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刻み込まれた快感(10)

2015 04 03
その夜、朱里は眠ることができなかった。

目を閉じるだけで、夕刻、彼に与えられた感触が全身によみがえり、肢体が熱くなった。夫の横で何度も寝返りを打ちながら、朱里は深い戸惑いに翻弄されていた。

あんな風になったことはなかった。酒に酔ったわけでもないし、何か薬を飲まされたわけでもない。最初は、はっきりとした意識、そして理性を持っていたはずなのだ。

だが、筆先の妙な感触が、37歳の人妻を覚醒させた。

そう、あれは確かに性的な気配をはらんだ体験だった。

いやらしい・・・・・・・・・・

夫との行為がめっきりすくなくなっても、朱里はまるで気にしなかった。自分はそんなものには関心はないし、そんな女性になりたくもなかった。

しかし、今日の夕方、私は間違いなく、性的な快感に溺れかけようとしていた。

いえ、完全に溺れていたわ、あなたは・・・・・・・。夫以外の男性の前で・・・・・・・・・。

私の肉体は、自分でも戸惑うほどに変化していた。それを制御できないまま、あの後、私、一人シャワー室であんな淫らなことを、生まれて初めて・・・・・・・・。

いけないわ、忘れなさい・・・・・。ベッドの中で、朱里は何度もそう繰り返したが、逆効果だった。肢体はますます熱を帯び、震えが何度も全身を走り抜けた。

「あなた・・・・・・・・」
朱里は思わず、隣で寝入る夫に声をかけた。

そして、自分からその美しい肉体を夫にすり寄せていった。新婚当時でもあるまいし、そんな行為を朱里はもう何年もしたことなどなかった。

「どうした・・・・・・・、こんな遅くに・・・・・・・・・・・・」
完全に寝ぼけた状態で、夫が朱里に声をかけた。

「ねえ・・・・・・・、眠れないの、今夜は・・・・・・・・・・・・・・」
朱里にとって、それは大胆すぎるささやきだった。夫には妻が何を欲しているのか、確かに伝わったはずだ。

しかし、その答えは妻を満たしてくれるものではなかった。

「すまん、今日は駄目だよ、疲れてるから」
寝言の続きのようにそうつぶやくと、夫は朱里に背中を見せた。

羞恥心と満たされぬ肉体だけを、朱里は抱えた。

あの不可思議で、妖しげな感触を、もう一度だけ与えられたい。肉体がそう叫んでいることを、朱里は感じた。なおもしばらくの間、朱里はベッドの中で困惑し続けた。

あなた、何を考えているの・・・・・・・・

軽蔑するようなそんな声を聞きながら、朱里はそっとベッドから滑り出した。そして、寝室を出て、深夜の階段を静かに降りて行った。

書道教室を開いている和室に忍び込む。照明を暗くしたまま、朱里は「それ」を探した。

見つけたものを握りしめ、壁際に座る。

瞳を閉じ、僅かにパジャマの胸元を開く。

「それ」の先端を、自分自身で動かし、刺激を与え始める。

「あっ・・・・・・・・・・」

数時間前の感触を思い出したように、朱里はかすかに唇を開いた。

次第に大胆に乳房が露わになっていく。右手で握りしめたものを震わせ、左手で膨らみをそっと揉みしだく。

彼の姿を想像する。

背後から時間をかけてたっぷりといじめられる自分を想像する。

いやっ・・・・・・・・・

シャツを引き裂かれ、ブラを奪い去られる自分を想像する。

やめてっ・・・・・・・・・・・・・・・

彼に押し倒され、唇を奪われる自分を想像する。

駄目っ、主人が・・・・・・・・・・

瞳を閉じたまま、朱里はそこで1時間以上の時を過ごした。

ハアハアハア・・・・・・・・・・

そして、朱里は悟った。

自分自身の行為では、あの感触を完全に再現することができないことを。

ここにはもう来ないといった、早川の言葉が、朱里の脳裏にこだまする。


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Comment
早川の行為で、今まで隠されていた欲情に気付いてしまった朱里先生。早川へ、接触を試みていくんでしょうか?次回、楽しみにしてます!
寝とられる側の描写があると大変うれしいです。

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