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闇の奥からの誘惑(16)

2013 09 20
「何が・・・・・、何がおかしいっていうんだ、奥さん・・・・・・・」
目の前で笑いをこらえきれない様子でいる妻に対し、男は動揺を隠せないでいた。それは、初めて彼が素顔を見せた瞬間のようにも感じられる光景だった。

私自身もまた、そこにいる妻の姿を受け入れることができなかった。過去の結婚生活の中で、それは妻が一度たりとも夫である私に見せたことのない姿態であった。

「だって・・・・・、笑わずにいられないでしょう、こんなの・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」

「自分の浅はかさに傷ついたこと、あなたはあるの?」
「何だって?・・・・・・・・」

「今の私がそうよ。長い間、胸の奥に秘めてきたただ一つの願いをようやく叶えたと思ったら・・・・」
「・・・・・・・・・・」

「気付けばこんな場所に自分から迷い込んでる・・・・・」
「・・・・・・・・・・」

「人妻は一生、耐え忍んで生きていけばいいの。そのほうが自分も傷つかずに済むわ・・・・・」
妻は再びささやくような、しかし、芯のある声色でそう話した。自らに言い聞かせるように言葉を発しながら、その視線は、依然として男の目に注がれている。

しばらくの沈黙が訪れた。男は何かを迷っているようだった。妻に手を伸ばすこともなく、顔が触れ合うほどに接近したまま、息を整える様にゆっくりと肩を動かし、言葉を発しようとしない。

「ねえ、どうしたの、私のことをどうにかしたいんじゃなかったのかしら」
「確かに俺は最低の男だろう・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」
「だけどな、奥さん。あんたが思っているような男とは、俺は少し違う・・・・・」

「・・・・・・・・・」
「ここで奥さんを抱くつもりなんてなかったんだぜ、本当は・・・・・」

「じゃあ、罰を与えるってのはいったい」
「しゃべらないで、奥さん・・・・・」

男の左手がそっと妻の顎先に伸びる。挑発的な気配と共に、どこか緊迫感に溺れてしまうような、そんな危うい色が妻の表情に混在して浮かんでいる。

顎を撫でる様にしながら、男の指先が妻の頬へと移動していく。嫌がるような色を浮かべ妻はそこから逃げようとするが、男の指先に支配されたかのように、強く拒むことができない。

「綺麗だ、奥さん・・・・・・・」
男の指先が妻の唇の上で静止する。妻は硬くそれを閉じたまま、首を振ってそこから逃げる。どこか陰鬱な気配を漂わせながらも、男が再び欲情を思い出したように振る舞い始める。

「罰が欲しいんだろう、奥さん・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」

「さっきの言葉は嘘だったのかい?」
「嘘じゃない・・・・・・・、嘘なんかじゃないわ・・・・・・・」

「望み通り、罰を与えてやるよ、奥さん・・・・・、二度と忘れられないような・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」

「旦那も子供もここにはいない。今夜はバイクに乗ってた頃の昔の自分に戻ればいい・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」

「この指をしゃぶるんだ、奥さん・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」

「いやらしい顔して、男のあれをしゃぶるみたいに色っぽくするんだ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」

「どうした・・・・・、もっといじめられたいのか・・・・・・・」
「甘んじて罰は受けるわ・・・・・、でも、間違ってもあなたに服従なんかしない・・・・・・」

妻のきつい視線が男の表情に刺さる。火照ったような妻の顔つきは、濃厚な官能の匂いを伴っている。激しい欲情に再び包まれながら、私はしかし、何かに心を揺らされていた。

男が発した言葉が、私の何かを揺さぶってくる。子供もここにはいない・・・・・。そうだ、翔太はテントに一人置き去りにされている。私は今更ながら、その事実に気付いた。

奥さんが男に乱される光景を期待してるんだろう・・・・、子供なんか無視すればいい・・・・・・

駄目だ・・・・・・。気付いた時、私はゆっくりと後ずさりを始めていた。やがてしびれた足をまっすぐに伸ばし立ち上がった私は、テントの中に注がれていた視線を無理に逸らした。

