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夫の秘密、或いは妻の秘め事(5)

2014 08 04
「やっぱり海なんて選んだのは間違いだったんじゃないのかな」
海岸線を走る車中でハンドルを握る夫は、この外出にまだ納得がいっていないようだった。

今度の週末、久しぶりに海にでも出かけない? そう提案したのは、希美子のほうだった。妻の意外な言葉に、夫は戸惑いを隠そうとはしなかった。

「どうしたんだ、いったい?」
「あなた、最近ずっと忙しいでしょう。それに、話だってほとんどできていないし」

「だからって、突然海だなんて」
「ほら、夏らしくて、いいかな、なんて。そんなイベント、もうすっかり疎遠になってしまったから」

その計画は、柴田に持ちかけられたものだった。一緒に海に行き、夫の様子を密かに観察する。どんな変化が起こるのかわからないが、ともかくそんな試みをしてみようと決めたのだった。

だが、希美子には別の感情もあった。いつしか距離ができてしまった夫との関係。だからこそ、夫は妻に秘めた欲情を抱くようになってしまったのかもしれない。

あの夜、夫のパソコンを密かに見てしまった後、希美子はそんな風に考え始めていた。私のせいなのかもしれない。それならば、私だけが夫を救うことができるはずだ。

かつて行っていたような週末のデート。そんなイベントを意図的に企画すれば、きっと2人の距離は縮まるだろう。柴田が持ち出した計画に対し、希美子は今、ただ純粋にそう感じていた。

週末も仕事が入っているという夫に、希美子は海に行くことを説得した。夫の消極的な態度が、希美子には寂しくもあったが、ある意味でそれはうれしくもあった。

妻が他人に何かされることを望む。夫が本当にそんな屈折した欲情を持っているのなら、たとえば妻と一緒に海に行くような機会は、願ってもないことではないのだろうか。

水着姿の妻が、他の男に見つめられる。そんなシチュエーションは、夫が覗き見していたと思われるサイトのどこかにも、あったような気がする。

それを積極的に望まない以上、夫の迷いはさして深刻なものではないのかもしれない。希美子はそう思いながら、その確信を得るためにも、週末を待ち望んだ。

完璧な夏空が広がる朝。ビーチにまで仕事を持ち込もうとする夫を遂に納得させ、希美子は一緒に海に向かった。目的のビーチは、恐らくは相当に賑わってるであろう、定番のスポットである。

「やっぱり混んでるよなあ。来なきゃよかったかも」
「まあそんなこと言わずに。たどり着けばきっと楽しいと思うわよ」

まだどこかで仕事のことを考えていそうな夫を、希美子はそんな風になだめた。やがて2人は何とか海岸近くの駐車場にスペースを確保し、無事に砂浜へたどり着いた。

「まだ11時前だというのに、凄いわね」
「これじゃあ、ろくに泳げないんじゃないのかな」

最近では海に遊びに行く人の数が急減していると、希美子はニュースで聞いた記憶があった。しかしそれを覆すように、長く続くビーチは、多くの家族連れ、若者で賑わっている。

夫と共に、希美子は声をかけられた海の家を利用することにした。二人で更衣室に向かい、水着に着替える。希美子は今日ここに持参した水着を見つめ、改めて戸惑いを感じた。

奥様、水着はできる限り大胆なものを選んでください・・・・・

それは、あのカフェテリアで柴田からもらったアドバイスだった。妻が別の男に興味をもたれ、何かをされるほどの状況に追い込まれる。そんな妻の姿を夫に現実に見てもらう。

それによって、自分の妄想の過ちに気付かせる。このビーチに来る目的がそれである以上、柴田は希美子に強く説いた。

「大胆な水着ですか?・・・・・」
「ええ。男性の誰もが思わず見つめてしまうような、そんな水着ですよ」

「そんな、恥かしいですわ・・・・・・・」
「まあ、奥様ならどんな水着姿でもきっと誰もが見とれてしまうかとは思いますが」

「まあ・・・・・・・・」
「失礼しました・・・・・・、ともかく、ご主人に真実を知ってもらうためにはできる限り」

「他の男性を誘惑するような水着にしろ、と」
「ええ」

別に、それほど過激な水着を持っているわけではない。結婚前後に何回か海に行ったときに身に着けた、ビキニタイプの水着、それも随分控えめなスタイルのものを持っているだけだ。

それでも希美子はかなり迷った。34歳の人妻が、賑わう真夏の砂浜で果たしてビキニの水着など身に着けるのだろうか。それを想像するだけで、希美子は頬が熱くなった。

だが、結局は希美子は柴田の説得を受け入れた。夫の迷いがどの程度のものなのか、早く実際に知りたい。そんな思いが希美子にこの日、久しぶりにビキニを着る決意を与えた。

20代の頃とスタイルはほとんど変わっていない。希美子はそれには自信があった。こうなれば、覚悟を決めるしかないわ。更衣室でそう言い聞かせ、希美子は裸体をその水着で隠した。

