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終着駅(35)

2012 07 27
顔が紅潮しているのを感じる。酒のせい、或いはこの男の責めのせいなのか。京子は平静を装い、男にたっぷり吸われた唇の感触を無視し、乱れ始めた呼吸を密かに整えようとする。

「さあ、背中をこちらに向けてください」
いじめるのを止めたことへの褒美を要求するかのように、笑みを浮かべた真鍋が指示を与えてくる。促されるまま、京子はその場でためらいがちに反転する。

「今度はマッサージしてあげますよ、奥さん」
背中越しにささやいてくる男の言葉が、人妻に再び緊張を与える。どうすることもできず、京子は乱されたスカートを整え、その場に座りなおす。

「両手を頭の後ろで組んで」
「えっ・・・・・・・・」
「いいから、奥さん。ほら、こんな風に」

真鍋の手が背後から京子の手をつかむ。強引にそれを京子の後頭部に運び、そこで左右の手の指を絡ませて固定させる。

「少し腕が疲れるかもしれませんが、しばらくはこのままの格好でお願いしますよ、奥さん」
その言葉と同時に、京子の両肩に男の手が触れる。宣告通り、男はマッサージで癒そうとするかのように、人妻の肉体を優しげに揉み始める。

先刻の責めとは全く別の刺激が人妻を包んでいく。正面を向いたまま、京子は瞳を閉じる。雑念を払い、ただ冷静さを維持しようとする。

男が何をしようと、決して心を乱されることはない。たとえ体が多少の反応をしたとしても、私自身が気を許すことはあり得ない。京子には確固たる自信がある。

男の手が人妻の両肩から背中に移動していく。その外見には不似合いな妙に繊細な手つきだ。京子の両脇の下辺りをくすぐるようにつかみ、やがてその指先をじわじわと前方に伸ばしていく。

純白のシャツは身に着けたままだ。その最上部のボタンを、男の指先に素早く外される。そして2番目のボタンも同様に外され、シャツの上部がはだけられるのを感じる。

「真鍋さん・・・・・・・・・・・、ちょっと・・・・・・・・・・・・・・・・・」
一切抵抗をしないと宣言したことを思い出し、京子は強い言葉を発することができない。

「どうしましたか、奥さん」
「あの・・・・・・・・・・、こんなこと・・・・・・・・、困ります・・・・・・・・・・」
「暑いんでしょう、奥さん。少しぐらい服をお脱ぎになればいい」

男はそれ以上ボタンを外そうとはしなかった。その代わり、背後から伸ばした手のひらを広げ、人妻の胸の膨らみの上にそっと置く。男はそのまま手を動かそうとはしない。

シャツ越しに男の手が乳房の上に置かれていることを感じる。再び焦らされるような時間が京子を訪れる。男がこれから何をしようとしているのか、人妻にはもちろん想像できる。

早くそれをすればいいでしょう、私は耐えてみせるから・・・・・・・・。後頭部に掲げた両手を組みながら、京子は唇を密かに噛み、男のゆっくりとした行為を憎んだ。

「ここもマッサージしてあげましょうか、奥さん」
「何を言ってもどうせするおつもりなんでしょう・・・・・・・・・、だったら早く・・・・・・・・・・・」
「ほう。早くしてっと、そうおっしゃるんですね」
「そんな・・・・・・・・・・・・・、勘違いしないでください・・・・・・・・・・・・・」
「そうでしょうか。案外それが奥さんの本音じゃないんでしょうか」

会話が終わった後も、男の手は動こうとはしない。その丘陵のサイズをただ確認するだけのように、すっぽりと包みこみ、指先だけが微妙にうごめいている。

早く・・・・・・・・・・・・、もう時間をかけないで・・・・・・・・・・・・・・・

男の表情を観察できないことが、京子の焦りを加速させていた。このままいつまでこんな時間が続くのだろうか。こうしているだけで、更に汗ばんでくるような気がする。

そのとき、唐突に男の両手が運動を始めた。サイズだけではなく、今度はその肉体の弾力を確かめるように、たっぷりとした愛撫を人妻に与え始める。

「・・・・・・・・・・・・・」
その瞬間、小さな声を漏らしそうになった人妻は、懸命にそれを押し殺した。だが、かすかな呼吸の乱れは男の手の動きが激しさを増すとともに、再び加速していく。

