がかなり違うかも・・・・」

病院に到着した私と交代し、妻は急いで自宅に戻り、着替えなどを用意して再びここにやって来ました。あかりは点滴をしたまま、眠り続けています。

何とか確保できたその個室は、十分なスペースを備えたものでした。中央に置かれたベッドは、娘の転落を防ぐため上下動する柵で囲まれています。

車輪がついた点滴台がベッド脇に置かれ、そこから管が伸びています。そのため、娘はまるで飼い犬のように、行動範囲が制限されることになります。

「元気が出てきたら大変そうだな」
「そうねえ。点滴の管が届く場所しか動けないからね」

ベッドの奥となる窓際には革張りのソファ、小さなテーブル、そしてカード式のテレビが置かれています。3階の病室からの景色は、あいにく殺風景なものでした。

付き添い者用のベッドは勿論ありません。娘のベッドで、妻は一緒に添い寝をすることになります。ただ、十分なスペースがあるベッドですので、普段とそれほど違いはないのかもしれません。

入口のドアは開かれたままですが、外から中が覗けないようにカーテンレールが置かれています。その向こうの廊下からは看護師や患者の声がよく聞こえてきます。

「こんなに入院してる人っているんだな」
「そうね。あかりと同じくらいの子供で肺炎の子もいたわよ」

「3日で終わるといいなあ」
「この抗生剤が早く効いてくれることを祈るしかないわねえ」

点滴台にぶら下がるビニルの容器を見つめながら、妻がつぶやくように言いました。娘の寝顔を見つめ、私も同じことを祈らずにはいられませんでした。

その日、私は午後7時頃まで病室に滞在し、家に戻りました。1人で過ごす自宅も悪くないですが、やはり娘の入院が理由となれば心も晴れません。

翌日、上司のはからいで私は再び会社を早退し、午後、病院に向かいました。病室では、ベッドの上であかりが妻の横に座っていました。

「どう、あかりの様子は?」
「熱は7度台後半。咳も少し出始めたかなあ。でも、元気よ」

「食事は?」
「それが問題なの。全然食べないのよ、あかり」

「やっぱり病院の食事ってまずいのかな?」
「ここのは特にそうかも。私のも強烈だったから・・・・・」

離乳食を早々に卒業し、既に大人と同じようなものを勢いよく食べる娘ですが、違う環境にいることを知ってか、ここでは一切口に入れようとしないようです。

医師によれば、点滴をしているため空腹感はいつもよりは少ないはず、とのことでした。それでも、食べたほうが勿論回復は早いらしいのですが。

「香奈も疲れただろう?」
「でも昨晩は思ったよりゆっくり眠れたわよ。あかりもそんなにぐずらなかったし」

そう答える妻は、しかし、さすがにいつもとは違う様子でした。娘の看病のために1泊付き添うという慣れぬ経験が、彼女をそうさせているのかもしれません。

「俺が見ててやるから、気分転換に少しだけでも家に戻れば?」
「あら、いいの?」

嬉しそうに香奈が私を見つめます。あかりは眠ってはいませんが、母乳を飲んだばかりでもあり、妻がいなくなっても何とか大丈夫そうです。

私に勧められるままに、妻はいったん自宅に戻ることになり、病室を後にしました。私はベッド脇に丸椅子を運んで座ると、あかりと遊び始めました。

確かにこんこんと乾いた咳をしますが、深刻な状況ではなさそうです。妻が昨日持ってきたおやつを、私は試しにあかりに見せてやりました。

笑顔を見せるほどの元気はまだないようですが、あかりはそれを手にすると、平気な顔でぱくぱくと食べ始めました。

「何だよ、おやつは食べるのか・・・・」
食事も口にしないときにどうかとは思ったのですが、私はそんな風に少しずつおやつをあげながら、病室での時間を過ごしました。

何人もの看護師が交代で病室にやってきては、抗生剤を追加したり、点滴の管を固定するテープを代えたり、薬を置いていきます。

看護師だけではありません。総合病院だけに小児科の医師が複数いるのか、何人も病室にやってきては、あかりの様子をチェックしていきます。

中年の男性医師が小児科のトップであり、娘の主治医らしいのですが、それ以外にも数人の医師が次々に病室にやってきました。

私が驚くような若い医師も1人いました。白衣を脱げば学生と勘違いしそうな若者です。まだ勤務し始めたばかりなのでしょうか。

「あかりちゃん、ちょっと音聞かせてもらえるかなあ」
しかし、彼は慣れた様子で声をかけると、手にした聴診器で慎重に娘の胸の音を確認します。

「まだ音はしますねえ。点滴は3日間続ければ効果が出てきますから、しばらくはこのまま様子を見ていきましょう」

年少の彼の言葉に、私は素直にうなずくだけです。同じような診察が、他の医師によっても繰り返されましたが、やはりコメントに違いはありませんでした。

2時間程で妻は戻ってきました。着替えや雑誌がいっぱいの袋を手にしながら、ベッド上のあかりを見つめ、安堵の笑みを浮かべます。

「香奈、この病院、お医者さんがいったい何人いるんだ?」
「ふふっ、次々にあかりを診にくるでしょう?」

「学生かっ、て突っ込みたくなるような兄ちゃんもいたけど」
「いるいる。あの先生、若いよねえ」

妻が少しおかしそうにそう答えます。自宅でシャワーを浴びてきたとのことで、妻はどこかリフレッシュした様子です。

妙な話ですが、私は妻の美しさにそのとき改めて気づかされました。家の中とは全く異なる空間にいる妻の姿を、私は何だか久しぶりに見た気がしたのです。

そこには、娘の母親と言うよりも、家族以外の人の目にさらされることを意識して美しく装った1人の人妻の姿がありました。

それは、夫である私の何かを妖しく刺激する光景でした。



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