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近くに住む男(13)

2011 02 10
「じゃあね、ママ!」
一人娘の結衣がマイクロバスの中に駆け込んでいく。その朝、幼稚園に出発する娘の姿を見つめる依子は、いつもとは違う気分に包まれていた。

本城からの依頼を実行する日だった。このことを夫に話すことは結局控えることにした。隠し続けている秘密が、露見してしまうような気がしたのだ。

自宅に戻った依子は、急いで出かける支度を済ませた。少し迷ったが、ベージュ色のスカートスーツを選んだ。そして、決意とともに本城の家を訪ねた。

「いつになく綺麗だねえ、奥さん」
清楚に着飾った人妻の姿を見つめ、男が意味深につぶやく。

「とにかく用件は早く済ましてきますから。お金をいただけますか?」
「これだよ、奥さん。頼んだぜ。大金だから失くしたりするなよ」
「わかってます。では」

100万円が入っているという封筒は、それなりの厚みをたたえたものだった。依子はそれを大切にバッグに仕舞い、車に乗り込んだ。

目指す場所は車で15分程度の場所だった。教えられた住所を見る限り、どうやらアパートらしい。依子は適当な場所に車を停め、目的地を目指した。

新しい一軒家が目立つ新興エリアにあって、それは随分古めかしいアパートだった。2階建ての木造で、通路には洗濯機やらゴミ袋やらが置かれている。

鉄製の階段をあがり、目指す部屋へと向かう。さび付いた枠に入った白い紙を確認する。教えられたとおり、そこには「榎本」という姓が書かれていた。

「おはようございます・・・・・」
ドアを軽くノックし、依子は中の気配をうかがった。しばらくの後、ドアが開いた。

「何かの勧誘なら結構ですよ」
ドアを開けた男は、開口一番そう言った。予想に反し、彼が穏やかでさっぱりとした外見であることに、依子は少しほっとした。

「あ、あの、私、松下と申しまして、本城さんから・・・・・」
「本城さん?」

「借りたお金を返すように言われてここに来たんですが・・・・・」
「ああ、本城さんですか」

男は思い出したようにそう言うと、依子のことを少し気遣うように笑みを浮かべた。本城とこの榎本という男が喧嘩をする光景が、依子には想像できなかった。

「とにかく中へどうぞ」
「い、いえ、お渡ししてすぐに帰るつもりですから・・・・・」
「そうはいきませんよ。金額も大きいんですから。さあ、どうぞ」

男の口調は決して押し付けがましいものではなかったが、妥協を許さない雰囲気も併せ持っていた。仕方なく依子は、誘われるままにその部屋へと足を踏み入れた。

どうやら1人暮らしらしい。狭い台所、居間、そしてもう一部屋ある。意外に綺麗に掃除されているが、やはり、生活の苦しさがどこか感じられる空間だった。

「すみませんね、こんな場所で。さあ、座ってください」
差し出された座布団に、依子は緊張気味に座った。お茶を用意する榎本の小柄な後姿をそれとなく観察する。私と同じくらいの年齢だろうか。

「さあ、どうぞ」
「すぐに失礼しますから。あの、こちらが預かってきたお金です・・・・」
「そうでしたね。では、失礼」

隣に座った榎本が、依子から素直に封筒を受け取る。そして中身の札束を慎重に確認した。男の表情が少し曇ったのを知り、依子はかすかな危惧を抱く。

「あの、何か問題があるんでしょうか・・・・・」
「金額が少々不足してるんですよ」

「確か100万円と聞いていましたけど・・・・」
「金利分を入れて120万円返してもらう約束なんですけどね」

榎本は少し困ったような表情を浮かべ、依子を見つめた。不法な高利貸しでもしているのだろうか。穏やかそうに見える男の素性を、依子は少し疑った。

「あの・・・・、私には何もわかりませんから・・・・・」
「そうですよね。少し待ってください、本城さんに直接電話してみますから」

男はそう言うと、隣の部屋に行き、電話をかけた。ふすまの向こう側だが、彼がすぐに会話を始めたことは依子にもわかった。

特に口論をすることもなく、2人は会話を進めているようだ。居心地の悪さを感じ始めた依子に、榎本が突然声をかけてきた。

「すみません、本城さんが少しお話したいそうですよ」
差し出された携帯電話を、依子はただ受け取るしかなかった。電話の向こうから届いた本城の声は、どこか楽しげなものだった。

「奥さん、申し訳ない。金利分が足らなかったようだな」
「そうみたいですね・・・・・・」

「それで今、榎本さんと話をしてね、別の形で支払うことで合意したから」
「別の形、と言いますと・・・・」

「奥さん自身に払ってもらうことにしたよ。どういう意味かわかるだろう」
「ちょっと・・・・・、何をおっしゃるんですか・・・・・・」

「俺と違ってハンサムな男と遊ぶのもたまにはいいだろう、奥さん。頼んだぜ」
一方的にそう言うと、本城は電話を切ってしまった。何も言うことができない依子のことを、榎本が同情するような視線で見つめている。

「本城さんが話してた奥さん、っていうのはあなただったんですね」
「えっ?」
「いろいろと聞いてますよ、奥さんのことは」

仮面を脱ぎ捨てたわけではない。男は依然として理性的で、穏やかな表情のままだ。だが彼は、確実に依子の肢体に近づいてきた。

「あの、私、そんなつもりないですから・・・・・・・」
戸惑いを隠せぬまま、依子はバッグを抱え、立ち上がった。本城がこの男に過去にいったい何を話したのか、言いようのない不安が依子の心をかき乱している。

「待ってくださいよ、奥さん。せっかくいらっしゃったんじゃないですか」
ドアに向かおうとした依子の背中に、榎本の手が伸びる。それが触れた瞬間、どういうわけか、依子は凍りついたように動けなくなってしまう。

「奥さん、本城さんだけじゃなく、僕のことも慰めてくださいよ」
「・・・・・・・」

「すぐに終わります。ほんの少しだけ、僕も奥さんを抱きしめたいだけなんです」
「そんなこと・・・・・、本城さんにだって許してません・・・・・」

依子の言葉を無視するように、榎本は少しずつ後退を始めた。抵抗の声を発することもできないまま、依子は隣の部屋の中央にまで引きずり込まれてしまう。

「榎本さん・・・・・、本当に困ります・・・・・・・・」
「奥さん、リラックスしてください。乱暴を働くつもりはないですから」

畳部屋の中央で、榎本は依子の肢体を背後からきつく抱きしめた。息苦しさを与えるほどの力強さで拘束しつつ、男の指先が繊細な動きを披露し始める。

「やめてくださいっ・・・・・・・」
依子の肉体に、あの夜の記憶が瞬く間に蘇ってくる。



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Comment
近くに住む男 は名作だと思います。
期待しています。
>近くに住む男 は名作だと思います。

そうでもないやろw

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