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終着駅(10)

2012 02 09
午後9時を少し過ぎた頃だった。この地下の狭い空間は、いつしか人で溢れている。大半が会社員風の男性客であり、女性客はほとんどいない。

店内に流れるテナーサックスの音色に耳を傾けている連中もいれば、数人で小さなテーブルを囲み、ここまでの5日間の鬱憤を晴らすように、大声で談笑する客もいる。

カウンターの奥の男女に視線を運ぶ客は、今のところ誰もいない。大柄な男性客が、その向こう側にいる細身の人妻の姿を巧みに隠している。

「やめて・・・・・・・、やめてください、真鍋さん・・・・・・・・・」
「まあいいじゃないですか、奥さん・・・・・・・・」

伸ばした左手で、真鍋がゆっくりと京子のヒップを撫で回す。カウンターに並んだ小さな椅子に座った京子は、もじもじと肢体を動かすだけで、そこから逃げることができない。

夫を含め、もう何年もの間、男性にはこの肉体に触れられていないはずだ。そんな自分を、京子はこの男のようなタイプにだけは汚されたくなかった。

夫の上司であるという事実が、京子の中の何かを妨げている。既に修復不可能なほどに破綻した関係のはずなのに、どういうわけか部下の妻という役割を、京子は意識してしまう。

「真鍋さん、いけません・・・・・・・・、もうおよしになってください・・・・・・・」
右手を伸ばし、男の攻撃を封じ込めようとする。しかし、その手首を逆に掴まれ、京子は身動きがとれなくなる。

「あの日からずっと気になっていたんですよ、奥さんのこと・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「それがまさかこんな場所で再会できるなんて・・・・・・・・」

指を絡めるようにしながら、真鍋が京子を強く引き寄せる。やがて腰のくびれに男の手がまわりこみ、脇腹を揉みしだくように刺激し始める。

「いけませんっ・・・・・・・・・・・・・・」
嫌悪感を伴った妙な感覚が全身に走り、京子は肢体を震わせる。手にしていたグラスを思わずカウンターに置き、肩にかけたストールを掴む。そして素肌を曝け出した両肩を隠そうとする。

男の責めは極めてゆっくりなものだった。それが逆に、京子を確実に追い込んでいた。いつでも逃げ出せるという安堵感が、人妻をいつしか欲深い淵に引きずり込もうとしている。

「もうずっとご無沙汰なんでしょう、久丘君とは・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」

「だからこんな素敵な格好で他の男を誘惑しようとしている・・・・・・」
「私・・・・・・、そんなつもりじゃ・・・・・・・・」

自らの軽率な行動を、京子は改めて悔やんだ。深い屈辱を京子は感じた。この狡猾な男に、自分の秘めた計画を全て見透かされていることが、京子はどうにも悔しかった。

目の前にいたバーテンダーはさりげなく距離を置き、真鍋と京子を孤立させている。背後のテーブル席にいる多くの男性客たちの視線を、京子は感じる。

夫に捨てられた人妻の姿を、男達は密かに見つめているのかもしれない。果たして繁樹は何を感じるだろうか。自分が捨てた妻が、別の男達に興奮を与え得る存在だと知ったら。

激しい戸惑いの中、京子は屈折した満足感にかすかに浸る。そんな人妻の隙を突くように、男の左手が京子の太腿に滑り込む。ワンピースの裾を確認した指先が、膝頭を撫でる。

きつく閉じた両脚の隙間に、男の指先が食い込んでいく。圧倒的な力強さでそこをこじ開け、真鍋の左手が京子の熟れ切った太腿を確かに掴む。

「いやっ・・・・・・・・・・・・」
椅子に座ったまま、京子はうつむき、密かに唇を噛む。声を出して抵抗しようとしない自分自身を、京子は受け入れることができない。

嫌悪感しか存在しないはずだ。こんな男に体を差し出すために、今夜ここに来たわけじゃないのだ。この男は夫と同種の、最低の類に属する獣なのだ・・・・・・。

「奥さん・・・・・・、ほら、脚の力を抜いてください・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「すぐに気持ちよくさせてあげますよ・・・・・・・」

