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終着駅(27)

2012 06 19
窓の外に広がる風景に変化は感じられない。変わらぬ夏の日差しにさらされた大都会のビル群が、視界の彼方にまで広がっている。

何も変わってなんかいないのだ・・・・・・。

どこかけだるそうな雰囲気でこちらを見つめてくる都会の風景に、白色のワンピースに肢体を包んだ人妻は、どこか切迫した気分にさせられてしまう。

そう、何も変わってなんかいない・・・・・。変わったとしたら、私の・・・・・・・・・・。

中倉真哉との忘れられぬ一夜から、既に10日あまりが経過しようとしている。久丘京子は今、窓辺にたたずんでいた。まるで自分自身の居場所を再確認しようとするかのように。

真哉からは何の連絡もない。それも当然だ。彼は私の連絡先を知らされてはいない。ただ一方的に名刺、そして短い手紙だけを置き去り、日常の彼方へと戻っていた彼。

あの夜の情熱的な時間を思い出すだけで、京子は未だ平静を保つことができなかった。彼に激しく愛された38歳の肉体は、今もなお、その快感を濃厚に覚えている。

決して忘れることなどできない。彼だって同じはずだ。京子はそんな確固たる信念を抱いていた。

あの夜、ジャズが流れる地下室の狭いバーで偶然に出会った私たちの間に、決定的な何かが存在していること。京子はそれを一度だって疑おうとはしなかった。

もう一度、彼に・・・・・・・・・・・

この10日間、京子は何度も中倉真哉に連絡をとるという誘惑にかられた。だが、その度にその人妻は、彼から残されたメモを見つめた。

「もしあなたにその準備ができたなら・・・・・・・・・・・・・・」

それが何を意味することなのか、京子にわからぬはずはなかった。全ては私自身にかかっている。そう、私の行動に・・・・・・。

真哉と別れた後、京子が自宅に戻ったのは翌日、土曜日の朝だった。夫、繁樹に何と説明すべきか、京子はそんな戸惑いと、しかし、どこか開き直ったような気分とともに家路に向かった。

私にだって同じことをする権利がある。別の人と寝る権利が・・・・・・。

勢いで言ってしまったかのようなその言葉を、私は現実のものとしてしまったのだ。夫に対する罪悪感を抱くほど、しかし、京子は既に繁樹のことを愛してはいない。

お前を抱いてくれるような男なんているわけがない・・・・・・・・・

そう言い放った夫に、京子は昨夜の出来事を冷酷に宣告してしまいたい気分だった。私のことを真剣に愛してくれる男性が、ちゃんといたのよ、と・・・・・・・・。

本気でそんなことを言うつもりはない。しかし、夫に言い詰められた場合には、再び気分が昂ぶった挙句、そんな決定的なことを言ってしまうのかもしれない。

混乱したそんな感情を抱き、京子はあの朝、玄関のドアを開けた。

「お帰りなさい、ママ」
「萌菜・・・・・」

出迎えてくれたのは12歳の娘、萌菜だった。娘の表情に、何かを疑うような色は何も浮かんでいない。

金曜の夕方に家を出た38歳の母親が、土曜の朝になるまでどこで何をしていたのか。それが全くわからないような年齢ではない。彼女の心は、恐らく私以上に激しい荒波にさらされているに違いないのだ。

京子は思わず萌菜を抱き寄せ、そして頭を撫でながらそっとささやいた。

「ずっと1人だったの?」
「うん・・・・・、パパ、また帰ってこなかったから・・・・・・・・・・・・・」

「ごめんね・・・・・・・・・、こんな時間に帰ってきたりして・・・・・・・・・・・・・・・・」
「だって、たまには好きにしろって言ったの、私だよ、ママ・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「私のことなんか気にしないで・・・・・・・・。それよりも、ねえ、ママ・・・・・・・・・・・・」

「えっ・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「そんなに頭撫でないでよ、もう子供じゃないんだから。ほら、朝ご飯用意してあるから、早く」

