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闇の奥からの誘惑(10)

2013 09 04
それまでに目撃した一部始終の記憶に翻弄されながら、私は帰路を急いだ。正規のルートを外れているだけに、道はところどころ険しく、また闇の深さが一層濃厚だった。

息が切れると同時に、強烈な喉の渇きと汗ばんだ全身を感じる。疾走していることだけがその理由でないことに、私は既に気付いている。

別の男の前で見せた妻の姿が、私にかつてない感情を与えているのだ。それをはっきりと自覚しながら、私はやがて自らのテントを視界にとらえた。

ただ一人放置していた息子、翔太のことが不意に気にかかる。一方的に安堵を信じ込み、私は親の責任を放棄し、その場を離れた。妻に対する好奇な欲望と共に。

テント周辺はすっかり静まり返っている。もう誰も起きてはいないようだ。腕時計を確認する。デジタルの数字はちょうど午後11時になったことを示していた。

妻より先に到着したことに一定の安堵を得ながら、私は懸命に息を整え、テントの中に入った。再び灯りをともし、その中にいる息子の姿を探す。

「よかった・・・・・・」
私は思わずそんな言葉を漏らした。ここを立ち去ったときと何ら変わりはない様子で、息子は寝袋にくるまり、シートの上で熟睡していた。

少し汗をかいているようだ。取り出したタオルで息子の額をぬぐってやりながら、私はそこに座り込み、自らの汗も拭き取ろうとした。

間もなく妻が戻ってくるはずだ。間違っても、自分が外に出ていたことを察知されてはならない。私は深呼吸を繰り返し、汗をしっかりと拭きながら、自らが取るべき行動を考えた。

しばらく迷った後、再び私はテント内の照明を消した。そして、寝袋の中に潜り込み、既に寝入っていることを演じようとした。

闇に包まれたテント内を凝視したまま、呼吸を整え続ける。幾分穏やかになってきたとはいえ、高鳴る鼓動を抑えることは到底難しそうだった。

それはここに戻ってきてから更に加速したようにも思えた。妻と間もなく再会することを想像するだけで、私は異様な緊張と興奮に包まれているのだ。

何も反応すべきではない。眠っていることを演じるだけだ・・・・・。何度もそんなことを言い聞かせていたとき、テントのすぐ外に人の気配が感じられた。

戻ってきた・・・・・・・

入口から一番奥に息子が横になっている。私は中央に位置しながら、入口に背中を向け、自らの表情を僅かな光からでも察知されないようにした。

「あなた・・・・・、今、戻ったわ・・・・・・・」
妻がそうささやきながら、テントの中にそっと入ってくる。少し迷った後、私はその言葉への反応を拒んだ。

「ごめんなさい、もう寝ちゃったわよね・・・・・・・・」
妻のその言葉には、私がそれをしっかりと聞いていることを確信している響きがあった。だが、妻はそれ以上言葉を続けようとはしなかった。

妻は暗闇の中、自らの荷物に手を伸ばし、そこから何かを取り出した。そして再びテントの外に出た。どうやら洗面用具を持って、炊事場に向かったようだった。

私は大きく息をつき、全身を支配していた緊張を一瞬解いた。すぐにでも妻は戻ってくるだろう。どこかでそんな心構えを維持したまま、私は再び藤原のことを思い出す。

妻はいったいどんな風に彼と別れたのだろうか。バイクから降りた妻を抱き寄せ、その唇を奪おうとした彼の仕草が、私の脳裏にまだ鮮明に焼き付いている。

「駄目っ・・・・・・・」
妻ははっきりとした口調で、彼の要求を拒んだ。だが、そこにはかすかな迷いがあったようにも感じられた。暗闇の中でも、妻の表情が微妙に揺れたのが、私には確認できたのだ。

夫とは別の男、しかも今日初めて出会った男に抱擁され、キスを求められたことに対し、妻はどんな感情の波に動かされたのだろうか。少なくとも、そこに嫌悪感は一切なかったようだった。

別れ際、もう一度藤原がそれを要求したなら、妻は果たして拒むことができたのだろうか。闇に包まれたキャンプ場の一角で、二人は最後の抱擁と共に口づけを交わしあったのではないのか。

馬鹿なことを考えるな・・・・・・・・

抑えることのできない自らの妄想に混乱したまま、私はそこに横になり続けた。やがて、再び外でかすかな音がし、妻がテントの中に入ってきた。

今度はもう私に話しかけようとはしない。私は妻が寝る準備を始めたのを感じた。着衣を素早く脱ぎ、パジャマに着替えようとする雰囲気が背中越しに伝わってくる。

下着姿になった妻を想像するだけで、私はどうにもならないような気分に襲われた。懸命に動くことを抑え、私は沈黙したまま、妻の様子を観察し続けた。

着替え終えた妻が、私の背後でゆっくりと寝袋に入りこんだ気配が伝わってくる。やがて、再び沈黙が訪れた。何かが間違っていることを示すような、罪深い沈黙だ。

普段、妻は横になったならばすぐに寝入ってしまうタイプだった。場所をキャンプ場に変えた今夜だが、そのパターンに変化はないようだ。間もなく、妻の一定の寝息が私の耳に届き始めた。