男の愛撫はどこまでもいやらしいものだった。単調なペースをあくまでも繰り返すだけだが、明らかにその指先はシャツの下の人妻の下着、更にその下側に隠された肉体を探している。

真哉に乳房を吸われたことを、京子は思い出す。そこが敏感なスポットであることを、京子は自覚している。それを隠すためにも、京子は姿勢を乱さぬまま、座り続ける。

「想像通り、いい体をしていらっしゃいますね、奥さん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「それに、随分感じやすいようですな、奥さん」
「そんな・・・・・・・・・・、私、別に何も感じてなんかいませんが・・・・・・・・・・」

「そうでしょうか。こうやって胸を愛撫する度に上半身が震えてるようですが」
「あの・・・・・・・・・・・・・、誤解ですわ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

自分でも気づかぬうちに、私はそんな反応を披露してしまっているのだろうか。京子は困惑を深める。そんな人妻のシャツの隙間に、男の指先が遂に侵入していく。

「そこは困りますっ・・・・・・・・・・・・・・・・」
組んでいた手を思わず動かし、京子は真鍋の行為を制しようとする。

「姿勢を崩してもらっちゃ困りますな、奥さん」
左手で人妻の両手を拘束しなおし、男は右手を前方に再び回り込ませる。人妻の左乳房をブラ越しに包み込み、一転して強く揉みしだき始める。

「いやっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ささやくような抵抗の声を、京子は初めて漏らす。小さく首を振る人妻に構うことなく、男は胸の膨らみをいじめ、指先で丘陵の先端を探るような動きを与えていく。

急速に肢体が熱を帯びてくる。いつしか京子は、背後の真鍋にもたれかかるような姿勢になってしまう。シャツを大きくはだけられた人妻の乳房を、男が背後から両手で愛撫し始める。

逃げることができない。背後から回された男の両手が、人妻の柔らかな胸の膨らみをたっぷりと揉みしだく。男に従順さを誓うように、人妻は両手を後頭部に置き続けている。

「奥さん、気持ちよくなってきたでしょう」
「別に気持ちよくなんか・・・・・・・・・」
「こんな風にご主人以外の男に胸を愛撫されたんですか、奥さん」
「知りませんっ・・・・・・・・・・・・・・・・」
「いけない人だ・・・・・・、今夜はたっぷり罰を受けてもらわないと・・・・・・・・・・」

真鍋の言葉に、強烈な嫉妬心が込められているのを京子は知らされる。真哉に全てを許した自分に対し、この男は俺にも同じことをしろと要求しているのだ・・・・・・・・・。

それを十分に想像していたつもりだったが、京子はこの場に及んで覚悟が揺れ始めることを感じる。真鍋への強烈な嫌悪が理由ではない。この男に好きにされたら、自分の肉体がどんな反応をしてしまうのか。京子の体奥にそんな不安が急速に広がりつつあった。

真哉との一夜で初めて知った深い快感。あの日から今日まで、己の体が無意識のうちにそれを欲しがっていることに京子は気づいている。だが、あの感覚は彼だけが与えてくれるものだ。

だからこそ、京子は不安だった。限界まで嫌悪しているはずの男、真鍋に抱かれた自分が、いくら心を許さずとも、いったいどんな風に反応し、乱れた姿を披露してしまうのか・・・・・。

「いやっ・・・・・・・・・、あっ・・・・・・・・・・・・・・」
「色っぽい息遣いだ、奥さん。これでも感じてないっておっしゃるんですか」

真鍋の言葉に、京子は自分自身を取り戻す。今夜、ここからの展開に不安を抱き、考えを巡らせていた人妻が、いつしか妖しい吐息を、隠すことなく男に披露し始めている。


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