気づかぬうちに、娘は大人への階段を駆け足で上り始めているようだった。戸惑う母親の姿をよそに、萌菜はてきぱきとした動きでテーブルに皿を並べ始める。

夜帰宅しない父親が、彼女にとってはもはや珍しくなどない。夫が不在であることを知り、京子は安堵と同時に、どこか落胆の気分を感じないわけにはいかなかった。

これで、夫は私の昨夜の行動に気づくことはない。恐らく、永遠に・・・・・・・。

それは、京子にとって必ずしも都合がいい事態ではなかった。逆に、彼女自身がその「決意」を行使することに対し、障害となってしまうのかもしれないのだから・・・・。

その朝から10日の間、繁樹が帰宅したのはわずか数回だった。その間、京子が夫と時間をかけて話すことなど、とてもできるような状況ではなかった。

私のことを意図的に避けているのかもしれない。妻が何を希望しているのか、それを全て見透かし、逆に嫌がらせをするかのように、私のことを避けているのだ。

真哉さん・・・・・・・・・・・・

平日の午前、窓辺にたたずんだまま、京子はそっと瞳を閉じる。出口の見つからない現実を僅かの間だけでも忘れようとするかのように、京子はあの夜のことを思い出す。

ベッド上で四つん這いにさせられた全裸の自分自身の姿を、38歳の人妻は思い描く。誘惑的なラインを描くヒップの曲線に、彼の手が撫でるように這い回っている。

「京子さん、いくよ・・・・・・・・・・・・・・」
シーツをきつく握りしめながら、京子は彼の言葉にかすかに頷いて見せる。彼に促されるまま、両脚を屈曲させ、ヒップをいやらしく後方に突き出す。

「素敵ですよ、京子さん・・・・・・」
彼の指先が、私の濡れたあそこをやさしく撫でてくれる。湧き出す蜜を絡めるくちゅくちゅという湿った音が、待ち焦がれる気分を急速に追い詰めてくる。

「早く・・・・・・・・・・・・、真哉さん、早く欲しいっ・・・・・・・・・・・・・・・・・」
焦らすような彼の態度に屈服するように、京子は自ら大胆な言葉を口にしてしまう。男の指先に力が込められ、ヒップを強く広げるように刺激を与える。

彼のそれが近づいてくるのを感じる。先端が触れ、震えるような刺激が京子の全身を走り抜ける。これまでの焦らしが嘘のように、真哉は情熱的な勢いで一気にそれで貫いてくる。

「ああんっ!・・・・・・・・・・・・・・・・」

思わず顔をあげ、淫らな声をあげる自分自身の姿を京子は想像する。いつしか人妻は、窓際のフローリングに座り込み、壁にもたれるような恰好で自らのスカートの中に手を伸ばしている。

昼間から、こんな淫らなことをするなんて・・・・・・・・。強烈な羞恥心と軽蔑心が京子を包み込む。私はこんな女じゃなかったはず・・・・・・・・。

でも・・・・・・・・・。

屈折した感情のもつれが、心の奥底にまで達しているような気分になる。京子は瞳を閉じ、ただ中倉真哉のことだけを想い描こうとする。

そのときだった・・・・・・・・・・・・・。

テーブルに置かれた携帯の呼び出し音が、室内の静けさを破ったのは。

京子の脳裏にあの声が瞬時に蘇る。あの日、自宅にいた私のもとに、突然電話をかけてきた、挑発的な若い女。夫の愛人である、あの非礼な女だ。

だが、表示された携帯の番号は、京子が知らないものだった。

「はい、久丘ですが・・・・・・・・・・・」
「もしもし・・・・・・・・・」

その声を聞いた瞬間、京子は一気に現実の世界へと引き摺り戻された。


(↑クリック、凄く嬉しいです。次回更新7月2日夜とさせてください)
Comment
はじまりですね
新たな展開ですね。

いずれにしても京子はまた別の人物に

いやらしく犯されていくことになるのでしょう。

夫の前か、または真哉の前で・・・

どうしょうもなく犯され堕ちて行く

人妻のエロいSEX描写に期待。

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