戻るんだ・・・・・、翔太の場所へ・・・・・・・・・

感情の渦が激しくうごめき、自分が何をしたいのかがはっきりと把握できない。私はまるで、夢遊病者のように歩き始めた。周囲の景色も物音も、何も感じることができない。

妻はやはり俺の過ちのことに気付いていた。そして、それにささやかに復讐するかのように、同じような行為に溺れるチャンスを、もう何年も待ち続けていたのだ・・・・。

歩きながら、私はその強い思いに支配されていた。夫として、妻のそんな感情に私は全く気付くことができなかった。そして、今夜、妻が抱いた藤原に対する好意・・・・・・。

テントの中にいたあの男が言ったことが事実だとしたら、妻は藤原に再びテントに来るように誘われ、そして自分からその招待を受け入れたことになる。

今夜こそ、長年抱き続けてきた夫への復讐を果たす機会と考えたのだろうか。いや、密かにそれを夢想し、このキャンプ場に来ることを妻は望んだのではないのか。

気付いた時、私は自分のテントの区画にまで戻っていた。ただ歩いてきただけのような気もするし、途中、何かに追われるように全力で走った記憶もある。

汗ばんだ肉体を感じながら、私はゆっくりとテントの入口を開けた。闇に包まれたそこの空間を見つめた瞬間、私は僅かだが自分自身のかけらを取り戻したような気がした。

翔太が前と変わらぬ場所で熟睡している。灯りをつけることなく、私はその横に滑り込み息子の手を強く握った。それに反応するように、息子の手にかすかな力が込められる。

「もうどこにも行かないからな、翔太・・・・・・・」
横になったまま、腕時計を見つめる。午前2時をまわっている。息子の姿と共に得た安堵と入れ替わるように、再びあのテントの光景が私の脳裏に描かれ始める。

妻は今夜、あの場所で男に何を要求され、そして受け入れてしまうのだろうか。夫が知らない妻の声、肉体、そして乱れる姿。私に想像を止めることなどできるはずもなかった。

最後の瞬間、妻は己の過ちを理解していた。何かにすがるように、私は妻の理性が崩壊しないことを懸命に想像した。妻は全てを許してしまうような女なんかじゃない・・・・・・。

いったい妻は何時に解放され、このテントに戻ってくるのだろうか。藤原の言葉通り、それは朝となるのか。その時間まで妻はいったい、何を体験することになるのだろうか。

耳元で妻のかすかに喘ぐ息遣いが響くような気がする。今頃妻は、いったい・・・・・・・。指をしゃぶれ、という男の指示が、私の体奥にこだまする。

別の男によって、妻がまさに今この瞬間、快楽を与えられようとしている。。あの夜、妻もこんな葛藤を抱いたまま、私の帰宅を待っていたのだろうか・・・・・・。

麻由美・・・・・・・、許せ、全ては俺の過ちのせいだ・・・・・・・・・

とても眠ることなどできないだろう。私はそう考えていた。しかし、事実はそうではなかった。押し寄せる妄想と興奮に呑み込まれるように、私はいつしか泥のような深い眠りに陥っていた。

眠りに落ちる瞬間、藤原の姿が私の脳裏をかすめた。それが最後の記憶だった・・・・・・。

****************

菊原亮は次第に理性が失われていく自分を感じていた。牡として生まれ持った本能が頭をもたげてくる。理性などという賜物では制御すらできないほどの強暴なものだ。

触れるほどの距離にいる人妻が、彼をそれほどに迷わせている。この狭い空間に一緒にいるのは、まだ10分程度だろう。だが、そこに漂う魅力は、彼を圧倒するには十分なものだった。

凛とした表情、挑発する女猫のような鋭い瞳、細く長く伸びた手脚を伴った、十分に熟れた30代半ばの女の肉体。別の男がそれを独占していることに、菊原は強烈な嫉妬を感じ始めていた。

同じような環境に人妻を誘い込んだことは、過去に何度もあった。美しく、魅力的な肉体の持ち主も数多くいたはずだ。しかし、今夜ここにいる人妻は別だ・・・・・・。

「罰が欲しいんだろう、奥さん・・・・・・・・・」
そう、彼女は罰を欲しがっているのだ。一生引きずってしまうほどの、強烈で濃厚な罰を、その濡れた肉体に深く、激しく刻み込まれることを望んでいるのだ。

「あなたに服従なんかしない・・・・・・・・・・」
人妻のその言葉は、菊原の興奮を激しく刺激するものだった。目の前の人妻の肢体を見つめ、彼は何かを悟ったように口を開く。

「耐え忍ぶだけが人妻じゃない。たまには全てを忘れて素直になっていいはずだ、奥さん・・・・・」
「・・・・・・・・」
「今夜、奥さんに初めてそう教えられた気がするよ・・・・・」

人妻、宮坂麻由美は、もはや男の視線から逃げることができなかった。覚悟を決めたように、その生贄は、やがて大胆に唇を開いた・・・・・・・。


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Comment
No title
今現在マイナス130度までトーンダウンしてしまったのは、私だけでしょうか?。。。まるで主人公の夫のような独りよがりな早撃ちマックに置き去りにされた気分です。これから奥様のセックス描写だけでプラスにトーンアップ出来るか心配です。。。。。
No title
いいですね
タメが素晴らしいです
ますますノッてきましたね
次回が待ち遠しいです。
少しがっかり
まず藤原さんが麻由美さんを落とし、それから貸し出す方が素直です
菊原君(^-^)
麻由美さんみたいなタイプは言葉責めにきっと弱いんじゃないかな。いじめちゃって恥ずかしがりながら言わせてあげてほしいです。
次回も楽しみです
菊原さんと麻由美さんの二人だけでなくキャンプ場なんだしサカリのついた男の子たちにも参加したり覗かれたりしてほしいです。
いよいよ
いよいよ、麻由美さんVS菊原さん。でも、菊原さんと藤原さんの関係って。麻由美さんVS藤原さんもありますよね。

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