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欲情のトライアングル(13)

2011 09 12
腕時計に針は既に午後11時を過ぎていることを僕に告げています。ドアのこちら側にいる浜本さんと僕は、その場に座り込み、ただ沈黙を貫いていました。

言葉を発しようともしません。僕にはわかっていました。浜本さんが懸命に耳を澄ましていることが。勿論、それは僕も同じでした。

ドアの向こう側から届く音、そして声を、僕らは懸命に聞き取ろうとしていました。向こう側にいる大人の男女が何をしているかを理解するために・・・・。

寮内にはこの部屋の僕達以外、誰も存在しません。年末でもあり、周囲の道路から届く車の音も、今夜はほとんどありません。

それにドアといっても、所詮は部屋と部屋を仕切る簡素なものです。防音効果とは無縁のその木製のドアが壁や床と接する部分には、音を伝えるには十分な隙間があります。

私がちゃんと解決してみせるから、何も心配しなくていいわ・・・・・

藍子さんはそう言い残して、黒木さんとともに部屋の中に消え去りました。僕には勿論想像できました。黒木さんがいったい藍子さんの何を望んでいるのか。

藍子さんだって、それは理解しているに違いありません。そんな状況下から藍子さんはいったいどう切り抜けようとしているのか、僕は不安と、そして興奮に包まれていました。

10分ほどは何の物音も聞こえてきませんでした。浜本さんと僕は、かすかな安堵さえ覚え始めていました。そんな僕らの観測は、しかし、唐突にかき消されていきます。

「ほらっ・・・・・、どうだ・・・・・・・・・・」
最初に届いたのは、紛れもなく黒木さんの声でした。気のせいか、黒木さんのその声色は、息遣いが荒く、ひどく昂ぶっているように聞こえました。

藍子さんが何かをされている・・・・。僕は、藍子さんの声から2人の様子を推測しようとしました。しかし、藍子さんの発する声は、なかなか届きませんでした。

「奥さん・・・・・・、ほら、素直に声を出せよ・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「隣の部屋にいる連中に聞かせるんだ・・・・、ほらっ、もうぐっしょりじゃねえか・・・・」

黒木さんの脅迫めいた言葉だけが、僕達の妄想を膨らませていきます。羞恥心からか、或いは人妻としてのプライドからか、藍子さんは懸命に耐えているようです。

夫以外に刺激を与えられても、何も感じるわけがない。黒木さんにそう言い放った藍子さんの勝気な姿が、僕の脳裏に鮮やかに蘇ります。

でも想像の中の藍子さんは、上半身をブラだけで隠し、タイトスカートから伸びる長い脚には引き裂かれた黒いパンストを絡ませた、あまりになまめかしい姿です。

僕は想像を止めることができません。藍子さんが強い態度を示せば示すほど、僕の興奮は高まります。それが崩壊したときの藍子さんの姿を、僕はどこかで望み始めています。

「奥さん、ほら、俺の指先を見ろよ・・・・・、こんなに濡れてやがる・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「ずっと満たされずに生きてきたんだろう、奥さん・・・・・」

脚を大きく開かれ、黒木さんの指先で激しくいじめられている藍子さんの姿を、僕は思い浮かべます。その妄想を裏付けるように、湿った音が確かに届き始めます。

くちゅくちゅ・・・・・・・、くちゅくちゅくちゅ・・・・・・・・

藍子さんの大切な部分から、何かが溢れ出しているのです。原島監督のものであるはずの藍子さんの肉体が、今、別の男に対して反応を始めてしまっています。

「ううっ・・・・・・・・・、ううんっ、よしてっ・・・・・・・・・・」
藍子さんのかすかな声が、遂に僕達の耳に届き始めます。

「奥さん、どんな気分だ・・・・・・、旦那にされるよりもはるかに気持ちいいだろう・・・・・」
「よくないっ・・・・・・・・、よくなんかないわよ・・・・・・・・・・・」

