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夫の秘密、或いは妻の秘め事(16)

2014 09 12
「一緒にって、私の妻とでしょうか?」
座ったまま、そう答える夫、秀人の姿には、しかし、希美子が予想したような気配はなかった。妻が別の男にいじめられる姿を待望している、という気配のことだ・・・・・・。

「ええ。大変失礼かとは思いますが、是非奥様と、と思いまして」
そう語る紳士は、目の前に座る希美子の姿を見つめ続けている。まるで、その人妻の肉体の魅力をあらゆる角度から検証するかのように。

「実はお食事中からずっと気になっていたんです」
「えっ?」

背後に立つ男のことを、希美子は思わず見つめた。食事の間、この男に別のテーブルから見つめられていたと知るだけで、どういうわけか希美子は汗ばむような緊張を感じた。

「こちらの奥様とダンスをご一緒したら、さぞ絵になるだろうなって」
「絵になる、ですか?」

「ええ。奥様のようなスタイルの方が、このような場所でのダンスには一番はまるんです」
彼はそうつぶやきながら、広大なダンスホールに視線を投げた。希美子は気づく。そこで踊りに戯れるカップルの数が更に増えていること、そして、彼らの抱擁がより大胆になっていることに。

ゆっくりとした音楽に沿って、カップルたちはダンスを進めている。きつく手を握り合い、互いの肢体を密着させている。濃厚なキスを交わしながら、互いの肢体に手を這わせあう二人もいる。

「あいにく、私、踊ったことなんかないですので・・・・・・・」
希美子は、やんわりと男の提案を拒絶した。そして、目の前の夫が妻のそんな思いを察してくれることを願った。だが、ワインを僅かに飲んでから夫が口にした言葉は、そうではなかった。

「せっかくの機会だから、どうだい希美子、少し教えてもらえば」
「あなた・・・・・・・・、いいの?・・・・・・・・・」

夫の本音を探るように、希美子はそんな言葉を口にした。だが、それはまるで、本当は踊りたがっているが、夫の感情を懸念して遠慮している妻の言葉のように響いてしまった。

「俺は別に気にしないさ。希美子がもし踊ってもいいって思ってるんだったら」
「いえ、別に私は・・・・・・・・・」

「奥様、別に難しいことなんかありません。私がリードしてあげますから」
彼の白い麻のスーツが完璧なまでに澄んでいることに、希美子は気づく。目の前に伸ばされた彼の手を、希美子はもう、無視するわけにはいかなかった。

「じゃあ・・・・・・・、少しだけでしたら・・・・・・・・・・・」
「では参りましょうか、奥様」

彼に促されるまま、希美子はそこにある手に自分自身の手をそっと置いた。ゆっくりと立ち上がり、夫を見つめる。心配ないといった様子で、夫が軽くうなずく。

生バンドの重厚かつ繊細なメロディーが、フロアを満たしている。そこにいる何組ものカップルを避けながら、男は慣れた様子で奥に進んでいく。手をひかれ、希美子はただその後を追った。

「奥様、恥ずかしがることはありませんよ」
フロアの中に何本もの柱があり、全体の視界をところどころ遮っている。男が立ち止まったのは、1本の柱のそばに空いたスペースで、夫が座るテーブルからも確認できる場所だった。

「でも・・・・・・・、本当に私、踊ったことなんかないですから・・・・・・・・・・」
「思うがまま、あなたの本能に従えばいいんですよ、奥様」

意味深なことをささやきながら、男は希美子の瞳をそっと見つめた。長身の彼の視線から、希美子はなぜか逃げることができなかった。片手の指を絡めながら、二人の肢体が接近していく。

やがて、軽く腰が触れ合うまでの姿勢になった二人は、ゆっくりとしたペースで体を動かし始めた。慣れぬダンスに希美子は強く戸惑いながら、ハイヒールを動かしていくことに集中した。

彼の右手が、希美子の腰にそっと添えられている。人妻をエスコートする壮年の男性の優しさが、その手には溢れていた。希美子は彼に促されるまま、床を動いていった。

「奥様、嘘をおっしゃいましたね」
「えっ?」

「踊ったことなんかないなんて・・・・・・・」
「いえ、私、本当に・・・・・・・・・・」

「とても初めてとは思えません。実に素直に体を動かしていらっしゃる」
「そうでしょうか・・・・・・・」

耳元でささやいてくる男の低く通った声を聞きながら、希美子は体奥からワインの心地よい酔いが拡散してくるような気分になった。この会話が夫には聞こえていないことを、希美子は知る。

私たちが何かを話し合っていることは、テーブルにいる夫からもわかるはずだ。希美子は見られてはいけないものを目撃されてしまったような気分になりながら、夫の感情を想像した。

希美子は肢体を動かしながら、ちらりと夫の様子を見つめた。落ち着いた様子でテーブルに座り、手元の携帯電話を見つめている。仕事のメールでも確認しているようだった。

確かな安堵と同時に、希美子はまた、あてが外れたような気分も味わった。夫は本当に、あんな屈折した欲情の持ち主なのだろうか。希美子は再びそんな疑問を抱いた。

「ご主人のことが気になりますか?」
「い、いえ、大丈夫です・・・・・・・・・」

「こんなお綺麗な奥様をお持ちだと、ご主人も気が気じゃないでしょうね」
「そんな・・・・・・・」

「いろんな男性からアプローチをされるんじゃないですか、奥様」
「いえ・・・・・・、別にそんなことはありませんわ・・・・・・・・・」

「ダンスと同じですよ、奥様」
「えっ?」

「たまには一人の女性に戻り、本能に従って体を動かすことが大切です」
「・・・・・・・・・・」

腰に置かれた彼の指先に僅かな力が込められていることを、希美子は感じた。勿論、逃げることなどできない。希美子は彼の指先に次第に敏感さを増していきながら、ステップを踏み続けた。

