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抵抗の果て(21)

2014 01 28
「じゃあ、奥さんは妙なことを何もされなかったのかい、あの男に」
「ええ・・・・・・、心配したようなことは結局何も・・・・・・・・・」

奥多摩の別荘地から足立理髪店を経営する夫妻が戻ったのは、翌日の昼前だった。二人が帰宅した雰囲気を察知した隣家の宮地は、すぐに姿を見せた。

昨日、今日と休業日の理髪店に客の姿はない。カーテンを閉ざし、商店街からの視線を避けながら、3人は今、昨日と同じように店内のソファに座っていた。

江利子は終始無言を貫いている。その服装に乱れはなく、髪も美しく束ねられている。宮地は、人妻の肢体をどこか舐めるような視線で見つめながら、夫の正則に言葉を返した。

「それは、ご主人、ともかくよかったじゃないか」
「はい・・・・・・・・・」

「それで、例の件はどうなったんだい?」
「まず妻があの男に負わせた傷のことですが・・・・・・・」

正則はそう言いながら、前夜の濃厚な記憶のことを思い出した。全裸にされた妻が、目の前で激しくあの男に犯され、遂に絶頂にまで導かれた屈辱の光景。

息を乱した妻の口に、強引に己の肉棒をねじ込み、大量のスペルマを放出した男。彼の液体を喉奥にまで流し込み、放心したようになまめかしく唇を濡らした妻の裸体。

だが、彼の責めはそれでは終わらなかった。彼は果てることのない欲情に突き動かされるように、妻の肉体を夜明けまで弄び、たっぷりと愛し続けた。

バスルーム、寝室、そして台所。あの狭いコテージ内のあらゆる場所で、小野田は江利子の裸体を犯し、己の欲情で妻の肌を濡らし、汚した。

そして、妻はあの男の技巧に何度も頂点にまでいざなわれ、悦びの声を漏らした。

「ご主人、大丈夫かい?」
「え、ええ・・・・・・・・、それであの男からの回答ですね・・・・・・・・・」
「ああ。奥さんが与えた傷のほうはどうだっていうんだい?」

心配げに質問してくる宮地の表情を見つめ、正則は昨夜の悪夢を懸命に振り払う。

「妻がこの店で与えてしまった傷に関しては、不問にする、と明言されました」
「ほう、じゃあ訴えない、ということかい」

「ええ。今後、訴訟を起こしたり、金銭を要求するようなことは一切しないとのことでした」
「しかし、ご主人、それは随分出来過ぎたような話もするがなあ」

「えっ?」
「そうだろう。あいつは奥さんを一晩好きにさせてもらうって言ってたんだろう」

宮地のその言葉に、正則は回答に詰まってしまった。だが、事実をいうわけにはいかない。いくら隣家の宮地でも、昨夜、妻が受けた陵辱の事実は口が裂けても言えない。

宮地の言葉を耳にした江利子は、表情を変えることなく、下を向いたままだ。

「妻は、彼と一緒にワインを飲んだりして、できる限りのもてなしはしましたので」
「そんなことで満足したのかい、あいつは」

「勿論、何度も謝罪はさせてもらいました。それをわかってくれたんだと思いますよ」
「ふーん、そんな男には見えなかったがなあ」

納得できない様子で、宮地は遠慮なくたばこに火をつける。煙を吸いながら、再び江利子の肢体に目をやる。気のせいか、人妻の肉体をいつも以上にじっくり観察しているようだ。

「それで、肝心の土地の件は?」
「それは何も・・・・・・・」

正則の言葉に嘘はなかった。小野田は結局、土地の件を放棄するような言葉をはっきり言うことはなかった。妻を抱きながら、それを匂わせるような言葉を吐いただけである。

「それじゃまだまだ安心はできんってわけか」
宮地がそう言いながら、何気なく視線を外にやる。カーテンのすぐ向こうに誰か立っているのがわかる。顔をあげた江利子の視線が、何かを求めるような色でそこを見つめた。

「まさか、あいつか・・・・・・・」
宮地は、まるでそこが自分の店のように立ち上がり、閉ざされたドアを開けた。そして、そこに立っている男の姿を確認した瞬間、店内の緊張が一気に解けた。

「何だよ、お前か・・・・・・」
そこには、宮地の知人、弁護士の岩内の姿があった。

「岩内、お前、いいところに来たよ。土地の件は結局まだまだ引っ張りそうだぜ」
宮地がそう言いながら、岩内を店の中に招き入れる。冬だというのに汗ばんでいるのは、その肥った体躯のせいだろうか。ハンカチで額の汗を拭きながら、岩内が言った。