「お待たせ」
鼓動を高めながらも、希美子は夫の前で極力平静を装って水着姿を披露した。白い薄地のTシャツを上に着ているものの、濃い藍色のビキニに包まれた裸体が、下に透けて見えている。

「じゃあ行こうか」
ちらりと妻の姿に視線を投げた後、夫は特に何の反応もなく、そう声をかけた。

別に何とも思わないのかしら・・・・・・。安堵と寂しさの入り交ざった複雑な感情を抱きつつ、希美子は夫の後についていった。海の家の男性スタッフが、その後ろ姿をそっと見つめている。

混雑した砂浜を歩き、スペースが確保できそうな場所を探す。打ち寄せる波の音が繰り返し聞こえ、上空からは眩しい日差しが降り注ぐ。子供たちと若い女性たちの歓声が交錯する。

久しぶりに真夏を感じながら、希美子は夫の後を追った。実際に歩いてみると、まだかなりの空間がそこにはあった。やがて、二人はビーチチェアを揃って借りることにした。

「パラソルがあればいいんだけどな」
「そうね」

ビーチチェアを砂浜に並べ、二人はそこに落ち着くことにした。周囲には似たようにビーチチェアに寝そべるカップルの姿を中心に、若者の姿が多く見られた。

今日はメガネは外しているが、視力はそれほど悪いわけではない。希美子はその瞳をサングラスで隠し、夫にあわせるようにビーチチェアに横になった。

背後にある木々の影が僅かに二人を隠すが、それでも日差しの強さから逃げることはできない。すぐに汗ばんできた希美子を誘うように、繰り返し涼しげな波の音が耳に届く。

「あなた、寝ちゃうの?」
「うーん、しばらくここでのんびりするよ。何も考えずにっていうのもたまにはいいだろう?」

「そうね。じゃあ私、少し海に入ってこようかしら」
「ああ。気が向いたら俺も後から行くよ」

夫のことを観察しようという意志は、そのときの希美子にはまるでなかった。ただ単に、汗ばんできた肢体を海で冷やしたいと望んだだけだった。

ビーチチェアのそばに立ち上がり、希美子はサングラスを外した。少し迷いながらも、Tシャツを脱ぎ去る。ビキニ姿になった希美子は、サンダルを脱ぎ、素足で波打ち際に向かった。

160センチを超える長身で、スリムな肢体。十分なボリューム感を湛えた胸の膨らみが、形よくビキニを盛り上げている。つんと上を向いたヒップが、人妻の色香を濃厚に伝えている。

周囲の砂浜で寝そべっていた数人の若い男性グループが、さりげなく希美子の姿に視線を投げる。互いに目配せをしながら、歩いていく希美子の全身を値踏みするように見つめる。

「見ろよ、あの女」
「いい体してるねえ」

砂浜にいることが彼らを大胆にさせるのか、男たちは隠そうともせず、そんな声を交わしあう。希美子の耳にも、彼らが噂する声が届き、あらゆる角度から多くの男の視線を感じてしまう。

気のせいよ・・・・・、誰も私のことなんか見てなんかいないわ・・・・・・

そう言い聞かせながら、希美子は足首までを水に浸けた。想像以上に冷たい水を手ですくい、肢体を濡らしていく。すぐにその冷たさにも慣れ、希美子が心地よさを感じ始めたときだった。

「お姉さん、一緒に遊ばない?」
「えっ?」

振り向いた希美子のすぐ後方に、数人の若者たちがいた。大学生だろうか。先ほど砂浜で堂々と会話を交わしていた連中ではない。ビーチボールを持って、にやにやと笑っている。

希美子はとっさに夫の姿を見つめた。ビーチチェアに横になり、完全に寝入っている様子だ。


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Comment
いよいよ…
前回、やらせと気付かれないようにとか、危険をはらみなんて言ってましたが、いきなり飢えた狼の群れに、自分の魅力を無自覚な希美子さんを投げ入れてしまうとは。さぁ、希美子さんの体が目的のアブナイ男の子達に対し、ご主人は?次回以降が、楽しみです。
いいですね。
初めて感想を書きます。のんのん様の作品はどれもすばらしいですが、個人的にこの作品が一番興味深い作品になりそうですね。まだ明らかにされてませんが、奥様がどれだけのプランをゲーム感覚で承諾したかわかりませんが、ただ、エッチをするよりもこの展開にすごく興奮しますね。御主人を試すつもりで始めた事があげくのはてには奥様自身が快楽に身を委ねるのが楽しみになっていく姿を最後まで見届けたいです。最後は夫婦円満になることを祈って見届けさせて頂きます。水着姿見てみたいですね。続き楽しみにお待ちしております。頑張って下さい。

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