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終着駅(1)

2012 01 10
久丘京子は鏡の前に立っていた。

白色のワンピースに包まれた自らの肢体を見つめ、揺れ動く心のさざ波を忘れ去ろうとする。38年間の過去を思い出すように、ただ自分自身の姿を見つめる。

自分自身でも気づかなかった疲れの気配が、そこには漂っている。いや、気づかなかったわけじゃない。気づかなかった振りをし続けてきただけだ。

もう、ここ何年もの間・・・・・・・・。

いったい私はどこから来たんだろう。そして、どこに向かおうとしているのか。鏡の中の薬指に光るものを見つめ、京子は再び心を乱される。

ボディラインに変化はない。学生時代、男友達に賞賛されたスリムなスタイルに衰えはない。しかし、かつて確かにそこに存在した輝きが、既に消え去っていることに京子は気づく。

私がこうだから、なのか・・・・・・・・・・。

あの「原因」を、京子は自分自身に負わせようとする。しかし、そんな己の優しさに、京子はどこかうんざりとした感情を抱く。

私のせいなんかじゃない。そんなこと、絶対にあり得ない・・・・・・・。

リビングテーブルに置かれた携帯が何度も震えているのが聞こえる。鏡の中の自分自身を見つめ、そして京子は決意する。

それが誰からの電話なのか、京子には既にわかっていた。

午前10時。夫も娘もいない自宅で、京子は寝室からリビングへと静かに歩みを進める。そっと携帯を握り、ディスプレイを牝猫のような視線で見つめる。

未登録の番号からの電話に、京子はこれまで応えたことはなかった。しかし、今朝ばかりは違う。かすかなためらいの後、京子は形のいい唇をそっと開く。

「もしもし・・・・・・・」

その電話から、京子は終着駅へと走り始めた・・・・・・・。


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Comment
あけましておめでとうございます
新作・・・、
今までとはまた違う、しっとりとした雰囲気で、初回から期待させてくれます^^

今後の連載、今日からまた、楽しみにさせていただきますね。
おめでとうございます
期待して読んでいます 今年もよろしく
なんだか、先が全く予想出来ないですね。深刻な重い空気が伝わってきます。 今回も楽しみです♪

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