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刻み込まれた快感(7)

2015 03 13
早川の言葉の意味に、朱里はすぐには気づかないようだった。

「見てはいけないものって、今日の練習に支障が出るようなものでも見たんですか」
一瞬顔によぎった緊張をすぐに消し去り、朱里はいつもと変わらぬ様子で明るく言った。

早川は硯を前にし、正座をしたまま朱里を見つめていた。朱里もまた、少し離れた先で姿勢を正して座っている。彼のどこか異常な雰囲気に、人妻は不思議そうに言葉を続けた。

「どうしたの、早川さん? 今日は少し変ですよ」
早川は、それを言おうかどうか、迷っていた。

だが、そこにいる彼は、過去の彼とは既に違っていた。あの光景を目にしてしまった日から、彼は人妻書道講師への欲情の存在に気付いた。その人妻が、すぐ目の前にいるのだ。

夏休みの夕刻の喧騒が、どこからともなく聞こえてくる。セミの鳴き声と子供たちが走りまわる歓声。閉め切った和室の中には、しかし、妖しい静寂が漂い始めていた。

「僕が見たのは、朱里先生です・・・・・・・・」
「私、を?・・・・・・・・」

朱里の表情に、先刻よりも濃厚な緊張が走ったように見えた。正座をする肢体を微動だにせず、完璧に落ち着き払った雰囲気とは裏腹に、美しい瞳は揺れ始めていた。

「私をどこで見たの、早川さん?」
朱里は、それが大した意味を持つものではないことを願うように訊いた。

かすかに狼狽した様子の人妻は、いつも以上に美しく見えた。スリムな肢体になまめかしく盛り上がった胸元。白く光る首筋には、細い銀色のネックレスが輝いている。

黒髪は清楚に整えられ、雌猫を思わせる瞳が書道を極めたことを伝えるように、凛とした光を放っている。手首はどこまでも細く、熟れた太腿の上に置かれている。

座布団の上で正座をする人妻の両脚は、男を誘うように透き通った肌をたたえ、細く、長くスカートの中から伸びている。早川は、朱里の肉体を観察するように見つめた。

「ねえ、早川さんってば」
朱里が再びふざけたように声を発したときだった。

「この家で朱里先生を見たんです」
「この家で? だって、それは」
「台所です」

朱里の瞳が、戸惑いと驚きで固まった。早川のことを射るように見つめたまま。

「早川さん、あなた・・・・・・・・・」
「すみません、別に見たくて見たわけじゃないんです。朱里先生、これだけは信じてください」

「・・・・・・・・・・・」
「あの日、外山君にお茶を飲ませにいった先生の戻りがあまりに遅かったものですから」

二人の間に沈黙が漂った。朱里は何かを認めるのをこわがるように、なおも質問を投げた。

「ねえ、早川さん、私と外山君の、いったい何を見たっていうの?」

早川がそれを言葉にすることはなかった。黙ってスマートフォンを取り出し、記録した映像を流した。朱里はそれを食い入るように見つめ、そして、顔を伏せた。

「あなたがそんな方だとは思わなかった・・・・・・」
視線を逸らしたまま、朱里は冷たくそう言い放った。

もっともな指摘だ。自分だってそんな気分なんです、先生。善人のままでいるべきか、気づかぬままに体奥に隠し続けていた牡の本能を露わにすべきか、早川は迷った。

だが、人妻の官能的とさえいえそうな肉体を見つめているうちに、決意は固まった。

「朱里先生、僕だってこんな趣味はありません。ただ、気づいてしまったんです」
「何に気付いたっていうの・・・・・・・・・」

「いつの間にか、朱里先生を自分が愛してしまっていたことに」
「早川さん、あなた・・・・・・・・・・・・・」

「わかってます。朱里先生は人妻だってことぐらい。でも、そんなの関係ないくらいに激しく」
「・・・・・・・・・・・・・・」

早川は、自分ではない誰かが話しているような気分になっていた。自分が次に何を言い出すのか、彼には全く想像できなかった。朱里もまた、同じだった。

「先生が好きだから、僕、この映像は消去します」
「えっ? 本当なのね?」

朱里が顔をあげて、早川をみつめた。

「ただし、僕の願いを一つだけ叶えてください」
「願い?」

たった今、愛の告白をした男が胸に抱く願望を、朱里は想像せずにはいられないようだった。美しい顔をこわばらせたまま、朱里は彼の言葉を待った。

「先生に習字を教えてみたいんです」


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Comment
お疲れさまですp(^-^)q
はやかわ君の空気が重いです。朱里せんせいがその気にならないよ(^^;)
消去を交換条件に取り引きするなんて嫌な感じです(-。-)y-゚゚゚ひとりで励んでたらいいのに(^^ゞ
早川が、己の筆を使って、朱里先生の体に教え込む習字レッスン。存分に陵辱される朱里先生の痴態が、楽しみですね。
次回も楽しみです
スマホの動画を見せるなんて最低です。中学生との行為は彼女自身が望んだ出来事ではないのに追い詰めるなんて、デリカシーがないし卑怯なやり方は少し残念です。
『習字を教える』なんて生意気なことを言ってますね。お手並み拝見ですm(__)m

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