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抵抗の果て(45)

2014 04 07
男たちの視線が部屋の奥に注がれる。外の景色を眺めることができる広縁の手前に、2畳ばかりのスペースがある。男たちの視線は、人妻にそこに動くことを要求していた。

「奥さん、そこで脱いでもらいましょうか」
食事を終えた男たちはアルコールで満たしたグラスを手にし、人妻の裸体を想像するようにいやらしく笑みを浮かべている。そして、その視線で人妻を追い詰めてくる。

早くステージに上がれ、と。

ノースリーブという格好であるのに、江利子はひどく喉が渇いていることに気付いた。強引に酒を飲まされたせいでもあり、服を脱ぐことを強要されているからでもあった。

彼らには既に全裸の姿を曝け出し、その肉体を好きなようにいじめられたのだ。江利子はその事実を想起しながら、今さら何を戸惑っているのだと、自らに問いかける。

だが、その裸体は既に隠している。用意された下着とワンピース。そしてアクセサリー。人妻は温泉旅館には不似合いなシックな格好で、いじめられた裸体を包んでいた。

一度隠した肉体は、二度と披露したくはない。増して、自分から男の前で脱ぐなどという猥褻な行為を、江利子は過去に一度でもしたことはなかった。

「彼」の要求なのだ・・・・・。江利子は再び、あの男の存在を感じる。

この部屋のどこかから、「彼」が密かに見つめている。戸惑う足立江利子の姿にほくそ笑みながら、自らの興奮を高めているのだ。江利子はそれを確信し、覚悟を決める。

「わかりました・・・・・」
自分でも驚くほどに、江利子は男たちにはっきりと答えた。それはここにいる4人の男たちではなく、どこかにいるもう一人の男に対する返事であった。

立ち上がった江利子は、乱れた服装を今一度整えた。束ねられた髪に手を伸ばし、首に巻かれたアクセサリーに触れる。そして、ゆっくりと最奥部のスペースに向かった。

畳の上にリラックスした様子で座る男たちを見下ろすように、人妻は立った。一人の男が部屋の照明を落し、オレンジ色の補助灯だけにした。部屋の雰囲気が一気に妖しげなものになる。

男たちが密かに息を呑むのがわかった。だが、人妻もまた、激しく鼓動を高鳴らしていた。薄暗い部屋の照明が、江利子を夜の店のステージに立っているような、妙な気分にさせていく。

「奥さん、早く下着姿になってくださいよ」
一人の男が、たまらない様子でつぶやく。彼らに先刻まで露天風呂で泡に包まれ、全裸の肉体を存分に愛撫されたことを思い出す。そして、隣家の青年の姿が人妻の脳裏によぎる。

覚悟を決めた人妻の手が、黒色のワンピースの背中に伸びる。緊張のせいか、或いは無意識のためらいのせいか。それを下ろす人妻の指先が震え、動作をゆっくりとしたものにする。

焦らすような人妻のその動きに、男たちは逆に興奮を覚えた。挑発するような人妻の表情に、やがて緊迫の気配が浮かんだ。背中のジッパーがもはや下降できない位置にまで達したのだ。

「脱いでください、奥さん」
両腕でワンピースを掴む人妻に、男の言葉が刺さる。

男を軽蔑するように、人妻の視線に光が宿る。そして、ゆっくりと黒色のワンピースをずり下げていく。オレンジ色の微光の下、人妻のすべやかな白い肌が浮かびあがってくる。

豊満な胸の谷間が顔を覗かせる。黒色のブラに包まれた人妻の乳房が、完全に露わにされる。なおもゆっくりとした動作で、江利子はワンピースを下ろし、畳の上にそれを脱ぎ落とした。

唇を噛み、江利子は両腕を交錯させて胸元を隠す。黒のブラとショーツ、そして銀色のネックレスだけが、人妻の裸体を隠している。白く長い美脚が、何かを拒むようにきつく閉ざされている。

「胸を隠さないで、奥さん」
「・・・・・・・」
「お風呂であんなに見せてくれたじゃないですか。もう恥ずかしがることなんてない」

その男の言葉に、人妻は抗わないわけにはいかなかった。持ち前の強気な芯を発揮するように、江利子は4人の男たちを見つめたまま、両腕を乳房の前でクロスさせ続けた。

「ご自分でできないのなら仕方がない」
一人の男が立ち上がり、素早く人妻に接近する。酒臭い男の気配が、江利子の嫌悪感を加速させる。しかし、彼の行動は素早かった。人妻の両手首をつかみ、強引に頭上に運ばせる。

「こうするんですよ、奥さん」
「離してください・・・・・」

「このままずっと掴んでいましょうか」
「わかりました・・・・・・・、自分でしますから・・・・・・・・・」

席に戻った男を見つめながら、江利子は自らの後頭部に指を絡ませ、両手を置いた。下着を身に着けているとはいえ、人妻は全裸を見つめられたとき以上の羞恥を感じていた。

「いい胸だ」
先刻まであれほどに揉みしだいた人妻の乳房を初めて拝むように、男がつぶやく。下着姿でいるにもかかわらず、江利子は肢体がたまらなく熱を帯びているのを感じている。

