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抵抗の果て(46)

2014 04 09
室内の空気が微妙に変化していく。侵入者の気配がそうさせている。

肢体の緊張を高めたまま、江利子は布団の上に横たわり続けた。入口の方向に背を向けた格好を、動かすことができない。両手を拘束されているせい、だけではない。

「彼」が近づいていることを知るのが、怖かったのだ。

室内に入った何者かが、静かにふすまを閉める気配がする。闇は依然として濃いが、それに慣れてきた人妻に、周囲の様子を確認することは難しいことではなかった。

視界を拒むように、江利子は瞳を閉じた。唇を噛み締め、息を殺す。黒色のブラとショーツは、先刻初めて身に着けたものだ。その慣れぬ感触が、人妻の肢体を熱くしている。

何をされても反応を見せない。人妻としての理性を固く内に秘め、ただやり過ごす。それであの若者の将来が約束されるというのなら、どのような困難も克服できるはずだ。

人妻はそんな信念を確認しながら、ただそこに居続けた。相変わらず周囲は静寂に包まれている。何者かが更に接近してくる気配はない。勿論、何の声も発せられない。

だが、江利子は感じる。裸体に注がれる「彼」の視線を痛いほどに・・・・・。

その視界が闇に馴染むことを、男は待っているのかもしれない。息遣いさえ感じさせぬまま、背後にいる何者かはそこに留まり続けた。まるで、人妻を限界にまで焦らすように。

背中を向けている以上、ショーツに包まれた美尻を隠すことができない。鎖状のネックレスで縛られた手首を時折その周辺で動かしながら、人妻は両脚を何度もきつく閉じた。

懸命に冷静さを求めるにもかかわらず、露天風呂で4人の男に愛撫され尽くしたねっとりとした感触が、肢体中に蘇ってくる。彼らの指先に撫でられ、揉まれた乳房、ヒップ、そして太腿。

ただ布団に横たわっているだけなのに、彼らの手が再び伸びてきて、責めてくるような錯覚を感じる。それは、明らかに背後から感じ続ける視線がそうさせていた。

早く好きにしてください・・・・。江利子はそう叫びたいような衝動に何度も駆られた。男たちに散々にいたぶられながら、最後の責めは与えられなかった肉体が火照り始めている。

何かを求めて疼くように、江利子の体奥に熱い渦がうごめいている。奥多摩の夜の記憶が、鮮明に蘇ってくる。「彼」だけに教えられたあの快楽が、人妻の体にまだ深く刻み込まれている。

やがて、沈黙のまま、誰かがゆっくり近づいてくるのを感じ始める。それは人妻の足元付近の畳で止まり、それ以上動こうとはしなかった。だが、江利子は別の事実を知った。

そこにいる何者かは、ゆっくりと服を脱ぎ始めている。浴衣ではないようだった。ボタンを外し、ベルトを緩める気配がする。それはしばらくの間、終わることはなかった。

江利子は感じる。「彼」が全てを脱ぎ捨て、生まれたままの姿になったことを。

瞳を閉じる力を、人妻は思わず強めた。屈服はしないという強靭な意志と、奥多摩で覚えてしまったあの快楽を探す欲情が、江利子の体奥で交錯し、それが肉体の熱を高めていく。

「彼」が足元で上体をかがめ、そこに腰を下ろすことを感じる。その瞬間が、すぐそこに近づいている。あの夜以来、再び「彼」の手に触れられるその瞬間が・・・・・。

最初にそれが触れたのは、江利子のつま先だった。横向きになる肢体をそのままにしながら、その手は人妻の足指をそっと撫で、指間を癒すように愛撫し始めた。

江利子は瞬時に理解した。その指先の持ち主が小野田であることを。

「小野田さん・・・・、約束通り、ここに来ましたから・・・・・」
我慢することができず、江利子は遂に言葉を発した。

だが、彼が返事をすることはなかった。無言のまま人妻の足指をマッサージし、そして、足の裏のつぼを探すように指先で押してくる。それは妙に心地よい感触だった。

温泉で十分に火照ったことを、今さら江利子は後悔してしまう。秘湯の熱に癒された肉体は、普段以上に愛撫に対して敏感に反応してしまうようだった。

男の指先が江利子のふくらはぎに移動していく。引き締まった人妻の美脚の裏側を、彼は指の腹で撫で、優しく揉んだ。左右のふくらはぎを交互に愛撫し、そこにある緊張を解いていく。

