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近くに住む男(5)

2011 01 05
目で楽しませてくれ。階下で本城が口にしたその言葉を、依子はしっかりと記憶している。そんな男の挑発に屈するつもりは、依子にはなかった。

自分が犯してしまった過ちを考えれば、この男の要求に、悔しくとも応えないわけにはいかない。しかし、むざむざと一方的に男の望みを叶えたくもない。

そんな矛盾するかのような感情が、依子の胸の中に渦巻いている。窓際に置かれた椅子に座る男を見下ろし、依子は強い気持ちを維持しようとしていた。

カーテンが大きく開かれた寝室の窓から、冬とは思えぬ眩しい陽射しが差し込んでいる。その明るさが、依子に今は平日の午前であることを教える。

「あいつらが家を出て行って、もうどれぐらいになるかねえ」
本城は椅子に座ったまま体をよじらせ、再び外の景色を見つめた。

彼の目には、彼自身の家が映っているはずだ。狭い道を挟み、それはすぐそこにある。依子は気づく。男が自分の家族のことを話していることに。

「奥さん、もう1年もご無沙汰なんだよ、俺は」
「・・・・・・・」
「何のことか勿論わかるだろう、奥さんにも」

無精ひげで汚れた男の表情が、不吉に歪んだような気がする。仕事の機会を奪った目の前の人妻に何かを求めるように、その目はぎらぎらと光っている。

「どうなんだ、奥さん?」
「それは・・・・・・・、それは今回の事故には関係ないことです・・・・・・」

「それはどうかな、奥さん」
「・・・・・・・」

「俺が全うな職に就けば、家族も戻ってくるはずだった。奥さん、あんたはその可能性さえゼロにしちまったんだぜ。俺達夫婦の復縁の機会をな」

寝室にまで招かれたことに気をよくしたのか、本城の言葉には更に飛躍した考えが込められ始めていた。だが、依子はそれを受け入れるしかなかった。

「本城さん、ですから事故のことは本当に申し訳ないと・・・・」
「脱げよ・・・・・・・・」

「えっ?・・・・・・・・」
依子は無防備だった。男がそんな要求をしてくるだろうと予想していながらも、実際に耳にしたその言葉は、依子の体の芯を鋭くえぐった。

「服を脱げって言ってるんだよ、奥さん」
「・・・・・・・」

「目で楽しませてくれるって約束したじゃねえか、奥さん。あれは嘘だったのかい?」
「そういう訳じゃ・・・・・・・」

「だったら脱げよ。1年も我慢してる俺を、少しは癒してくれたっていいだろう、奥さん。あんたにはそうする義務があるはずだ。違うかい?」

夫とは、もう随分長い間、ぎくしゃくとした関係が続いている。お互いに服を脱ぎ去り、裸で愛し合うようなことも、すっかり途絶えている。

最後に性的な気分に浸ったことなど、いったいいつのことだっただろうか。依子は今、本城の猥褻な言葉を聞き、妙な熱さを感じ始めていた。

男はいったいどこまで要求してくるのだろうか。彼ははっきりと言った。別にレイプするわけじゃない。目で楽しませくれれば満足してやると。

その言葉を信じることへのリスクは、勿論存在する。だが、今の私に拒絶する権利はない。強気な気分を取り戻し、ただ男に負けぬよう振舞うだけだ。

「わかりました・・・・・・・」
依子は男のすぐ前で立ったまま、覚悟を決めたように小さくも確かな声を発した。純白のカーディガンに手をかけ、それをゆっくりと脱いでいく。

七部袖のラップワンピース姿の依子が、男の目に捉えられた。数種類の柄がパッチワークのように繋げられたワンピースは、洗練された人妻によく似合っていた。

「背が高いねえ、奥さん」
ちょうど膝が隠れるほどの丈にまで、ワンピースの裾が達している。本城は、改めて依子の肉体に関心を持ったように、そうつぶやく。

「昔、運動やってたんだろう、奥さん?」
「若い頃、陸上を少し・・・・・・」

「種目は何だ?」
「短距離と幅跳びです・・・・・・」

中学、高校を通じ、依子は陸上部に所属していた。38歳になる依子にとって、それは既に20年近く昔の話である。

だが、本城は依子の体に残存する何かを嗅ぎ取っていた。出産後、若干体型は変化したとはいえ、依子の長い腕と脚は依然敏捷さを感じさせるものだった。

「短距離と幅跳びか・・・・。確かに足は速そうな体してるな、奥さんは・・・・」
ワンピース姿のまま、依子は男の言葉を聞き続けた。要求がこれで終わるとは勿論想像していないが、依子は時間をかけたい気分だった。

「奥さん、いいこと思いついたぜ」
包帯が巻かれた足を投げ出したまま、本城は相変わらず椅子に座っている。その表情に浮かぶ笑みが、依子を少しずつ追い詰めていく。

「メジャーを持ってくるんだ、奥さん」
「メジャー、ですか?」

「ああ。長さを測るメジャーだよ。それぐらい家にあるだろう」
「は、はい・・・・・・」

「それから・・・・、そうだな、重いだろうけど、体重計をここに持って来いよ」
「あ、あの、いったい・・・・・・・・」

「奥さんの体をちゃんと知りたいと思ってな。ここで身体測定といこうぜ」
おかしそうに笑うほどに、本城の顔が崩れる。すぐ目の前に住むこの男の底知れぬ不気味さを、依子は初めて知らされたような気がした。



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