あまりに低俗な口説き文句だった。このような誘い言葉に堕ちてしまう女性などいるのだろうか。理性がそう感じても、しかし、京子はなおも抵抗ができない。

少しずつ真鍋の指先が脚の隙間の奥に伸びてくるのを感じる。きつく閉じても、逆に男の指先の感触が強まり、妙な気分が高まってしまう。

「いやっ・・・・・・・・・・、いけません、こんなこと・・・・・・・・・・・・」
「欲求不満なんでしょう、奥さん・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」
「久丘君は今頃別の女とこんなことしてるんですよ。奥さんだっていいじゃないですか、私と楽しんだって・・・・・・」

真鍋のその言葉が、京子の何かを激しく打った。屈辱と後悔、そして激しすぎる怒りが、京子の全てのためらいをかき消し、表面に浮かび上がる。

「いい加減にしてっ・・・・・・・・・、声を出しますよ、真鍋さん・・・・・・・・・」
「奥さん、出したってこの店じゃ誰も助けてなんかくれませんよ・・・・・・」
「私、本気ですから・・・・・、誰かっ・・・・・・・・、誰かっ、助けてくださいっ!・・・・・・・・」

京子の叫び声に、店内が一瞬静まり返った。しかし、数秒の静寂の後に訪れたのは真鍋の言葉通りの世界だった。猥褻な行為に困惑する人妻に対し、助けが与えられることはなかった。

「交際中の不倫カップルが痴話喧嘩していると思われるだけですよ、奥さん・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「待ち合わせのお友達が早く来るといいですなあ・・・・・・・・・・」

完全に京子の肢体を引き寄せ、スカートの最奥にその手を届かせる。カウンターの下でスカートを捲り上げられた人妻の唇を、男が強引に奪おうとする。

「いやっ・・・・・・・・・・」
「キスぐらいさせろよ、奥さん・・・・・・・・」

本性を曝け出すように、真鍋の口調が変貌していく。逃げようとする京子の口を執拗に追い、やがて完全にそれを捉え、ねっとりと吸い始める。

スカートの奥に伸ばした片手で、京子のショーツを乱暴に刺激し始める。暴れる人妻の肉感的な肢体が触れる度に、真鍋の興奮が高まっていく。

「ううんっ・・・・・・・・・・・・」
京子は両手を伸ばし、男の体を押しやろうとする。しかし、それを上回る力で拘束され、舌先を無理にねじ込められる。男の口臭が京子の舌を犯し、理性を吸い取っていく。

「駄目っ・・・・・・・・・・・」
「奥さん・・・・・・・・、ほらっ、舌を出すんだ・・・・・・・・・・」
「いやっ・・・・・・・・・・・・・、あんっ・・・・・・・・・・・・・・」

大切な箇所が、ショーツ越しに真鍋の指先に遂に捉えられたことを京子は感じる。息が乱れ、鼓動が信じられないほどに高まっていく。

「奥さんっ・・・・・・・、もう濡れてるんじゃねえのかい?・・・・・・・・・」
「いやっ・・・・・・・・・・・、ううんっ、そこはいやっ・・・・・・・・・・・・・・・・」

助けてっ・・・・・・・・・・、誰か、こんな男から私を・・・・・・・・・・・

追い込まれた人妻の姿を、1人の男が先刻からずっと見つめている。



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Comment
感謝
内容の濃い物語、ありがとうございます。
久しぶりに来て新作全部読みました。京子は今までの人妻と違い貞淑ではないんですね。夫の浮気に対して自らも浮気しようとする人妻がどこまで堕ちるか楽しみです。
いつも通りのねっとりとしたSEX描写期待してます。


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