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欲情のトライアングル(2)

2011 08 09
原島さんが監督としてこのチームにやってきたのは、僕の入学と同じ今年の4月でした。

弱小大学の監督にかつての名選手が就任したそのニュースは、多くの人々に驚きを与えましたが、大学側の内情を知る人にとっては違いました。

ここ数年、大学経営陣の方針転換により、体育会各チームの強化が進められたことは、前にも書いた通りです。

現役生活を全うした社会人チームで、将来の指導者になるべくコーチ業に専念していた原島さんに、我が大学は半ば強引に接近し、監督に招聘しました。

一説によれば、原島さんの当時の勤務条件は決して恵まれたものではなく、大学側が提示した莫大な報酬に目がくらんだのだろうとのこと。そんな興味本位の報道が、スポーツ紙を随分とにぎわせたものです。

40歳になったばかりの監督には、2歳下の奥さま、藍子さんがいます。大学時代に知り合ったという二人は、結婚してもう15年近くになるらしいのですが、お子さんはいません。

監督がどんな理由で大学側の要請を受け入れたのか、本当のところは僕にはわかりません。ただ言えることは、監督はその手腕で周囲の雑音を見事に封じ込めたことです。

就任わずか1年目で万年下部リーグのチームを2部リーグに引き上げたニュースは、スポーツ紙のみならず、一般紙の報道でも大きく取り上げられました。

マジックという安易な言葉を乱用しながらも、新聞各紙は原島監督の功績を好意的に報じました。僕たちは、そんなニュースを満足げに眺めたものです。

入部時には選手を目指していた僕は、早くも4月の終わり頃ころにはマネージャー業に専念することになりました。

周囲の選手たちの実力を見て退部を決意した僕を、マネージャーとしてチームに貢献するように説得してくれたのが、誰あろう原島監督です。

当初は少し迷った僕ですが、今は全く後悔していません。縁の下の力持ち的な役割が、僕には合っているのかもしれません。

数年前に完成したクラブ寮で、僕らは共同生活を送っています。40人ほどの学生と同じ建物に、監督そして藍子さんも一緒に暮らしています。

藍子さんは、学生のころに栄養学を専攻していたらしく、僕たちの合宿所での毎日の食事メニューを考案してくれています。

寮の運営スタッフは他にも何名かいますが、その中心はやはり藍子さんです。僕ら1年生と一緒に食事を作ったり、掃除を手伝ってくれたりと、日々僕らの助けになってくれます。

大学時代、水泳部に所属していたという藍子さんは、身長165センチ程の長身で細身ですが、女性にしては肩幅が少し広いのが特徴です。大柄なその体型は、藍子さんの芯の強さを証明しているようでもあります。

男勝りの性格は昔からのようで、僕ら汚い若者たちに交じっても、何ら違和感はありません。ショートカットがよく似合う美人で、よく観察すればスタイルもいいのですが、選手たちの間で藍子さんがそんな風に噂になることは何故かありませんでした。

つまり、藍子さんが性的なイメージでとらえられることは、ほとんどなかったのです。よく考えてみれば、これは不思議なことです。二十歳前後の男たちが集まっているのですから、当然そんな目で見られても不思議ではありません。

やはり監督の妻ということで、皆の心の中に遠慮があったのかもしれません。それに加え、藍子さんは僕たちの妙な邪心をかき消すかのように、いつも陽気で、あっけらかんとした態度で接してきました。

「ほら、洗濯機にこんな忘れ物あったわよ! 誰、ノーパンでご飯食べてるのは!?」

皆が夕食を食べている食堂で、藍子さんが叫びます。いつもと同じアディダスのジャージ姿で、片手には男物のトランクスを握りしめています。

爆笑の渦が食堂を包み込みます。藍子さんとは対照的でクールで寡黙な原島監督も、テーブルの端でどこか楽しそうに笑みを浮かべています。

僕らは皆、藍子さんのことが好きでした。でも、そこには妙な感情は存在しませんでした。あくまでも僕の推測ですが、例えば性的な妄想に藍子さんを巻き込むようなことをする選手は、誰もいなかったはずです。

藍子さんは、そんなタイプの女性でした。



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Comment
うーん
かなり興奮しそうな内容になりそうですね~

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