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近くに住む男(11)

2011 02 08
キスさえもできねえのか、奥さん。依子の心の中で、本城の送ったメッセージがそんな風に変化して何度も繰り返される。

人妻をあざ笑うようなその指示が、逆に依子の決意を確かなものにする。同時に依子は、その男に自分の姿を見せつけてやるという欲望をも思い出す。

たっぷりと見るがいいわよ・・・・。理性を忘れ、依子はそんなよこしまな気分に支配されていく。夫とのキスシーンをあの男に見せつけてやるのだ。

心にそう決めた依子は、ベッドの上で背中を向けている夫にそっと近づいていった。窓からは離れ、部屋の奥と表現できそうな空間である。

男が双眼鏡のようなものを抱えていたことを、依子は思い出す。この部屋の中を、あのレンズ越しに覗きこんでいるのだろうか。

夫婦間の交わりを拒絶するように、背中を向けた夫がそこにいる。結婚して8年、夫は既に43歳である。依子の心に微妙なさざ波が立ち始める。

いびきをかき、熟睡している忠弘の後姿に、かつて自分が愛した夫の名残はなかった。確かに愛しているはずの夫にそんな感情を抱き、依子は戸惑いを感じる。

毎日、懸命に働き続ける夫に不満を抱く権利など、私にはないはず。だが、今、ベッドに横たわる夫の姿に、依子はかつてない雰囲気を感じていた。

別の女性・・・・。理由もなく、依子は夫の体に、そんな気配を感じ取ってしまう。これまで一度だって、そんな疑いを抱いたことなどなかったのに。

連日、帰宅は遅く、酒の匂いを漂わせて帰宅する夫。依子に対しても、どこか冷めた態度を見せるだけだ。その理由がまさか・・・・・。

手に握っていた携帯が、依子を催促するように再び震える。夫に触れることもできず、依子はそこに届いた新たなメッセージに視線を投げる。

「何をためらってるんだ? キスだけでいいんだぜ」
やはり私のことを監視しているのだ。しかし、依子にはその指示に従うことができなかった。男に見つめられていることがその理由ではない・・・・。

「ごめんなさい。どうしてもできません」
依子は素早くメッセージを送信し、窓際へ戻った。向かい側にある窓を見つめれば、そこには椅子に座った本城がいた。

依子の回答を見つめ、男は意外そうな表情を見せる。パジャマ姿の人妻を、試すような視線で眺め、そして笑みを浮かべる。男の返信がすぐに届く。

「浮気してきた旦那とはキスできないのかい?」
依子の肢体に冷たい何かが走り抜けた。自らの感情が見透かされたことに驚くとともに、この男が何かを知っているのかと考えてしまう。

いや、そんなはずはない。ここで男の手口に乗ってしまってはいけない。そう言い聞かせ、返信をしない依子に対し、男のメールが更に届く。

「そこでパジャマを脱げ」
困惑と怒りの入り混じった瞳で携帯の画面を見つめ、そして男に視線を投げる。あの日、この部屋で披露した格好を再度要求するというのか。

唇をかすかに噛みつつも、依子はもう、男に説明を求めようとはしなかった。既に一度見せているという妙な安堵が、依子の体奥のどこかにある。

背後の夫に再び目をやる。変わらないいびき音が、寝室をうるさく支配している。とても目を覚ます雰囲気はない。依子の指先がパジャマに伸びる。

チェック柄のパジャマは、ワンピース風に膝の辺りにまで裾が届くトップスとパンツの組みあわせだった。そのトップスのボタンを1つずつ外していく。

窓の向こうに見せつけるように、それを大胆に開き、完全に脱ぎ去る。ベージュ色の落ち着いたデザインのブラだけが、人妻の上半身を隠している。

好きなだけ見ればいいわ・・・・。メールを送る代わりに、依子はそうつぶやき、本城を見つめた。男の要求は、しかし、強気な依子を更に追い込んでいく。

メールではなく、今度は男は電話をかけてきた。着信した瞬間に、依子はそれに反応した。電話の向こうから、本城の狡猾な声が低く響く。

「何度見てもいい体してるねえ、奥さん」
「いいかげんにしてください。こんなこと、主人に見られたら・・・・・」

「熟睡してるんだろう、旦那は?」
「それは・・・・・・」

「別の女とたっぷり遊んできたんじゃないのかい? ええっ?」
くっくっくっと、おかしそうに男が笑う。依子は憤りを抑えることができない。

「うちの主人に限ってそんなことないですから・・・・・」
「たいした自信だな、奥さん。まあ、いい女だからな、あんたは」

「ねえ・・・・・、もういいでしょう、本城さん、早くあれを・・・・・・」
「胸を揉んでみろ、奥さん」

「えっ・・・・」
「そこで俺を見つめながら、3分間、自分で胸を愛撫するんだよ」

「・・・・・・」
「いい加減にやったら、あれは返してやらねえぜ」

左手で携帯を握り締めたまま、依子は再び唇を噛んだ。だが、そこには安堵もあった。男が更に服を脱げと要求してくることを想像していたのだ。

「仕方ないわね・・・・。でも、約束は守ってもらいますから・・・・・」
窓の向こう側にいる男を見つめたまま、依子は右手を大胆に乳房に移動させる。ブラの生地を確かめるように手を覆い、それをそっと動かし始める。

ぎこちない手つきだった。こんな自分を慰めるような行為を、依子は過去にしたことがなかった。それほどに彼女は、性的な戯れとは距離を置いて生きてきた。

「もっと強く揉め。目を閉じるんだよ、奥さん」
矢継ぎ早に男の声が依子の耳に届く。従順さを示すように、依子は瞳を閉じ、右手に力を込める。素肌を曝け出しているのに、熱いものが依子を包み込んでいく。

羞恥心だけではない。喉の渇きを覚えるほどの体の変化を、依子は感じ始める。男に気づかれぬよう、依子は何度も唇を舐めるような仕草を見せる。

右手が別の意志を持って動き始めている。覚えたことのないような心地よさが依子の全身を支配していく。息が乱れ、下腹部が妙に熱くなってくる。

「奥さん、あと1分だぜ」
男のその声が、依子の対奥の均衡を妖しく刺激する。1分間我慢すれば解放されるのよ。そんなことを思うと、右手が更に激しく乳房を揉んでしまう。

ブラの下で、乳房の先端が硬くなっているのを感じる。肉体の変化に激しく戸惑いつつ、依子は別の誰かに激しく愛撫されていることを想像してしまう。

柔らかな乳房に魅せられるように、右手が好きなように動き回る。ただ一本の手なのに、何故か依子は複数の男に責められているような気分にさせられる。

「奥さん、いい表情になってきたぜ・・・・・」
「ねえ・・・・・・・、もういいでしょう・・・・・・・・・」
「あと15秒だ。ほら、奥さん、たっぷり愛撫されるんだよ・・・・・」

夫が過去に与えてくれた激しい腰の往復の記憶が、依子の秘所に蘇ってくる。あと数秒で行為が終わることを想像し、依子の何かが一気に高まっていく。

ううんっ、駄目っ・・・・・・・、負けちゃ駄目っ・・・・・・・・

心の中で、薄れゆく理性が何度もそう叫んだ。許しを告げる本城の声が、電話の向こうから届いたような気がする。依子は平静を装い、それを聞いた。

「奥さん、例のものはお宅のポストに入ってるぜ」
その一言とともに、電話は切れた。依子は脇にあった椅子にぐったりと座り込んだ。男がなおも見つめていることに、依子が気づくことはない。



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