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欲情のトライアングル(23)

2011 10 19
藍子さんの指先の感触が、僕のペニスから消え去ることはありませんでした。それは、時間を問わず僕の欲情を刺激し、淫らな妄想へと誘い込みました。

いえ、妄想ではありません。あの夜、洗濯場がある外廊下で、藍子さんが僕のものを握り、射精へと導いてくれたのは確かな事実なのですから。

監督の妻とそんな秘めた関係を持ってしまったことに、僕は酷く興奮していました。藍子さんはどう思っているんだろう。僕にはその答えを見つけることはできませんでした。

黒木さんに陵辱されたものの、心を許すことなく最後の一線を守り抜いた一夜。藍子さんは、その記憶を封じ込めようと、僕に淫らな行為を与えてくれました。

僕とあんなことをした記憶は、藍子さんはもうすっかり忘れ去ってしまったのだろうか。そして、夫である原島監督と毎晩あんな卑猥な行為を楽しんでいるのだろうか。

「ほら、宮崎君、この請求書の処理、お願いするわね。いい?」
あの夜以降、藍子さんの僕に対する態度に変化はありませんでした。これまで通り、きびきびとした態度で僕に接し、あれこれと指示を出してきます。

他の選手やマネージャーと比較して僕にどこか距離を置いていることにも、変わりはありません。そんな態度に、僕に対する特別な感情の存在をかすかに感じることもあります。

「藍子さん・・・・・」
「何かしら、宮崎君。私、グラウンドに行かなきゃいけないから忙しいんだけど」

「い、いえ、別に・・・・・・、だったら、いいです・・・・・」
「もう、はっきりしないわね、上級生なんだから、もっとしっかりしてよ」

僕は、藍子さんと親密な会話を交わそうと、何度も接近を試みました。しかし、その都度拒絶をされ、強引に押し切るような強さを僕は持っていませんでした。

もう一度二人きりになり、藍子さんに猥褻なことをしてほしい。僕は、密かにそんな欲望を抱いていたのです。しかし、それが実現することはありませんでした。

「はい、今夜のメニューはビーフシュチューよ! さあ、食べた、食べた!」
ジャージ姿で選手たちにそう声をかける藍子さんの姿に、性的なイメージは全く感じられません。選手たちは皆、藍子さんをそんな対象としては見ていません。

僕だけが藍子さんの本当の姿を知っているんだ。そんなうぬぼれにも似た感情は、しかし冷静さを取り戻した僕にとっては別の響きを持って迫ってきます。

いや、あれは藍子さんの本当の姿じゃない。僕のペニスをしごいてくれたときは勿論、黒木さんに犯されたときも藍子さんは女性としての本当の姿をさらけ出してはいなかった。

追い込まれてはいたものの、結局は自らのプライドを守り抜き、牝として奔放に振舞うことはなかった。それを自覚していた僕は、どこかで敗北感をも抱いているといえました。

一度、こんなことがありました。深夜、僕が寮内での仕事を終えて自分の部屋に向かっていたとき、廊下で偶然に藍子さんとすれ違ったのです。

「あら宮崎君、遅いのね」
「え、ええ・・・・・、少しトレーニングルームの確認をしてましたから・・・・」

「そう・・・・・、ねえ、宮崎君・・・・・・・・」
「えっ?・・・・・・」

「あの夜は気持ちよかった?・・・・・・」
「・・・・・・・・」

藍子さんに突然そんなことを言われ、僕は言葉に詰まりました。藍子さんの表情には、僕を小馬鹿にしたような、意地悪な笑みが浮かんでいました。

「よかったんでしょう、宮崎君?」
戸惑いを増す僕に対し、藍子さんは決定的な言葉を続けました。

「あんなこと、もう一生してあげないから。せいぜい、忘れないことね」
小さな笑い声とともに足早に立ち去る藍子さんとは対照的に、僕はその場に立ち尽くすことしかできませんでした。

一度だけ与えてあげたあの記憶に、一生すがって生きていくがいい。あなたには、もうあんな快感を味わえる機会は二度とめぐってはこないのだから。

考えすぎかもしれませんが、僕には藍子さんがそう言っているように思えました。同情すると同時に、僕のことをどこかで見下しているのです。

激しい欲情、憧れ、そして怒り。複雑な感情を抱きながら、僕は毎夜、布団の中でペニスを握り締め、藍子さんを抱くことを想像しながら、自慰行為に浸りました。

そんな無為な日々が永遠に続くのかと思われるほど、僕は行き場を失っていました。しかし、思いがけぬ方向から、変化は訪れたのです。

それは、冬の気配が色濃くなってきた12月のある日のことです。黒木さんと藍子さんの行為から、ほぼ1年が経過しようとしていました。

「宮崎、練習後、監督室に来てくれるか」
グラウンドのベンチに座り選手たちの状況をメモしていた僕にそう声をかけてきたのは、紛れもなく原島監督でした。

その要請が監督としてではなく、藍子さんの夫という立場からのものであることに、僕が気づくはずもありませんでした・・・・。



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