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欲情のトライアングル(4)

2011 08 22
2人だけじゃ寂しいと言いながらも、僕達は誰かを呼ぼうともしませんでした。何といっても浜本さんにも僕にも気軽に声をかけられるような女性の知り合いがいなかったのですから。

「昇格の褒美か。確かにあってもいいなあ」
何かを想像するように笑みを浮かべながら、浜本さんがビールを喉に流し込みます。かといって、そんな当てがないことも、勿論分かっているようです。

「ま、俺たちには合コンを似合わねえからな」
自嘲気味に浜本さんがつぶやきます。僕がそれにうなずき、テーブルの上のつまみに手を伸ばしたときでした。

突然、部屋のドアをノックする音が響いたのです。この寮には自分達しかいないはずと思い込んでいた僕達は、驚きのあまり、動きを止めました。

「は、はい」
浜本さんが畳みの上に座ったまま、少し怯えた様子でドアのほうに声をかけます。その向こう側からは意外な声が届きました。

「こら! 今夜で寮は閉めるわよ。とっととここから出て行きなさい!」
その声の主が誰なのか、僕達にはすぐにわかりました。叱りつけるような口調ですが。実は笑いをこらえていることまで見透かせます。

「えっ、藍子さん?」
浜本さんが、安堵と驚きの入り交ざった声でそう尋ねます。ゆっくりとドアが開くと、そこには僕らの想像通りの光景が待っていました。

いつもと変わらずアディダスのジャージ姿の藍子さんが、悪事を働く子供たちを見つけたかのように、にんまりとした笑みを浮かべています。

ほとんど化粧もしていない様子ですが、僕は藍子さんの肌の綺麗さを改めて感じました。はっきりとした顔立ちのそのルックスは、やはり年齢よりは若く見えます。

普段どおりの藍子さんの姿ですが、僕達の予想が外れた部分もありました。藍子さんの片手には、缶ビールで膨らんだコンビニの袋があったのです。

「ほらほら、早く帰った、帰った!」
からかうようにそう言いながら、藍子さんは勝手に部屋の中に入ってきます。そして、僕と浜本さんの間に座布団を置くと、当然のように座りました。

「嘘ですよね、藍子さん、寮が今日で閉まるなんて」
「嘘じゃなかったら、どうする?」
「冗談よしてくださいよ。俺たち、今夜もここで寝るつもりなんですから」

藍子さんのジョークに付き合うようにそう言う浜本さんは、まだどこか不安げな様子です。ずっと無言で座っている僕には気づかぬ様子で、藍子さんが答えます。

「だからといってこんな風に1年生マネージャーを悪の道に誘い込んでいいのかな~」
藍子さんの言葉に僕は少し嬉しくなりました。

「ちっ、違いますよ。宮崎には酒を飲ませてませんから・・・・」
「ふふっ、まあ、いいわよ。今夜ぐらい、見逃してあげるから」

浜本さんが呆れたように藍子さんを見つめます。構うことなく藍子さんは冷えたビールをテーブルの上に取り出し、そして初めて僕に視線を投げました。

「よし。今夜は3人で昇格祝いといこうかな~」
「あ、あの、藍子さん・・・・、監督は?・・・・・・」

目の前のコップにビールが注がれるのを見つめながら、僕はようやく口を開きました。それほど厳格ではない監督ですが、やはりこんなところを見られたくはありません。

「大丈夫。今夜はリーグ主催の忘年会とかでここにはいないから」
一瞬、僕には藍子さんが寂しげな表情を浮かべたように思えたのですが、それをかき消すかのように、藍子さんが高らかに叫びました。

「じゃあ改めて、2部昇格おめでとう! そして一年間、お疲れ様でした!」
僕達はグラスを鳴らし、心地よい酔いの中を漂い始めました。それまでとは違い、今度は藍子さんも一緒です。



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