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闇の奥からの誘惑(14)

2013 09 16
ほんの一瞬、かすかな音量であったが、その声は確かに私の耳に届いた。藤原のテントの中から漏れ聞こえてくる声。それは紛れもなく、妻の声だった。

強力な磁場に引き付けられるように、もうそこから逃れることなどできない。近づくべきではない、という忠告をどこかで感じながら、私は更に距離を縮めていった。

2メートル程度にまで接近した私が見つけたのは、テントの入口付近に置いてある妻のサンダルであった。それは乱れることなく、きちんと揃えて置かれていた。

それは、私にある事実を伝えてくる眺めでもあった。妻はその狭い空間の中に、強引に引きずり込まれたのではない。妻自身の意志で侵入したのだ・・・・。

青色のドーム型テントは、私の購入したものと比較した場合、随分小さなものだった。2人用と思われるコンパクトなサイズだが、それは妻がそこに居ても支障ないことをも意味した。

激しい動悸と喉の渇き、そして汗ばんだ素肌。私は再び妻の声が届くのを待った。だが、私に確信を与えるべきその声はすぐに伝わってくることはなかった。

しかし、サンダルがそこにある以上、間違いなくこの中に妻はいるはずだ。あの男、藤原と一緒に・・・・・。私は妻がここに来た経緯を想像した。

何らかの約束を事前に彼と交わしていたのだろか。或いはまた、寝入ることができない妻が、自分自身の欲情を満たそうと、ここまでの距離を歩いてきたとでもいうのだろうか。

夫である私ではなく、妻は別の男を選んだのだ。過去の私の過ちへの復讐、或いはまた、長年我慢を強いられてきた人妻だけが与えられる女としての本能がそうさせたのか・・・・・。

そのときだった。妻のものと思われる声が、再び私の耳に届いたのは。

「やめてっ・・・・・・・・・・・、いやっ!・・・・・・・・・・・・」
それは、はっきりとした拒絶を示す妻の声だった。

藤原はやはり強引に妻の体を奪おうとしているのだ。夫としてそれを制止すべきという理性をはるかに凌駕する、屈折した興奮が体奥から湧き上がってくるのがわかる。

先刻、テントの中で妻の右手によって頂点に導かれた際、その過程で私は、藤原に激しく抱かれる妻の姿を想像していた。それが今、すぐそこで現実に繰り広げられようとしている。

フィニッシュに導かれたはずの下腹部が、再び硬さを回復しつつあることを感じる。理性のたがを完全に捨て去り、私は更にテントに近づくことを決断する。

濃厚な緊張感と共に、闇に包まれた地面に足を一歩踏み出した瞬間、突然、何かが私の右肩を確かに叩いた。

・・・・・・・!

