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闇の奥からの誘惑(27)

2013 10 16
カーオーディオから流れてくるその曲に、15年以上も経過した古さは感じられない。スカとパンクロックを融合したかのようなその米国発のバンドのボーカリストは、魅力的な女性だ。

私はただの女の子・・・・・・

束縛されて生きているだけ・・・・・・

私はただの女の子・・・・・・

私の運命って何?・・・・・・

もう、我慢できない・・・・・・・

ねえ、もう我慢できないの・・・・・・

その歌詞は、妻の隠し続けてきた心の叫びを代弁しているようでもあった。

彼女の歌声を聴き、私は思い出す。昨日、キャンプ場に向かう高速道路でも、確か彼女の声をラジオから聞いたことを。

僅か1日前の記憶が、はるか遠くにかすんだ存在に思えてしまう。同じ高速道路を、私は一路、自宅に戻るために車を走らせている。

午前10時を過ぎたところだ。相変わらず夏の強い日差しが前方から私たちを照りつけてくる。溢れる光に包まれた車内に、ラジオから届く歌声以外の音は存在していない。

後部座席では息子が、そして助手席では妻、麻由美がぐっすりと眠っている。走り始めて僅か30分程度で、二人とも寝息を奏で始めた。

初めてのキャンプということで息子はやはり興奮していたのだろう。今朝、早起きしたせいもあったのか、心地よい疲れをまだどこかに引きずっていたようだ。

助手席の妻は、車窓の外を眺めるように顔を横に向け、そのまま眠りに就いている。その深い眠りは、昨夜の妻の行動を私に伝えようとするものでもあった。

昨夜、私は一部始終を目撃することだってできた。だが、それを選択することはなかった。息子が心配だったことも勿論だが、私にはその権利がないようにも思えた。

いや、違う。単に臆病だっただけだ。私が知らない姿を他の男に披露してしまう妻を、この目で確認してしまうことから、私はただ逃げたかったのだ。

それは正直な気持ちなのか。本当にお前は奥さんがあいつに抱かれる姿を見たくなかったのか。そんなささやきが耳に届くのを感じる。自分自身の感情を、私はとても整理できそうもなかった。

それは妻も同じはずだ。6年前、私自身が過ちを犯したときの気持ちを思い出す。行為の後、私には激しい嫌悪と悔恨の感情しか残っていなかった。

妻も今、同じことを感じているのかもしれない。一度裏切った夫に復讐するために自分が選択した行為に対し、妻はどこかで今、後悔しているのではないだろうか。

もうよそう。全て終わったことだ。昨夜、全てがきれいに清算されたのだ・・・・・。私は自らにそう言い聞かせ、ハンドルを握る。

妻との関係をこれで改善することができる。私はそう確信しながらも、折りたたんでポケットにねじこんだままの便箋のことを思い出す。

その手紙の存在を、私は妻に教えることはなかった。今後も教えることはないだろう。そこに書かれた秘密は、彼が私だけに教えてくれたものなのだ。

菊原という男。亡くなったという彼の妻。麻由美に風貌がよく似ていたというその妻の肉体を、親友の不在の隙をついて奪い去った藤原・・・・・・。

もう二度とお目にかかることはないでしょう・・・・・

藤原のそのメッセージに、嘘はないはずだ。彼は、嘘が付けるような人間ではない。私にはなぜか、そんな確信があった。しかし・・・・・・・。

邪念を振り払い、運転に専心する。都心が接近してくるにつれて、少しずつ通行量が増えてくる。時速80キロ程度の速度を維持しながら前進する私は、ある瞬間、妙な緊張を覚えた。

その理由にすぐに気付くことはなかった。前方の4WD車との距離に気を付けながら、私はしばらく走り続け、ルームミラーに視線を投げる。そして、それに気づく。

私の車の遥か後方に、それは確認できた。見覚えのあるオフロードバイクが、私の車と同じペースで走っている。あたかも、尾行を試みるように・・・・・。

まさか・・・・・・・。

早朝にキャンプ場から姿を消した藤原のバイク。昨夜、妻が自ら跨ったそのバイクが、我々の車を密かに尾行しているのだ。

いや、藤原とは限らない。目撃こそしなかったが、恐らく菊原という男もまた、バイクでキャンプ場を訪れているのだろう。彼のバイクという可能性も十分にある。

前方の車との距離が、少しずつ近づき、減速を余儀なくされる。ここは日曜日ともなれば必ず渋滞が発生するエリアだ。まだ時間は午前とはいえ、混雑はいつも以上に酷いようだった。

時速50キロ程度にまで減速し、再びミラー越しにバイクの位置を確認する。それは、路肩を走ることを選択し、次第に車を抜かし、私の車への接近を始めた。

まるで、私にその存在を知られたことに気付いたように・・・・・。

ぐんぐんと近づいてくるオフロードバイクに、神経が奪われていく。前方の車が更に接近し、のろのろといった形容が似合うほどの速度にまでスピードを落とす。

私のすぐ後方の車の横をすり抜けたかと思うと、そのオフロードバイクは一気に私の車の横にまでやってきた。それは、昨夜目撃したバイクと全く同じものに見えた。

だが、私は緊張を一気に解き放った。運転している人物が女性であり、藤原でもなければ、テントの中にいた男、菊原でもないことは明らかだったからだ。

勘違いだ・・・・・。神経質になっている自分を責め、私は再び前方に神経を集中させようとする。そんな私に、しかし、そのバイクの女性は僅かな不安を与えようとする。

しばらく並走するように私の車の横に位置した彼女は、ちらりと車内に視線を投げるような仕草を見せたのだ。そこに誰が乗っているのか、どんな様子か、を確認するかのように。

外側を向いたままの妻の顔に、バイクに乗った女性の視線が注がれる。その瞬間、妻が密かに目を覚ましたような気配を覚える。だが妻は、変わらず眠っているようでもあった。

やがて、バイクは路肩の隙間を縫うように走り去った。彼女が去り際に見せたその行為は、夫婦間の障害全てをクリアさせようとしていた私の心に、小さな石を投げ落としていった。

僅かな波紋が確実に生まれた。それはすぐに広がることはなく、しかし、決して消え去ろうともしなかった。バイクに乗っていた女性のスリムな肢体が、妻のそれと交錯する。

助手席の妻は、依然として寝息をたて続けている。かすかに揺れるその肢体の曲線が、かつてなくなまめかしく映り、私の欲情を刺激してくる。

僅か数時間前、その肉体は別の男の愛撫を与えられ、激しく犯されていた。男のものを受け入れた瞬間の妻の姿を想像し、私は再び感情を乱し始めている自分に気付く。

デニムの下のものが、信じられないほどに硬くなっている。


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Comment
No title
一度夫を裏切り他人に抱かれた人妻は、その禁断の蜜をけして忘れる事は、出来ない。。。又きっかけさえあれば禁断の蜜を度々求めてしまうものであろう。ご主人とて奥様と同じであると思います。期待と不安、そして他人に抱かれる妻の姿、様子を目撃したいはず、その刺激を夫婦共に心の奥底に秘めたまま・・・つづきを是非お願いします。
はたして・・・
菊原より、藤原の方がワルのような。第1話にも登場した女性ライダーと同じ人物なのか?麻由美さんの運命は?
おや?
これはまた興味深い展開ですね。
次回の更新が気になります。
旦那さん(;_;)
夫が過ちを犯し性的興奮を覚える嫁はいないし興奮されても迷惑だから旦那さんのヘタレさには笑っちゃいます。
もちろん今回も手コキで済ませちゃって下さい(^^ゞ

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