FC2ブログ

終着駅(13)

2012 02 28
「とりあえず乾杯」
「え、ええ・・・・・・・」

京子にとって、この展開が何を意味するのかすぐに理解することはできなかった。だが少なくともあの男、真鍋から距離をおけたことが幸せだった。

あの店で受け入れた妙な体感が依然として肌に残っている。だが、今はその環境にはいない。私は別の男と一緒にいるのだ。

「いったい何だったんですか?」
「い、いえ・・・・・・」

「お知り合いの方だったんですよね・・・・・・」
「え、ええ、まあ、そうなんですが・・・・・・・・・・・・」

先刻の店から歩いて10分程度の場所にある居酒屋である。京子は自らが取るべき態度を把握できぬまま、「彼」との会話を優先していた。

その会話を表現するのは困難だ。1時間以上だろうか、2人の男女は他愛もない会話を交わし続けた。それは2人にとってあまりに新鮮な出来事だった。

京子はいつしか笑っていた。

全ての嫌悪を捨て去り、京子は笑っていた。

相手は平凡な会社員。初対面である。ただ私のことを救ってくれた。

何も意識しない会話。それなのに、おかしかった。普通に話しているはずなのに、何故かおかしいのである。

会話を交わすだけでおかしく、幸せになれる。

京子にとって、それはかつて経験をしたことがないことであった。

夫以外の男性。

京子は笑い続けた。何分、何十分。過去を忘れ去るほどに、その夜の醜悪な記憶を忘れ去るほどに、京子は「彼」との会話を楽しんだ。

初対面の異性と、これほどに笑い続けることがあるのだろうか。

自分を救ってくれた男性、中倉真哉はそれを許すほどに、魅力的な男だった。


(↑クリック、凄く嬉しいです)
Comment
No title
短いです・・・・

管理者のみに表示