FC2ブログ

闇の奥からの誘惑(32)

2013 11 07
1階には静寂だけが存在していた。その闇は、あのキャンプ場ほど深いものではなかったが、しかし、その黒さに秘められた淫靡さに違いはなかった。

妻はまた、あの男に誘われるがまま、アルコールを口にしたのだろうか。やはり、あの女がここにいたのか、テーブルには3人分の皿が並んでいるように見える。

妻に裏切るつもりはなかった。あの女が口にした言葉は、恐らくは事実だろう。あのキャンプ場で全てに区切りをつけた妻に、他の男に身を任せるような気配はもはやなかった。

だが今夜、あの男がそんな妻の意志を再び崩壊させようとしている。妻はそれを拒もうとするのだろうか。或いはあの女が想像したように、やがては屈服してしまうのか。

耳を澄ましても、人の気配はしない。小さな家ではあるが、普段でも2階の物音は簡単には伝わってこない。私は階段に向かってゆっくりと歩を進めた。

妻との再会を執拗に求めた男。その男がすぐそこで、夢想していたものを手にいれようとしている。自らの存在が察知されることを恐れず、私は階段を静かに昇った。

二つの小さな部屋に加え、やや大きな部屋が一つ。そこが我々夫婦の寝室だった。階段付近からまっすぐに視線を伸ばせば、その部屋の入口が見える。

暗闇の中、引き戸がしっかりと閉められていることに私は気づく。そっとそこに近づき、更に耳を澄ます。木製の戸の向こう側の会話が、やがて私の耳に届く。

「駄目っ・・・・・・・・・、やっぱり駄目っ、こんなこと・・・・・・・・・・・・・」
「麻由美さん・・・・・・・・・、僕の気持ちをわかってください・・・・・・・・・・・」

くぐもったその声の持ち主が藤原であることを、私は確信した。そのトーンはあのキャンプ場とは異なり、やや昂ぶっているように聞こえた。

そして、もう1点、決定的に違うことがあった。藤原は今、妻のことを名前で呼んでいる。

「あのキャンプ場からずっと麻由美さんのことを考えてきたんです・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」

「忘れようと思っても忘れることなんかできなかった・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」

「あなたの全てが欲しいんです、麻由美さん・・・・・・・・・・・・・・・・」
「待って・・・・・・・・・・、困ります、こんなこと・・・・・・・・・・・」

「麻由美さん・・・・・・・・・・・」
「主人が・・・・・・・・・・・、私には主人がいるんです・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「もう間もなく帰ってくるかもしれません・・・・・・・・・・・・・」

「深夜近くになるんでしょう、ご主人のお帰りは・・・・・・・・・・」
「それは・・・・・・・・・・・・・」

「まだ2時間以上も余裕がありますよ、麻由美さん・・・・・・・・・」
「いやっ・・・・・・・・・・・・、やっぱりできない、こんなこと・・・・・・・・・・・・」

妻の口調には切迫したものがあった。それがなおざりなものではなく、真の訴えであることが私にはわかった。妻の態度は、あのテントの中のそれとは明らかに違っていた。

「菊原の要求には応えてあげたじゃないですか、麻由美さん・・・・・・・・・」
「それは・・・・・・・・・・・、藤原さん、あなたにあんな風にお願いされたから・・・・・・・・」

「気持ちよかったんでしょう、麻由美さん、あいつにされて・・・・・・・・・・・・・・」
「ひどい、藤原さん・・・・・・・・・・・、あなたがそんな方だったなんて・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「誤解しないでください・・・・・・、私はそんな女じゃありませんから・・・・・・・・・・・」

妻は本気だった。だが、その言葉にはまだ、藤原への愛情が隠されているようにも聞こえた。態度を豹変させたと思えた藤原だったが、妻の鋭い指摘に本来の自分をすぐ取り戻した。

「すみません、麻由美さん・・・・・、変なことを言ってしまって・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

しばらくの沈黙が続く。会話が途切れたことに私は焦りを覚えた。二人が何をしているのか、想像だけが先走りする。やがて、藤原のかすかな声が聞こえる。

「わかりました、麻由美さん・・・・・、じゃあ一つだけお願いさせてください・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「あの夜、別れ際に僕が望んだことです・・・・・・・・・・・」

彼が何を意味しているのか、私にはすぐにわからなかった。あの夜の別れ際・・・・・。最初、二人でテント脇でビールを楽しみ、そして別れたときのことだろうか。

バイクに跨った妻。そしてそこから降りる妻に手を添える藤原。その自然な流れに支配されるように、彼は妻を抱きしめ、唇を奪おうとした・・・・・・・。

「それも許してはもらえませんか、麻由美さん・・・・・・・・・」
藤原は再び妻の唇を求めているのだ。高まる鼓動を感じながら、私は妻の言葉を待った。しばらくの沈黙の気配が、既に私に答えを教えてくれていた。

「わかりました・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「でも、それだけですから・・・・・・・・、約束してください・・・・・・・・・・・・・」

この寝室にまで彼を導いたのは妻に相違ない。男の強引な態度がそうさせたとしても、自らこんな環境を招いてしまったことに、妻は責を負おうとしているのかもしれない。

再び沈黙がドアの向こう側を支配する。もはや会話が続くような気配はなかった。交渉が成立し、それを踏まえた行為が今、そこで行われていることを私は感じた。

無意識のうちに右手が引き戸に伸びていく。音を立てることなく、わずかにその隙間を開ける。その部屋に堂々と入る権利があるというのに、私にそれを行使する意思は微塵もない。