黒色のワンピーススタイルのドレスは、人妻の官能的な肉体の曲線を存分にアピールするものだった。くびれた腰、盛りあったヒップの境目付近に、彼の手が置かれている。

その指先が少しずつ動き出したようだ。初め、希美子は気のせいかと感じた。だが、そうではなかった。彼の指が確かな意志を持って、希美子の腰を優しげに愛撫し始めた。

最初の瞬間から、希美子は危い予感を抱いた。彼の指先は、希美子にあの海岸でのマッサージをすぐに想起させた。僅かな愛撫で、希美子は全身に震えるような感触を覚え始める。

「すみません・・・・・・・・」
彼の胸板にささやくように、希美子は懇願した。それだけで、男は人妻の困惑を察してくれるのだろう。希美子はそう信じたが、彼はその指先の行為を止めようとはしなかった。

それどころか、少しずつその指を下方に移動させていった。希美子の丸く張り出したヒップに大胆に右手を置き、男はドレス越しに穏やかな愛撫を与え始めた。

「いけませんわ、主人が・・・・・・・・・・・」
再び彼の胸元を見つめたまま、希美子は消え入りそうな声でささやいた。

「奥様、ご主人は気づいていないようですよ」
「でも・・・・・・・・・」

「奥様の女としての本能が何を欲しているのか、私はそれをお食事のときから感じていたんです」
「おっしゃっていることが・・・・・・・・・・」

「奥様、このお体が知らないことは、まだたくさんあるんじゃないでしょうか・・・・・・・・」
希美子の美尻を愛撫する彼の手つきに、卑猥なイメージはまるでなかった。にもかかわらず、希美子はその指先から、痺れるような快楽の気配を感じ始めていた。

これ以上動かされたら・・・・・・・・・。ヒップを撫でるようにいじめられているだけでこれほどに焦りを感じている自分に、希美子は羞恥の熱を感じた。

女としての本能。男のささやいた言葉が、希美子の心の奥を試すように刺してくる。いつしか、二人の腰がきつく密着していく。ドレス下に盛り上がった希美子の胸元も、彼の体と一つになる。

きつく抱きしめられた格好で、希美子は高貴なダンスを彼と続けた。乳房が彼の胸板に刺激されるのを避けるように、希美子はその横顔を男の上半身にそっと置いた。

ヒップへの責めが加速していく。人妻の肉体の全てを確認するように、たっぷりと希美子のお尻を撫でまわす。息を懸命に整えながら、希美子はそっと目を閉じた。

何度も何度も、男の手が希美子の美尻の上で弧を描く。希美子はしばしその行為に溺れるように、瞳を閉じ続けた。男ときつく繋ぎ合っている手に、希美子は汗が浮かんでいることを知る。

ドレス下の下着を探るように、男の指先が動いてくる。かすかに唇を噛みながらも、希美子は頬を彼の胸板に重ね、全身を委ねた。彼の指先が、希美子のヒップの割れ目を這ってくる。

「そこはいやっ・・・・・・・・・・」
希美子のささやきに答えることなく、彼の指先はそこにある深々としたクレパスに侵入を試みる。黒色のドレスが、人妻の美しいヒップをかたどるように、くっきりとした曲線を描いていく。

お尻の谷間をくすぐられるような感触が、希美子にかつて知らなかった心地よさを与え始めた。脚が震え、希美子は踊るどころか、立っていることさえ難しいような気配を感じた。

「いけません・・・・・・、これ以上は・・・・・・・・・」
懇願するように、希美子は彼の胸板に置き続けてきた顔をあげ、彼の瞳を見つめた。

視線を絡めながら、彼は希美子を巧みにリードし、フロアを移動していく。1本の巨大な柱の裏手に回るように動き、やがて人妻の夫が座るテーブルからは、完全な死角に入った。

そして、男は希美子にそっと唇を重ねた。

「あっ・・・・・・・・・・・」
希美子は戸惑いの息を漏らしながらも、どうすることもできなかった。懸命に唇を硬く閉ざしたまま、そのままの格好で背後にある柱に、希美子は背中を密着するようにもたれかかった。

彼の手が、希美子の豊かな胸元に置かれた。希美子は確かな抵抗を示すように、彼の手を退ける。彼は無理な行為は要求せず、極めて穏やかなキスを求め続けた。

周囲に踊る何組ものカップル以外に、希美子は至近距離に誰かいることを感じた。食事の最中、ワインを何回か注いでくれた白服の若い給仕がそこに立っていることに、希美子は気づいた。

希美子のダンスのパートナーである男が、そこにいる給仕に視線を投げた。


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Comment
官能の虜
希美子さんは、完全に官能の世界に取り込まれてしまったようです。夫の欲情とは、全く別の女としての欲情に。さて、二人から責められていきそうですが、どんな痴態を見せてくれるんでしょう。

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