その声は、こちらの部屋にいたときとは明らかに変貌していました。強い意志を伴った抵抗心と同時に、誘惑に溺れるような弱さをも感じさせる声でした。

「奥さんが何と言おうと、体は素直みたいだな・・・・・・」
「勘違いしないで・・・・・・・・、ううんっ、駄目っ・・・・・・・・・・・」

「結婚以来、一度も満足したことがないんだろう、奥さん・・・・・・・」
「・・・・・・・」

「だからこんなに敏感に反応してるんじゃないのか?・・・・・・・」
「わかったようなこと言わないでくださいっ・・・・・・・」

「我慢してる期間が長けりゃ長いほど、女は激しく乱れる。人妻なら特にそうだ・・・・・・」
「いやっ・・・・・・・・、黒木さん、もうほんとにやめてっ・・・・・・・」

藍子さんの声の震えが少しずつ加速していきます。僕達に何かが近づいていることを教えるような、藍子さんの艶めいた声は、浜本さんにある決断を与えました。

「藍子さんっ!・・・・・・、大丈夫ですか!?・・・・・・・」
ドアの向こう側に、浜本さんの叫び声が投げられました。すぐに返ってきたのは、意外にも藍子さんのはっきりとした声でした。

「浜本君、大丈夫だから!・・・・・、いいから、部屋の外に出てなさい!・・・・・」
「監督に・・・・・、監督に連絡しましょうか、藍子さん!?・・・・・・」

その夜、リーグ関係者との忘年会か何かで監督は深夜まで外出していると、藍子さんは説明していました。しかし、そろそろその食事は終わっていてもいい頃です。

この場に監督が来たら、いったいどうなるんだろう。他の男に自分の妻があんな風にいじめられているのを見たなら・・・・。

「浜本君! 余計なことしないで!・・・・・・」
「でも、藍子さん・・・・・・・」
「いいから。絶対にあの人を呼んだりしちゃ駄目!・・・・・・・・・」

そう叫んだ後、藍子さんはその口を突然塞がれたかのように、苦しげな声を漏らしました。そして、しばらくの後、先刻にも増して妖しい声をあげ始めました。

「いやっ・・・・・・・、ううっ・・・・・・・、駄目っ、しないでっ・・・・・・・・」
「奥さん、そろそろ我慢できないだろう・・・・・・・・・」

「ううんっ・・・・・・・、あなたなんか少しも欲しくないわ・・・・・・・・・・・」
「そうかな・・・・・、悪いが俺はもう我慢できないぜ・・・・・・」

しばらくの沈黙の後、藍子さんの「いやっ!」という抵抗の声が何度か届きます。何か揉み合うように、2人の体が激しく動きあう気配を感じます。

「宮崎・・・・・、悪い、俺はもうこれ以上耐えられない・・・・・・・」
浜本さんはそう言うと、突然立ち上がりました。

「食堂に行って頭を冷やしてくる・・・・、お前もこれ以上ここにいないほうがいいぞ・・・・・」
僕への忠告を残し、浜本さんは逃げるように自分の部屋であるこの場所から姿を消しました。

それは正論でした。もう、僕達にはどうすることもできません。そして、これ以上ここにいたのなら、僕は知ってはいけないものを知ってしまうことになるのです。

選手の誰もが知らない、藍子さんの別の姿です。いや、本当の姿と表現したほうがいいのかもしれません。女性として何も我慢することなく素直に、奔放に振舞う姿・・・・。

僕は迷いました。ここを早く立ち去ったほうがいい。心の片隅に追いやられた良心がそう叫ぶのを感じます。しかし、黒木さんの声が、僕の理性を無残にかき消してしまいます。

「ほら、奥さん・・・・・、その色っぽい尻をこっちに向けろ・・・・・・・・」
藍子さんがどんなポーズを要求されているのか、僕は強烈なイメージを浮かべます。そして、その場に腰を沈め、無意識のうちに股間に右手を伸ばしてしまいます。



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