10センチほど開けば、ベッド上の光景ははっきりと見えた。窓の外から漏れてくる夜の街の灯りが、ぼんやりとベッド上を明るく浮かび出している。

仰向けに寝かされた妻は、白いシャツにギンガムチェックの膝丈スカートを身に着けている。その服装には、僅かな乱れが生じているようにも見える。

すぐ横にいる男が、妻の唇をゆっくりと吸っている。妻は抵抗を見せることなく、何かに耐えるように瞳を閉じ、ただ男の行為に従っている。

藤原は既にシャツを脱いだのか、半そでのTシャツにデニムという格好だった。その右手が優しげに妻の腹部の辺りに置かれ、たっぷりと時間をかけた口づけを続けている。

いったん唇を離した男の表情を、妻がそっと見つめる。一瞬見つめあった後、男はやや情熱を増した仕草で再び妻の唇を奪う。男の舌が運動していることを私は知る。

頑なに閉ざされていた妻の唇が、男の要求に更なる譲歩を示すように、僅かに開く。男の舌先の動きと連動するように、妻の口がなまめかしく動き始めるのが見える。

妻は藤原とのキスに溺れ始めている。そこにある誘惑に耐えきれないように舌を自ら差し出し、男のそれとねっとりと絡めあう。そこにある光景は私の下腹部を戸惑うほどに硬くさせた。

唾液を吸いあうような卑猥な音が部屋に響く。男の右手が少しずつ移動を始める。抑止しようと重ねられた妻の右手を無視し、男の手がその先にある官能的な膨らみを包む。

「待って・・・・・・・・・・・・」
約束が違うことを訴えるように、妻がキスの隙間から声を漏らす。男にためらう気配はない。妻の乳房を確信犯として愛撫しながら、きつく舌を吸い上げる。

妻の肢体がベッド上で戸惑うように動く。男の口が妻の首筋に移動していく。妻に覆いかぶさるようにしながら、男は体を移動させ、妻の逃げ場を閉ざしていく。

「藤原さん・・・・・・・・・・、キスだけっていう約束です・・・・・・・・・・」
「麻由美さん・・・・・・、もう少しだけいいでしょう・・・・・・・・・・・・」

首筋を吸い始めた男の体を何度も押し返そうとする妻だが、その抵抗が勝るはすもない。男の手が乳房を揉み、その頂上をくすぐるように動くたびに、妻の力が弱まっていくように見える。

男の手が妻のシャツのボタンに伸びる。そこを外そうとする指先の意志を、妻は懸命に抑え込もうとする。男は再び妻の唇を吸い、僅かに生じた隙を突いて素早くボタンを外す。

「いやっ・・・・・・・・・・・・・・」
数個だけボタンが外されたシャツの隙間から、妻の白い肌が光って見える。その谷間に男は顔を埋め、瞬く間にボタンを全て外し、シャツを妻の肢体から剝ぎとる。

「いけない・・・・・・・・・・、藤原さん、こんなこといけませんっ・・・・・・・・・・・」
妻の言葉への答えを男は自らの行為で示そうとする。夢想していたものを待ちきれないように、男は妻のブラの肩ひもを引き下げ、その下に隠された裸体を剥き出しにする。

「綺麗だ、麻由美さん・・・・・・・・・・・・・」
片方の膨らみに優しげな愛撫を与えながら、もう片方の丘陵の先端に男はしゃぶりついた。妻の両手がベッド上に投げ出され、シーツをきつく握りしめる。

「主人が・・・・・・・・・・、主人が戻ってきますから・・・・・・・・・・・」
「まだ大丈夫ですよ、麻由美さん・・・・・・・・・・・・、もう少しだけ楽しめます・・・・・・・・」

闇の中、男に吸われる妻の乳房のシルエットがいやらしく浮かび上がる。形のいい妻の美乳の先端が男を欲しがるように突起している。男の右手が妻の脇腹を撫で、更に下に移動する。

スカートの裾を探り当てた指先が、その裏側に滑り込む。妻が狼狽した様子で手を伸ばし、それを防ごうとする。男がやや乱暴な調子で、その右手を更に奥深くに伸ばす。

「いやっ・・・・・・・・、そこだけは駄目っ・・・・・・・・・・・・・・」
妻の声には、何かを隠そうとする切迫した気配が漂っている。


(↑クリック、更新の励みです。凄く嬉しいです)
Comment
以前のキレが・・・
なぜでしょう、最近の、のりのりさん

以前のような、じりじりと焦らされて
喉の奥が乾いてくるような、絡み合う二人の周りの空気さえ
感じられるような、独特のいやらしさがあった
あの感覚が消えてしまいました・・・

とても薄いです。

なぜ、あそこまで抵抗を示す麻由美が既に寝室の
ベッドに横たわっているのでしょう??

大変勝手な意見ですが、今回はとても残念。
いい言葉ですね
「スカートの裾を探り当てた指先」
「美乳の先端が男を欲しがるように突起している」
素敵な表現で文字に興奮させられます。

管理者のみに表示