FC2ブログ

近くに住む男(18)

2011 02 17
「何するのっ!・・・・・・・・」
暗闇から突然伸びてきた腕を掴み、依子は叫んだ。

男は無言だった。既に両手を人妻の脇の下に差しこみ、その柔らかな肉体を背後から拘束している。階段を昇り切った場所で、依子は懸命に抗ってみせる。

ポロシャツの上から、男の手が依子の胸元をわしづかみにする。ただ欲情を満たそうとするように、その手は乱暴に依子の乳房を揉みしだく。

「いやっ・・・・・・・」
少しずつ目が暗闇に慣れてくる。狭い空間に、依子は人の気配を感じ始めた。ここにいるのは、後方から羽交い絞めにしてくる男だけではない。

本城、そして、やはり榎本がこの場所にいるのだろうか。依子は男の手をかきむしるように掴みながら、懸命に目を凝らした。

その事実を知ったとき、依子の腕から抵抗の力が急速に消えていった。勝気な人妻を一気に追い詰めるには十分すぎるほどの事実がそこにあった。

男は複数いる。しかも、2人だけではないのだ・・・・・。

「おい、早く寝室に連れて行くんだ」
本城の声が前方から聞こえてくる。依子は察した。背後の男は本城ではない、と。

その大柄な体格から、榎本とも違うようだ。更に、見知らぬ男はもう一人、依子の横付近にもいる様子だった。依子は彼らに両脇から抱えられ、移動を強要された。

寝室と思われる部屋のドアを開き、そこに入るように促される。二人に押し込まれるようにしてその中に引きずり込まれ、そしてベッドの上に投げ出される。

同時に、部屋の照明が点灯された。暗闇に慣れていた目が、その眩しい空間の光景を確認するまでには一瞬の猶予が必要だった。

「奥さん、いろいろと世話を焼かせるねえ」
グレーのスウェット姿の本城が、窓際に立っている。ベッドのすぐそばには、依子をここに運んできた見知らぬ2人の男がいた。

2人とも本城と同じくらい、或いはもう少し年配の中年男だった。どこか疲労感を漂わせた風貌だが、その目は好色そうな光を宿している。

依子はとっさに想像した。この男達は本城と同じように失業しているのではないのか、と。職業紹介所で出会ったのかもしれない。

「本城さん、いったい、何をする気なの・・・・、それに、この人たちは・・・・」
「奥さん、夜は長いんだ。まあ、そう焦るなよ」

「榎本さんは・・・・・・、榎本さんがいるんじゃなかったのかしら・・・・・」
「おう、そうだな。嘘なんかついてないぜ。ちゃんといるさ」

本城のその言葉はいい加減なものではなかった。寝室のドアが再び開き、更にもう1人の男が廊下側からゆっくりと入ってきた。

「奥さん、お久しぶりですね」
「榎本さん・・・・・」

深夜にもかかわらず、榎本はスーツ姿だった。1日の仕事を終えて帰宅した会社員のような外見だが、それは清潔感溢れ、疲れを感じさせないものだった。

爽やかとも表現できそうな笑みを浮かべながら、榎本はゆっくりと歩き、この広い寝室の最奥部に置かれた椅子に座った。窓際にいる本城の、すぐ隣だ。

「奥さん、榎本から全部聞いたぜ」
「・・・・・・」

「楽しませてあげたなんて嘘だろう。股間を蹴り上げて逃げてきただけじゃねえか」
「あれは・・・・・・・」

「酷いねえ、奥さん。俺だけじゃなく、榎本まで傷つけるなんて」
「別に、そんなつもりはなかったのよ・・・・・・」

依子は本城を睨むように見つめながらそう言うと、その視線を椅子に座った榎本に向けた。あの日と同じ優しげな視線を、ベッド上の依子に注いでいる。

「榎本さん、あのときは申し訳ありませんでした・・・・・」
正当防衛の行為と思ってはいても、依子はやはり詫びずにはいられなかった。

榎本は小さくうなずくような仕草を見せるが、言葉を発することはなかった。その沈黙が依子に嫌な予感を与え、本城の言葉がそれを加速させる。

「奥さん、そんな風に謝って済む問題じゃないだろう」
「・・・・・・・」
「男として使い物にならなくなったかもしれないんだぜ、榎本のあれは」

おかしそうに笑いながら、本城が依子にそう言った。その男への憎しみを、依子は再び思い出す。何をいい加減なことを言っているの・・・・・。

「本城さん、ふざけたこと言わないでください・・・・」
「ふざけてなんかいないぜ、奥さん。おい、榎本からも何とか言ってやれよ」

椅子に座ったまま、依子の姿を見つめている榎本の肩を本城が軽く叩く。あの日の記憶を思い出したのか、少し恥ずかしそうに榎本が口を開く。

「奥さん、本城さんの言っていることはまんざら嘘でもないんですよ」
「えっ?・・・・・」

「お恥ずかしい話なんですが、あれ以来、これの調子がおかしいんです」
榎本の手が、己の股間に軽く触れる。依子が強烈に蹴り上げた箇所だ。

「何というか、つまり、あれするときでも状態が全く変化しなくなりましてね」
そんなことあり得るものなのだろうか。依子は、榎本の言葉をすぐに信じ込むことができなかった。しかし、男の実直そうな顔つきに嘘の気配はまるでない。

「そんなこと、私に言われても・・・・・・・」
「奥さん、あんた陸上部だったろう。相当きつく榎本のあそこを蹴ったみてえだな」

再び本城が口を開き、同時に、少しずつベッド上の依子に近づいてくる。思わず立ち上がろうとした人妻の両手を、2人の中年男が素早く拘束する。

「今夜、榎本に詫びろってのが、どういう意味かわかるかい、奥さん?」
身動きのできない依子の顎を、本城の手がいやらしく撫でる。ベッド上で脚を投げ出すように座り、依子は本城を睨むことしかできなかった。

「知らないわよ、そんなこと・・・・・・」
「何とか榎本に男の喜びを取り戻して欲しいんだよ。奥さんの魅力でな」

「・・・・・・」
「榎本を興奮させるんだよ。奥さんの色っぽい姿を見てもらって」

ベッドに飛び乗り、本城が依子の肢体を押さえこもうとする。2人の男に左右から拘束されている以上、依子の抵抗には限界があった。

唯一自由に動かせる両脚を激しく躍らせ、本城の体を突き飛ばそうとする。それは何度か男の上半身にヒットしたが、人妻のその抵抗を彼は楽しんでいた。

「こんな蹴りをくらえば、ペニスが潰れちまっても不思議はねえな、奥さん・・・・・」
依子の腰に馬乗りになり、本城が上から見下ろしてくる。遂に手中に収めた人妻の肉体を堪能するように、男の両手が依子の胸元に伸びる。

「ほら、榎本に見せてやるんだよ、奥さんが気持ちよくなるところを」
本城が上半身を倒し、強引に依子の唇を奪おうとする。男を睨みつけたまま、依子は接近するその顔に激しく唾を吐きかける。



(↑クリック、凄く嬉しいです)


「人妻スパイと少年兵」


Comment
これからもよろしくお願いします。
わたくし、普通よりは多くの小説を読んで来たと思っている者ですが、のりのりさんの作品は、その中でもトップクラスの作品だと思いながら読んでます。自分も書いてみたいと思うのですが、のりのりさんのような、書ける側の人間ではないので、のりのりさんの作品を読む側の人間として楽しませてもらってます。次回更新を楽しみにしつつ、ではまた。

管理者のみに表示