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刻み込まれた快感(34)

2015 08 25
夏が終わろうとしている。

頭上に広がる星空にも、季節の変化を告げるような気配があった。

新月の夜。闇は深い。彼女の心のように。

日中の熱の気配を僅かにはらんだアスファルトを、今、一人の人妻が歩いていた。

ハイヒールの音が、周囲に彼女の存在を訴えるように響いている。

星空に、或いはそこにある静寂にも、人妻が気づく様子はなかった。

自分がどこに向かって歩いているのか、ただそれだけには確信があるようだった。

硬い表情だが、美貌を備えた顔つきだけに、妙に男をそそるような気配がある。

膝上のミニスカートから、見事な美脚がすらりと伸びている。

半そでのシャツは、意外に豊満な肢体の曲線をくっきりと描き出している。

姿勢よくまっすぐに歩いていく人妻は、シャツの下の肌に僅かな汗が浮かんでいるのを感じていた。

なぜ、このような挑発的な服装を自分が選んだのか、柏木朱里は己の判断の意味が理解できなかった。

今夜、若い大学生が住むアパートの部屋を訪れる。

童貞だというその若者に、性の手ほどきをするために。

自分の体を、彼に抱かせてやるのだ。

勿論、夫は知らない。

彼との約束の時間、午後8時が迫って来たとき、朱里はこの服装を無意識に選んだ。

ためらいはない。若者に全てを教えてやる覚悟が、朱里にはあった。

自分に嘘をつき続けてきたこの5年間。

結婚生活、いや、人生なんて、ある意味では永遠に嘘をつきながら、歩んでいくものかもしれない。

人は皆、それに耐えているのかしら・・・・・。

駄目、私にはもう、できない。

今夜、全ての我慢を解放し、私は素直になる。

私自身に戻る。

快楽の生贄と化して、この肉体を差し出すのだ・・・・・・。

「柏木です」

ドアの前で、朱里は小さな、だが、澄んだ声でそう言った。

43歳の人妻は、少女のように鼓動を高めていた。

昭和を思わせるようなアパートの暗い屋外廊下に立ったまま、唇を噛み、朱里は瞳を閉じた。

「先生、来てくれたんですね」

それは、確かに外山の声だった。

だが、手首を掴まれ、素早く室内に引きずり込まれた朱里は、彼の姿を確認する余裕を与えられなかった。

暗闇に包まれた室内。瞬時に事は運ばれた。

気づいたとき、朱里は5年前と同じように、目隠しを施されていた。

マットレスのような感触のものが足元にある。

だが、朱里はそこに投げ出されたわけではなかった。

背後に冷たい壁を感じたまま、朱里は立つことを強要された。

両手を上方に掲げ、手首を束ねられた形で縛られている。

肢体をそんな風に拘束された後、妙な沈黙が訪れた。

目隠しをしていても、部屋の照明が消されたままであることはわかった。

誰かがいる。

興奮を隠せないような男の息遣いが、朱里の耳に届く。

1人・・・・・、いや・・・・・・・・。

「ほんとに朱里先生だ」

そう言ったのは、外山の声ではなかった。

「全然変わってない。むしろ、更に色っぽくなった」
「人妻・・・・。この体が誰かに毎晩抱かれてるかと思うと・・・・」
「教室に行ってた時、俺、1回だけ見たことあるよ、朱里先生の旦那」

皆、違う声だ。

闇の中、沈黙を貫いたまま、朱里は悟った。

書道教室でのかつての教え子たちに、縛りあげられた自分が見つめられているのだ、と。

「早速始めよう」

初めて、外山の声が響いた。

「まずはシャツを剥ぎ取る」

一人の若者が接近してくるのがわかる。

彼の指先が、シャツのボタンにかかる。

朱里は、なおも沈黙を貫いた。

抵抗はしない。

彼の好きなようにさせてやる。

「見ろよ、この胸。シャツを破らんばかりのサイズ」

ゆっくりボタンが外され、シャツがはだけていく。

闇に溶け込むような黒色のブラ。

下着に包まれた人妻の豊かなバストが、くっきりと露わになっていく。

気づかれないように、朱里はそっと唇を噛んだ。

複数の若者たちが、人妻の肉体に群がってきた。


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