「いや、宮地よ、それは違うかもな」
「どういうことだい?」
「まあこれを見てくれ」

岩内は、くたびれた革鞄の中から、A4サイズの紙を取り出した。それは、弁護士間に設けられているある情報ネットワークからの速報記事のコピーだった。

「おいおい、本当かよ・・・・・・」
見出しを確認した宮地が、思わずうなった。

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T建設、民事再生法の適用を申請へ

○○日、中堅ゼネコン「T建設」(本社:東京都新宿区)が東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請する公算が高まった。

同社は今般、過去半年で2回目の手形不渡りに陥ったため、今後銀行取引停止処分が課され、事実上倒産する見込み。負債総額はおよそ68億円。

これにより、同社が計画していた複数のマンション計画は頓挫、白紙に戻ることが濃厚。一例は、○○県の○○駅商店街の一角を対象にした大型マンション計画。

また、同社に関しては土地買収に関し、複数の地上げ屋を起用しているのでは、との黒い噂が以前より絶えなかったが、その1社と想定される「有限会社コーデン実業」が本日、民事再生法の適用を東京地方裁判所に申請した。

同社広報担当によれば、社員9名は全員解雇する予定とのこと。

続報入り次第、○○ネットにて情報公開予定。

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「というわけですよ。ご主人、どうやら助かったようですな」
岩内が、笑顔を浮かべて、正則に声をかけた。記事の内容が信じられないように、正則はその紙を何度も見つめ、やがて視線をあげた。

心のどこかに、この店を高額の現金で売ってしまいたいという考えがあったのは否めない。だが、妻の望みを考えれば、結末はこのほうがいいのだ。正則は自らにそう言い聞かせた。

「宮地さん・・・・・・・」
「コーデン実業ってまさに小野田の会社だろうが」

「はい・・・・・・・・・」
「いや、ご主人、よかった・・・・・、これでよかったんだよ・・・・・・・・・・」

だが、宮地はどこかひっかるような様子だった。そして、それをはっきりと口にした。

「ご主人、恐らく小野田はこんなことになることを最初からわかってたんだろうな」
「そうか・・・・・・・」
「それを隠したまま、奥さんに接近しようとしてたんだよ。ひでえ男だ、まったく」

宮地の言葉の意味を噛み締めながら、正則は激しい悔恨を感じていた。こんなことであれば、妻はあれほどの屈辱に耐える必要などなかったのだ・・・・・・・。

「酷い・・・・・・・、酷い男です、本当に・・・・・・・・・・・・・」

正則は、前夜の妻の姿を脳裏に思い浮かべながら、独り言のように何度もつぶやいた。宮地も岩内も、そんな正則の姿を少し驚いた様子で見つめた。

そのとき、3人の男は気づいていなかった。うつむいたまま、固く肢体を静止させて座っている江利子の表情が、岩内が差し出した記事を観た瞬間、僅かに揺れたことを。

しばらくの後、宮地と岩内は理髪店を安堵の言葉と共に去った。その場に座り続ける妻の緊張を和らげるように、正則は優しげに声をかける。

「江利子、これでもう安心だ。昨日のことは、全て忘れよう・・・・・・・」
「あなた・・・・・・・・・・・」

「俺は大丈夫だ。江利子のことを信じている」
「ごめんなさい・・・・・・・・・・・・、あなた・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

江利子はそれ以上言葉を続けることなく、居間に姿を消した。その場に残った正則は、自らが発した言葉に、果たしてどれだけの真実がこめられているのか、自問せずにはいられなかった。

俺は本当に信じているのか、妻のことを・・・・・・・・・

その夜遅く、一通の配達証明が「宮地デンキ」に届けられた。店主宛の大型封筒だ。

同じ頃、隣家の人妻は、寝静まった自宅の片隅で、静かに携帯電話を握りしめていた。

彼らのストーリーは今、その第2幕を開こうとしている。


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Comment
新たな展開
T建設というと、例の?小野田に夜通し犯され(その場面も回想シーンで、読めるといいです)、イカされまくった江利子さんは、体も心も奪われてしまったのでしょうか。
展開
第2幕に注目します。
気の早い話ですが第何幕まで行くかにも興味が湧きます。
江莉子さんエロすぎでしょ。宮地に視姦されてるところとか興奮します。宮地さんやらしい想像してたんだろうなあ。
それとT建設ってやっぱりあの会社ですかね?新宿ってあるし。
だとするとまさかあの人妻たちの登場もあるんでしょうか?
まさか?
宮地は共犯者か…?

次の展開に興味津々です。
宜しくお願いします。

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