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近くに住む男(12)

2011 02 09
こんな風に乱れたことなど、依子には記憶がなかった。それも、夫に愛されたわけではない。ただ自らの行為で、汗ばむほどに反応してしまったのだ。

妖しげな匂いをはらんだ心地よさの余韻が、なおも肉体の奥底に残っている気がする。依子は、それを何とか理性で説明しようと試みる。

長い間、夫に愛されていないのだ。38歳の女として、体が性的な何かを欲しがっていたとしても、それは自然なことであり、恥じることではないはずだ。

自分自身にそんな一面があったことに、これまで気づくことはなかった。しかし、依子は自らを納得させようとする。これはあくまでも自然なことなのだ、と。

だが、そんな変化を導き出したのは、あの男である。依子はそれを認めたくはなかった。何か、自分が本城に心を許したかのように思えてしまう。

ベッド上でいびきをかき続ける夫の傍らで、依子は脱ぎ捨てたパジャマに手を伸ばすことも忘れ、しばらくの間、椅子に座り続けた。

肢体に漂う火照りは収まる気配を見せていない。だが、これ以上、何かをするわけにはいかない。それを指示した男は、もう私を解放してくれたのだ。

ふっと気づいたように、依子は窓の向こう側に視線を投げた。既に男の姿はない。依子はパジャマを素早く身につけ、急いで階下に降りた。

玄関を開け、深夜の屋外に出る。ポストの中を確認すると、レジ袋のようなものに包まれた何かがそこに入っていた。それは、男の言葉通りのものだった。

「いつの間にこれを・・・・・」
本城は、奪い去った依子のショーツを、いつここに戻したのだろうか。その疑問に囚われながらも、依子は緊張を徐々に緩めていく自分を感じていた。

ともかく、取り戻すことができたのだ。もう、あの男に脅迫されることもない。これで終わりにしよう。以前の生活にまた戻るのだ。

その夜、依子は久々に深い眠りに就くことができた。そして、翌日からいつも通りの生活が再開された。単調であり、刺激の少ない日々だ。

夫の依子に対する無関心さは、変わることがなかった。決して冷酷なわけではなかったが、その態度には親密さを感じることはできなかった。

年が明け、寒い日々が長く続いた。やがて3月になり、春の気配が感じられるようになった。その数ヶ月の間、あの男が依子の前に姿を現すことはなかった。

外出している気配もない。ずっと家にこもっている様子だ。苦い記憶も徐々に忘れかけた頃、近所に住む主婦から、依子はこんな話を聞いた。

「ねえ、本城さんがね、今度は職安でトラブルを起こしたらしいわよ」
「職安、ですか?」
「ハローワークって言うの? あそこでまた暴れたんですって」

依子は驚きとともにそれを聞いた。ずっと引きこもっているとばかり考えていた本城が、また仕事を探そうとしているらしいのだ。

「それ、いつ頃のことなんでしょうか?」
「まだ先週のことらしいわよ。何でもそこで知り合った人からお金を借りてね」

「仕事を探しにきた別の人、に?」
「そうなの。それでそのお金の返済でもめて、大勢いる前で喧嘩したらしいわ」

「そうなんですか・・・・・」
「ほんと、いやな人ねえ。何だかこっちまで怖くなっちゃう」

あの時の記憶を少しずつ忘れかけていた依子にとって、その主婦がもたらした情報は、歓迎できるものではなかった。依子は不吉な予感を抱かずにはいられなかった。

それから更に数日経ったある日のことだった。その予感が、現実のものとなって依子の元にやってきたのは・・・・。

「奥さん、しばらくだな。旦那とは仲直りしたのかい?」
突然の電話だった。娘を幼稚園に送り出した直後、まだ朝早い時間だ。

「本城さん・・・・・、ごめんなさい、今、忙しいんです・・・・・・」
「そんなことはねえだろ。誰もいない家で、のんびり家事をするだけじゃねえか」

「そんな風に言わないでほしいわ・・・・・」
「そうか、奥さん、昼間からおっぱい揉んでいい気持ちになりたいんだろう?」

依子の脳裏に、あの夜の記憶が瞬時に蘇る。私が少しでも乱れてしまったことを、この男はやはり知っている。依子は一気に不安な気分に包まれてしまう。

「おっと奥さん、切るんじゃねえぜ。今日は少しばかり相談に乗って欲しいんだよ」
「相談と言われても・・・・、私、何もできませんから・・・・・」
「まあ聞いてくれよ。実は少しばかり借金があってねえ」

あの主婦の話と合致するような言葉を、本城は口にした。金を貸してくれとでも言い出すに違いない。無論、依子にそれを受け入れるつもりはなかった。

「奥さん、早とちりするなよ。別に金を貸してくれなんて言うつもりはねえ。借りた金は既に俺の手元にあるんだ。ただそれを返すことができなくてねえ」

「あの・・・・、どういうことでしょうか・・・・・」
「相手の男に会うことができねえんだよ。少しばかりトラブルを起こしちまったからな」

依子は、自分なりに考えてみた。ハローワークで喧嘩をしたという男に借金を返したいが、何らかの理由で本城は対面することができないとでもいうのだろうか。

「会えないのなら口座にでも振り込めばいいんじゃないでしょうか・・・・」
「現金を直接手渡して欲しいって言うんだよ、相手は。金額が100万と少々でかいしねえ」

「それで、私にどうしろっておっしゃるんですか?」
「俺の代わりにその男の家に金を返しに行って欲しいんだ」

男の要求が想像したような理不尽なものではなかったことに、依子はかすかな安堵を得た。だからといって、私がそれをする必要などどこにもない。

「でも、どうして私がそれをしなきゃいけないんでしょう?」
「あの事故で傷めた足がまだ少しずきずきするんだよなあ」

「・・・・・・」
「嘘じゃねえぜ。まあ医者は暖かくなれば完治するって言ってるんだが」

男のさりげない口調が、依子にはどこか憎らしかった。そこにあからさまな脅迫の気配はない。だがそれは、依子に選択の余地を与えないものでもあった。

男の言葉をきっぱりと拒絶できるほどの冷酷さを、依子は持ち合わせてはいなかった。その事故を自分の過失で起こしたことは、確かな事実なのだ。

「あの事故のことは申し訳なかったと思ってます・・・・・」
「だったら頼むよ、奥さん。少しは俺を助けてくれたっていいだろう」

「ただ訪れて、お金を返すだけでいいんでしょうか・・・・・」
「忙しいところ申し訳ないねえ、奥さん。他にこんなこと頼める人間がいないんだよ」

別居中の家族と依然として復縁していないことを匂わせながら、本城はほっとしたような雰囲気を漂わせた。そして、相手の男の情報を依子に伝えた。

結局、依子はそれを引き受けた。数日後、依子は指定された男のもとに訪れることになった。早くに出かければ、昼前には戻ることができそうな場所だ。

本城がその言葉以上のことをたくらんでいることに、依子は気づかぬままだ。



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CG「ネトラレ2」

Comment
11の場面が、12でも続くと思って期待していたのですが。
たとえば、彼が見ているのに、自慰行為に走るとか。
ちょっと残念です。

続きを期待します。
再開よかったです。
応援してます。
がんばってください。
…の前に先生の空白の説明が聞きたい。
たしかに、12話は無理矢理にラストシーンにもっていく気配が…(生意気にすみません)

生意気ついでに…私的には、ポストに返却されたパンツが、本城によってさらに汚されてるクロッチ描写を書いて欲しかったです。

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