声を出すほどの驚きと同時に、私はそこに思わずしゃがみこんだ。全身を鳥肌が包む。恐怖と興奮が入り混じった激しい感情を抱えたまま、私は瞬時に後方を振り返った。

「ど、どうして・・・・・・・・・・・・」
「ご主人、あなたはここにいらっしゃらないほうがいい」

私のすぐ背後には藤原が中腰で立っていた。訳のわからぬまま、私は彼に促され、テントから遠ざかるように木々の茂みの中に誘導された。

「ご主人、こんなことになってしまったことをあなたにお詫びしなくてはいけません」
「藤原さん・・・・・・・・、あなた、いったいどうして・・・・・・・・・・」

「とにかく、ご主人、ここからは早くお戻りになったほうがいい」
「あなた・・・・・・・・・、あなたのテントなんでしょう、あれは?・・・・・・・・」

「ええ、その通りです。そして、あそこには今・・・・・・」
「私の妻がいるんですね?・・・・・・・・・・」

私の問いかけに、藤原は無言でうなずいた。闇の中ではっきり確認できないが、彼の表情はひどく憔悴しているようにも見えた。私は、思い浮かぶままに質問をぶつけた。

「あのテントには妻の他に誰がいるんですか?」
「それは・・・・・・・・」

「誰かあそこにいるんでしょう?!」
「私の・・・・・・・、私のツーリング仲間とでもしておきましょう・・・・・」

「ツーリング仲間?・・・・・・・・・」
「ええ・・・・・・・・、勿論、奥様は知らない方です・・・・・・・・・」

私にはこの状況が何を意味するのか、そしてどのような経緯でこんなことになったのか、それを理解する術がまるでなかった。

「ご主人、今夜の全てのことは私に責任があります」
「・・・・・・・・・・」

「いつか必ず、真実を全てお話します。だから、今夜のところは・・・・・・・」
「だから、何だって言うんだ、あんた・・・・・・・・」

無意識のうちに非礼な言葉を使い始めた自分を、私は律することができなかった。同時に私は、目の前の男が嘘を言っているのではないことを感じ始めてもいた。

「お願いです。どうか、何もおっしゃらずに今はお戻りになってください」
「・・・・・・・・・・・・・」

「ご主人、あなたはこれからここで奥様に起きることを知らないほうがいい・・・・・」
「い、いったい妻に何をしようとしてるんだ?」

「・・・・・・・・・」
「藤原さん・・・・・・・・、何を言ってるのかわかってるのか、あんた?・・・・・・・・・」

彼の胸倉をつかみ、私は己の感情の行き場を失ったように迫った。だが、藤原はそんな私をただ見つめ、決して抵抗しようとはしなかった。

「私が奥様をだましたんです」
「えっ?・・・・・・・・・・」

「彼の要求なんです。彼が昼間からずっと奥様のことを・・・・・・・・」
「彼?・・・・・、彼ってその男のことなのか・・・・・・・」

「奥様にお願いしたんです、私が・・・・・・、半ば、だます様な形で・・・・・・・・」
「どういうことだ・・・・・・・・、ちゃんと説明してくれよ・・・・・・・」

「いいから・・・・・・、早く、この場からお戻りになってください・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」

「朝までには奥様は解放されるはずです。それはお約束します」
「解放?・・・・・・・・・・・」

藤原の強い口調に対し、私は何かを悟ったように、両手の力を抜いた。拘束から解かれた藤原は息を乱しながらも、私に謝罪の視線を送り、そして、冷静な口調で言葉を続けた。

「私は別の場所に行きます。ご主人、一緒にここから離れましょう」
「・・・・・・・・・・」

「ご主人、あんなことをお願いして申し訳なかったです」
「あんなこと?・・・・・・・」

「今夜奥様を貸してください、と。あのお願いのことですよ」
藤原は最後にそう言うと、私が進んできた森の道を戻るように、シャワー棟の方角を目指して早足で歩き始めた。時折私を振り向きながらも、もはや声をかけようとはしなかった。

この場所にたどり着こうとしたときに、闇の中で一瞬、背後に人の気配を感じたことを私は鮮明に思い出した。あれは密かに私を尾行していた藤原の気配だったのだ。

同時に私は、別の記憶を手繰り寄せてもいた。昼間、川で翔太と妻と一緒に遊んでいたとき、何者かが遠方から我々のことを双眼鏡らしきもので観察していたことを。

「彼が昼間からずっと奥様のことを・・・・・・」

藤原のその言葉が何を意味するものか、僅かながら、その答えに触れたような気がした。このテント場に足を踏み入れたときから、何らかの理由で妻は狙われていたというのか。

もはや自分自身を隠すつもりなどない。この存在が察知されるのならそれで構わない。腰をかがめることもなく、私はためらうことなく、藤原が向かった方角とは真逆に歩き始めた。

いつしかテントの中には照明が灯されたようだった。私は大胆にそこに接近し、入口付近に立った。網目状のままとなっている壁面からは、中の様子がはっきりと確認できた。

別の男に貸し出された妻の姿がそこにあった。


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Comment
新たな男が登場ですか。次回はついに濡れ場に突入ですかね。
できれば濡ればは奥さんの視点から読みたいです。拒否しながらも徐々に堕ちていき挿入を許してしまう。そんな貞淑な人妻が淫乱なメスに変わる過程をぜひお願いします。
No title
大どんでん返し
双眼鏡さん登場p(^-^)q
このひと、変態そうだから麻由美さんとしちゃうのなら中出しですよね。そとには出さなさそう。
それとも旦那さんにリクエストして二人をやらせるかもね。旦那さんの六年越しの悲願達成だね(^^;)
もちろん先々まで楽しみにしています
ここでまずはここまでのいろんな話が繋がってきましたね。

エピに行くまでの2度3度にとどまらない展開・収束・転回と数々のサプライズをこれからも楽しみにゆっくりと読んでいきます。
No title
もちろんここまでの流れで繋がってそうなことが実は別の繋がりだったりその逆だったりというサプライズも含めてワクワクしています。
No title
ちょっとシナリオに無理があるようで…
No title
テコキで抜いた後、藤原のテントへ行って別の男と二人で一緒に…?

そのプロセスは、後程解説するんでしょうか?
No title
藤原とならば、それなりに体験を共有
していますから、貞淑な人妻がセックスに
というのは理解出来ますが、テントに
行ったら別の男がいて、それと合意で
セックスしてしまうのは、無理そうです。

はじめから何か弱みでも握られてない
限り、一応は大騒ぎするのではないですか?
となるとテント村では、レイプは
無理でしょう。

どう展開してつじつまがあって、
リアリティーを獲得するのか・・・
内容にドキドキするのであって・・・
男と女の織りなす内容にドキドキ感と興奮があるのであって・・・

内容が未熟な儘にやっちゃうのは魅力減衰だな~

それと、超・非現実な内容には興醒めですが・・・
          
「いつか必ず、真実を全てお話します」、麻由美さんの独身時代、ツーリング仲間と何かあったのでしょうか?片思いだった彼絡み?

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