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抵抗の果て(22)

2014 01 30
「今日は奥さん、一人かい?」
調髪台に座った初老の男性が、のんびりとした口調でそう聞いた。

「ええ」
店主の妻である店員は、ただそう言っただけで、それ以上説明を続けようとはしなかった。元々、極端に口数の少ない店員であることを、リピーターであるその客は既に知っている。

日曜日の夜だった。いつもの週末のように、今日もまた、多くの客がこの理髪店にやってきた。春の陽気に誘われるように、彼らは皆、どこか楽しげだった。

そんな多くの客を、午後4時過ぎから彼女が一人で対応した。人妻であるその店員目当てに来た客も多い。彼らは不満を漏らすことなく、一様に順番を待った。

彼女にとっての長い午後が、ようやく終わろうとしている。

「皆、奥さん目当てに来てるからねえ、逆に毎週こっちのほうが儲かるんじゃないのかい?」
丁寧にカミソリをあててくる人妻店員に、客は質問を投げる。

「そうでしょうか・・・・・・」
「そういうわしも、奥さん目当てに通ってるんじゃがね」

「いつもありがとうございます・・・・・」
「言い寄ってくる客も多いんじゃないのかい? 或いは体を触ったりとか」

店内に二人きりであるせいか、初老の客は遠慮ない調子で会話を続けた。その質問に対し、人妻の心の中で何かが揺らめいたことに、客は勿論気付くわけもない。

「い、いえ。そんなお客様は・・・・・・・」
「そんなことないだろう。そんなに綺麗だったら」

「・・・・・・・・・・」
「気のせいか、最近ますます磨きがかかったんじゃないのかい、奥さん」

「・・・・・・・・・・」
「ご主人がうらやましいよ、毎晩奥さんと一緒に過ごせるなんてねえ」

「・・・・・・・・・・」
「あっ、いや、こりゃわしも調子に乗りすぎたな」

そんな客を非難することなく、店員は穏やかな笑みを浮かべ、対応を続けた。その時、ドアを開けて、一人の男が店の中に入ってきた。

「奥さん、ちょっとお邪魔するよ」
彼を見た店員の顔が、一瞬こわばる。50代後半と思われるその男は遠慮ない様子でソファに座り、たばこに火をつけた。

「いいのかい、奥さん、こんな時間から新しい客をとって」
調髪そして顔剃りを終えた客が、小声でそう聞く。

「ええ」
店員は小さな声で答えたが、そこに漂う僅かな戸惑いの色を隠すことはできなかった。

精算を終えた客が、ソファに座った客に軽く会釈をして店を出ていく。決して親密ではないが、彼がこの隣家に店を構えていることを、初老の客は知っていた。

立ち去る客と入れ替わるように、学生らしい客が入ってきた。ソファに座っていた男が、たばこをもみ消しながら、まるで店主のような調子で若い客に言った。

「あいにく、今日は営業おしまいだよ」
「えっ、そうなんですか?」

「もうこんな時間だぜ。また出直してきな」
「しょうがないなあ・・・・・・・」

そして、店内には二人だけが残された。

調髪台の周囲を掃除しながら、人妻である店員はソファの男を非難するように言葉を投げる。

「せっかく来てくれたお客様です・・・・・・」
「帰ってもらったほうが俺には都合がいいからな」

「・・・・・・・・」
「奥さん、我々には話すことが山ほどあるんじゃないのかい?」

「そうは思いませんが・・・・・・」
「かれこれもう10年以上もろくに口をきいてくれねえじゃないか。まあ昔からそうだが」

隣家に住むその男は、理髪店で生まれ育った彼女のことを、幼少のころから知ることができる立場にあった。だが、実際は、彼女が専門学校生になる頃まではほとんど接触がなかった。

彼女の両親が、隣家の彼のことを嫌っていたことが大きかった。距離は近いが、彼女はその男とはほぼ無縁のまま育つ。彼の息子に勉強を教えるようになるまで、そんな状況は続いた。

隣家の店主にとって、理髪店の一人娘は常に遠い存在だった。名前で呼んだこともほとんどない。だからこそ、成人した彼女に、男は異様な興味を抱き始めた。

「ここに顔出しても、ずっと無視ばかりだからなあ」
「それは・・・・・・・・、ご自身が一番理由をよくわかっているはずです・・・・・・・・」
「昔と変わらず、きつい性格だねえ、奥さんは」