彼にされるにつれて、両脚に込めた力が抜けていくような気分にさせられていく。懸命に意志を維持する人妻のふくらはぎから腿裏にかけて、男の爪先が這い始める。

線を描くように、彼の指先が江利子の両脚の上を走り始めた。成熟した人妻の太腿が、闇の中で白く妖しく浮かんでいる。男の指先が、そこを何度も往復する。

くすぐるように縦横に動く男の爪先が、少しずつ人妻の閉ざされた脚間に達していく。背後から膝の間をこじあけるように、そして内腿の感触を確かめるように指が動き続ける。

決して強引なものではなかった。男の指先は、明らかに誘っていた。人妻が自分から脚を大胆に開くことを。緊張が解かれ、男を迎え入れることを自分から選択することを。

息を乱すことなく、江利子は反対側を向き、瞳を閉じ続けている。唇を噛む力が微妙に変化している。それが男の指先の動きと呼応していることを、人妻は懸命に隠し続けている。

男の責めが突然転化した。今度は人妻の両脚をしっかりとつかみ、濃厚な愛撫を与え始めた。江利子のふくらはぎから太腿を、男の両手が丹念に揉み、柔かな肉体をほぐしていく。

人妻のヒップを包むショーツに、その指先は達するか達しないかのところで引き返す。男にたっぷりと両脚を愛撫され、それに応えるように人妻の下半身が僅かに動き始める。

ただ両脚を愛撫されていくだけで、人妻の肉体の反応は明らかに変化していった。闇の中でも、この男がその人妻の想像以上の敏感さに気づかぬはずはなかった。

震える人妻の下半身を、男は確かに見つめている。そして彼は、人妻の腰の辺りで拘束された手首を掴み、そのネックレスを解く。しかし、それは許しを与えるものではなかった。

無言のまま、男は江利子の肢体を布団の上で仰向けにさせた。すぐ上にいる彼のことを、しかし、人妻は直視することができず、瞳をかたくなに閉じ続けた。

人妻は仰向けになったまま、両腕を枕の上方に揃えて置くような格好にさせられた。男は再びネックレスで人妻の手首を拘束した。抵抗を示さない人妻に、彼はにやりと笑みを浮かべる。

背中に腕を回されて縛られているとき以上の羞恥心が、江利子を包む。布団の上に仰向けになり、卑猥な下着に包んだ裸体を、惜しげもなく上にいる男に見せつけているのだ。

満足そうに男が息をつくのを感じる。男はしかし、人妻の上半身に触れることはなかった。彼は再び人妻の美脚をターゲットにするように、その体を下方に動かした。

仰向けになった江利子の脚は、依然きつく閉じられている。その隙間に差し込まれた男の指先が動き始め、先刻の心地よさを一気に引き出していく。

執拗に指先を動かし続け、くすぐっていくうちに、人妻の両脚の隙間が僅かに広がり始めていることに男は気づく。指先の責めを繰り返しながら、男は初めてそこに力を込めていく。

「待ってください・・・・・・」
不意を突かれたことを告白するように、江利子が言葉を発した。その人妻の脚の隙間に深々と指先を挿入し、そこに愛撫を与えながら、男はゆっくり、力強く開いていく。

人妻の美脚を折り曲げ、両膝を布団の上で立てる。なまめかしく光る両脚がこれほどに長く魅惑的だったことを思い出すように、男はゆっくりと撫で、更に大胆に広げていく。

人妻が必死に力を込めてくることを感じながら、男は内腿に何度も爪先を走らせた。そんな風に男が指先を肌の上で走らせ、愛撫を与えるうちに、人妻の抵抗の力が弱まっていく。

男の息吹が人妻の内腿に吹きかけられる。その舌先が僅かに人妻の美脚に触れる。唇を噛み締めながら、何かを待ち望むような気配を漂わせる人妻の脳裏に、あの夜の記憶が蘇る。

「奥さん、俺にこうされることを毎晩想像してたんだろう」
言葉を発した小野田が、江利子の熟れた腿に熱い接吻を与える。


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