5分、いや10分経過しただろうか。時の感覚が狂い始めたことを感じながら、私はもはや限界に達していた。懸命に自然な風を装いながら、私はゆっくりと反転し、妻の方を向いた。

妻は私に背を向けるようにしながら、そこに横になっていた。寝袋のジッパーを完全にあげることなく、やや上半身をそこから出すような格好で眠っている。

別の男が先刻まで欲情を抱いていた妻の肉体が、すぐ目の前にある。いや、こう考えるべきだろうか。夫以外の男をたっぷりと誘惑し、その理性を混乱させた人妻の肉体がそこにある、と。

もう我慢することなどできない。自分自身の肉体の変化に、既にずっと前から私は気づいていた。それを素直に認めるように、私は右手を己の下半身にそっと潜り込ませた。

夜の営みを妻にそれとなく拒否されるようになってから、私は既に数えきれないほど、自分自身のこんな行為を続けてきた。だが、今夜の興奮はいつものそれとは明らかに違った。

かつてないほどに、ペニスが硬く、欲情の放出を望んでいることがわかる。鋼のような硬さを感じながら、それを包み込んだ右手を、私はゆっくりと往復させ始めた。

夫婦でありながら、私には既にそれを妻に要求するだけの勇気が失われていた。再び拒否されるのなら、いっそ最初から独りですればいい。いつしか、そんな考えが私に植え付けられていた。

今夜は、しかし、あまりに刺激的な環境に置かれている。手を伸ばせば抱き寄せられる位置に妻がいるのだ。しかも、別の男と一緒のあんな姿を、私に見せつけたばかりの妻が・・・・・。

無意識のうちに妻に接近しながら、私は右手の動きを更に加速させた。そこにいる妻の寝姿を見つめたまま、私は藤原と抱き合う妻の姿を脳裏で想像し始めた。

別れ際、何度も拒む妻に対し、執拗にキスを要求する藤原の姿。やがて、それに観念するように、男の腕に引き寄せられ、唇を重ねることを許してしまう妻。

麻由美・・・・・・・・、いったいどうして・・・・・・・・・

そんな言葉を心の中で繰り返しながら、私は大切なものを奪い取られることへの屈折した気分を同時に感じ始めてもいた。刺激的で、何かを誘うような危険な感情だ。

いやがる妻を強引に抱きしめたまま、藤原が口づけを続ける。唇を荒々しく吸いながら、その手が妻のデニムに伸び、ヒップの辺りを撫で始める。

妻の表情に僅かな変化が訪れる。それを想像するだけで、私は己のペニスの脈動がもはや止められないことを感じる。何かに支配されるように、私は左手を宙に伸ばし始める。

寝袋に包まれた妻のヒップがすぐそこにある。ためらいの気分など、とうに失われている。私は丸みを帯びた熟れた肉体を手のひらで包み込もうとする。

そのときだった。それを察知したかのように妻の肢体が僅かに動いた。

まさか・・・・・・・・・、起きているのか・・・・・・・・・

興奮の絶頂にまで昇り詰めようとしていた自分自身を思わず忘れ、私は妻の様子を冷静に観察しようとした。それは錯覚ではなかった。妻はかすかにその体を動かしているのだ。

背中が震える様に僅かに揺れるのがわかる。更に目を凝らせば、妻の腕が微妙に動いている様子も確認できた。少しずつ、その全身の震えと揺れは振幅を大きくしているようだった。

まさか・・・・・・・・・・

あることを瞬時に夢想しながらも、私はそれを信じることができなかった。だが、目の前の妻の姿が全ての証左だった。その直後に響いたそれを、私は聞き逃すことはなかった。

「あっ・・・・・・・・・・・」
喘ぐような妻の漏れ声は、たっぷりとした色気を伴ったものだった。

私と同じ行為に淫しているのだ・・・・・・・・。そう確信しながら、私は妻の脳裏に描かれている光景を思い描こうとした。それはさして困難なことではなかった。

妻は藤原の姿を想起しながら、1人、自らの肉体を慰めているのだ・・・・・・・・・。


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Comment
淫する
ご夫婦の度のすぎる妄想に興奮します。奥さんの想起に関しては、片思い彼のことを思い出してしまったのでしょう。その知らざれる過去、楽しみにして居ます。
No title
夫が目撃していない時の妻の様子行動が、凄く気になります。テントに戻るまで藤原氏が、送ってくれたはずその時何もなかったとは、考えにくいし、
一度テントに戻ってから何か荷物を持って再びテントを出て戻ってくるまでの間に何かあったのでは、ないか?
夫には、内緒の・・・・・。
そして妻の自慰行為。
おそらく今日が、はじめてでは、ない
と思われる以前からそう6年前から、
結婚以前好きだった彼を思い・・・。
うーんその当たりが知りたいです。
旦那さんp(^-^)q
演技で誘ってたりして・・・。
キャンプの目的を思い出し勇気を出して麻由美さんを抱いてあげてほしいです。手を伸ばせば届くのだし。

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