ソファから立ち上がった男が、ゆっくりと人妻に近づいていく。純白のシャツに黒色のデニム、その上に黒色のジャンパースカートを身に着けた人妻が、彼のことをきつく見つめる。

「近づかないでください・・・・・・」
「今夜は旦那は戻ってこないんだろう」

「・・・・・・・・・・」
「泊りがけで組合の慰安旅行に行ってるんだってなあ」

男はすぐに店員に近づこうとはしなかった。店内を観察するように歩いた後、素早く照明のスイッチを消した。そして店のドアにカギをかけ、カーテンで外界からの視線を遮断する。

「声を出します・・・・・・・・」
覚悟を決めたように、人妻が男にそう漏らした。

店内はほぼ闇に包まれている。だが、外の商店街から漏れ入ってくる光で、二人は十分に互いの表情を確認することができた。人妻の表情が本気であることを、男は知った。

「あのときみたいに声を出すのかい?」
「・・・・・・・・・・」

「まだ結婚前だったなあ。あのときはうまく逃げられたが、今夜はそうはいかない」
「・・・・・・・・・・」

「10年以上、ずっと奥さんを見続けてきたんだ。すっかり色っぽい人妻になって・・・・・」
「本気ですから、私・・・・・・・・」

男がじわじわと人妻に接近していく。後退する店員は、調髪台に触れ、それを避けるように更に男から逃げる。そして、クリームや調髪剤がそろった棚に、背を密着させる。

「あのときのことは旦那も知らないんだろう」
「言えるわけありません・・・・・・・・・・」

「別に隠すことはない。全て奪われる前に、うまく逃げおおせたんだからな」
「あの記憶はもう、封印してますから・・・・・・」

「それにしては、ずっと冷たいじゃないか。あれから会話さえろくにしてくれない」
人妻と密着するほどに、男が近づく。目の前にしながら、10年以上もずっと指をくわえて見つめつづけてきた獲物がすぐそこにあることに、彼は興奮を隠しきれない様子だった。

「いい体になったねえ、奥さん」
盛り上がった人妻の胸を、男がいやらしく見つめる。全身を撫でまわすように彼の視線が下降し、人妻の美脚とヒップを見つめる。男の意志を感じたように、人妻ははっきりした警告を発する。

「少しでも私に触れたら、声をあげますから・・・・・・・・・・」
「小野田にさせて、俺にはさせないっていうのかい、奥さん」

宮地の太い声を聞いた江利子の表情に、瞬時に戸惑いの色が浮かぶ。


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Comment
やはり来ましたね
やはり来たか、この男・・・
店の中で犯されるというシチュエーションがいいです。

汚い手口で、10年溜め込んだ情欲を人妻に放って欲しい、
江利子に全てを捨てさせ、破滅させるほどに、
濃厚に、厭らしく犯して欲しいです。
まさか
ご主人の不在を見計らい、本性を現した宮地。過去にも未遂があったのですね。江利子さん、もう一度会いたいって、小野田を呼び出したりしてませんか?店内で、3P突入?
やはり
思わず

出たな〜電器屋のエロオヤジー

と思っちゃいました。かなりハマっている自分がいます。
そう来ましたか
職場と言うあり得ない場所で犯される・・・
最高にイイですね。
宮地にはいやらしさの限りを尽くして頂きたい。

ここに小野だが現れて・・・3人でとかは
やめて欲しい、全くしらけてしまいます。
小野田はもう要らない。
第2幕
ワクワク感が更にアップします。
第3幕・第4幕はどうなるのかと気の早い期待までしてしまいます。
そっちでしたか
分からなくなってきましたね。

江利子と宮地は不倫関係だと思ってました。
主人と宮地がいる前ではよそよそしい、店を動かす事を拒む、
そして、男を引き寄せるあのエロさ。
配達証明も深夜の電話もそのことをさらに
ゆするネタにするのだと・・・

ん〜、こっちも悪でしたか、
この場面は強烈なレイプか、それとも
じりじりと追いつめて濃厚に犯していくのか。
どうなる。

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