「どんな気分ですか、こんな風に我々に見つめられて」
「・・・・・・・・・」
「髪を切られながら、客はみんな、奥さんのこんな下着姿を想像してるんですよ」

リーダー格の男がそうつぶやきながら、立ち上がった。自ら屈服するように両腕を後頭部に置いて立つ下着姿の人妻の背後に、男はゆっくり足を運び、密着するように立った。

至近距離に立ったまま、男はしばらく何もすることはなかった。3人の男たちは依然として酒を飲みながら、そこに座っている。背後の男の息が、江利子の首筋から肩にかけて届き始める。

震えるような感覚が、人妻の全身を走る。なおも両手を後頭部に置き、江利子は立ち続ける。やがて、背後の男の手が前方に伸びてきた。そして見事に突き出した人妻の乳房に置かれた。

「やめてください・・・・・」
ささやくような声で抗う人妻をあざ笑うように、男の両手が動き始める。

先刻の露天風呂でされたときとは、全く異なる刺激が江利子を襲う。ブラの刺繍が、人妻の乳首を刺激する。男の手つきは、くすぐるようなタッチで人妻の豊乳を責めてくる。

「・・・・・・・」
息を漏らしそうな気配を懸命に抑え、江利子は瞳を閉じた。両腕を下ろすつもりはなかった。それをしたならば、自分が完全に敗北してしまうような、そんな妙な気分があった。

立っているつもりであるのに、肢体が僅かにくねり始める。閉ざされた両脚が震え、腰がかすかに揺れる。男の手が下方から人妻の豊かな胸の丘陵をねっとりと揉みあげてくる。

「奥さんも気持ちいいでしょう、こんな風にされると」
苦しげに唇を噛みながら、人妻はしかし声を漏らすことはなかった。背後に立ったまま、男は時間をかけて人妻を責めた。10本の指が、江利子の双丘をたっぷりと愛撫した。

しかし、男はそれ以上の部位を責めようとはしなかった。そして、その下着を剝ぎとることもなかった。その代わりに、彼は自らの行為を、人妻が予想していなかった責めで終えた。

「奥さん、いいネックレスしていますね」
乳房を揉み続けた男の手が、突然江利子の首元に伸びた。そして、それを外して奪い取ると、江利子の両腕を下ろさせ、腰の辺りで組むことを要求した。

「申し訳ないですが、自由を奪いますよ、奥さん」
両手首に冷たい感触が走る。江利子はようやく悟った。鎖状のネックレスが渡された意味を。

そのままの格好で、人妻は広縁に誘導させられた。障子が閉ざされ、部屋の様子を確認する術が人妻から奪われる。慌ただしく人が動く気配がしばらく続き、やがて静寂が訪れた。

「奥さん、こちらへどうぞ」
先ほどの男が障子を開き、姿を現した。両手を背中で拘束された人妻に手を添え、男は親身な態度でゆっくり誘導した。室内は補助灯も消され、完璧な闇に包まれている。

食事が置かれていたテーブルが片付けられている。3人の男も姿を消している。闇の中、男と共に、人妻は歩を進めていく。そして、部屋の中央に置かれた布団の存在に、江利子は気づく。

「奥さん、ここに横になってください」
両腕を背中で拘束されながら、江利子はそこにしゃがみこんだ。そして、入り口の方に背を向け、広縁の方角を向くような格好で、布団の上に下着姿の肢体を横たえた。

「奥さん、私の役目はこれで終わりです。ここでしばらくお待ちください」
「・・・・・・・」

「奥さん、一度でいいからあなたを抱きたかったですよ」
優しげな言葉を口にする男が、心底からそう言っていることを江利子は感じた。

「彼のことは心配しないでください」
「えっ?」

「宮地達樹君ですよ。責任もって育て上げますから。ただし、奥さんにはこの場所に呼び出したあの男と、今夜最後まで付き合ってもらう必要がありますが」

「あ、あの・・・・・・」
立ち去ろうとする男に、江利子は横になったままで声をかけた。

だが、男がそれ以上言葉を返すことはなかった。最後に紳士を思わせるような態度を示した彼は、やがて部屋から姿を消した。彼が人妻の肉体を奪うことは遂になかった。

「彼」のためにステージを用意するだけです・・・・・・・。

その言葉通りの役目を、忠実に果たしたとでもいうのか・・・・・・・。

足立江利子は暗闇に取り残された。室内は勿論、廊下にも人の気配はない。落ち着きを回復させながら人妻は下着姿の裸体を隠そうとするが、縛られた両手をどうすることもできない。

布団の上に横たわり、江利子はそっと目を閉じた。神経を集中させ、理性を改めて強固に取り戻す。温泉から食事までの妖しげな記憶が、少しずつ退行していく。

人妻の息に乱れはない。寝息を思わせるような一定の呼吸が、人妻の裸体を支配している。その防御の意志を確認するように江利子は両脚に力を込め、大切な箇所をきつく閉ざす。

部屋のドアがそっと開けられた音が、江利子の耳に届く。


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Comment
ラストステージ
コメントの反映が遅れているようですね。いよいよ、最後の夜に突入。両手を縛られ、「彼」に存分に陵辱されてしまう。それも、4人の男たちに覗かれながら?
お忙しいでしょうけど・・・。
前にも申し上げましたが、ここまでファンが増えてる中で、投稿間隔が不定期で何も次回日程通知がないのは、悲しいです。
副業で執筆されてるとは思いますが、
さらなる善処をお願いします。

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