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LOVE47(8)

2015 10 13
「波多野外来整形クリニック」

理穂は、自宅に隣接するその看板を見つめることもなく、急ぎ足で駅に向かった。

患者の受付開始は午前8時半だ。

だが、入口付近には既に何名かの高齢者が並び、朝陽のもとで会話を弾ませていた。

院内には既に何人かの看護師が出勤している。

「木崎さん・・・・・、あら、どこかしら?」
先輩格の女性看護師が、あるスタッフを探している。

同僚たちが、意味深な表情でその視線を奥の部屋に流し、声を発した彼女を見つめる。

院長室のドアは、固く閉ざされている。

「身体検査、ですか・・・・・・」
「みたいですね」

「彼女、初めて?」
「さあ。どうでしょうね」

女性ばかりの看護師は、どういうわけか若く、美形のタイプが揃っていた。

閉ざされた院長室のドアを見つめる彼女たちの様子には、微妙な違いがあった。

笑みを浮かべている者もいれば、やや表情をこわばらせている者もいる。

皆、その向こう側で何が行われているのかわかっている。

そこにいる誰もが、一度はそこにいたことがある。

「菜穂子君、だったね」
「はい」

先週ここで働き始めたばかりのその女性看護師は、25歳の誕生日を迎えたばかりだった。

「身長161センチ、体重46キロ、か」
「えっ・・・・」

院長室の奥にある巨大な机に、この整形外科医院の責任者が座っている。

彼が手にしている書類が自分自身に関するものであることを知り、木崎菜穂子は戸惑ったように声を漏らした。

机からやや離れた場所で、菜穂子は白衣姿で立っている。

今朝、この部屋になぜ自分だけが呼ばれたのか、菜穂子はまだぼんやりとしか知らない。

先輩看護師たちに聞いても、皆、おかしそうに笑ってこう言うだけだった。

「身体検査よ」
「身体検査、ですか?」

「ここで働く看護師は、全員先生に直接身体検査をしてもらうの」
「それって・・・」

「ここでほんとに勤まるのかどうか、テストされるのよ」
「テスト?」

「ここ、お給料いいでしょう? だからね、先生も本当に有能な方だけに残ってもらいたいのよ」
「じゃあ、採用取り消しになる可能性もあるんでしょうか・・・・・」

「それはあなた次第よ」

結局、菜穂子には身体検査の意味がわからなかった。

「25歳、独身かな?」
「は、はい・・・・」

「彼氏は?」
「彼、ですか?・・・・・」
「そう。彼はいるのかな」

直立不動のまま、菜穂子は院長の顔を見つめた。

セクハラまがいのその質問に、しかし、答えないという選択肢はなかった。菜穂子はどうしても、この仕事を手放すわけにはいかなかった。

「今はいません」
「昔はいたの?」

「はい。でも、1年位前に別れました」
「それからはずっとフリー?」

「はい」

立ち上がった院長の身長が随分高いことを、菜穂子は改めて知った。

院長が今年50歳になるということを、菜穂子は先輩から何となく聞いている。

その容貌は若々しく、老いの気配はまるでなかった。

そして、ハンサムだった。それは、菜穂子がここに面接で訪れた時から感じていることでもあった。

至近距離に立った院長が、菜穂子の背後にまわりこむように、ゆっくりと歩く。

前を見たまま、菜穂子は緊張と共に、動くことができなかった。

「こんなに美人なのに1年間も彼がいないなんて、嘘だろう」
耳元でふいにささやかれ、菜穂子は全身に妙な震えが走るのを感じた。

彼の手が、ヒップの上に置かれた。

「先生・・・・」
「動かないで」

後方からゆっくりとヒップを撫でられ、菜穂子は唇を噛んだ。

「いけません・・・・・・・」

だが、腕を動かすこともなく、彼女は院長の「検査」を続けさせた。

彼の手が、菜穂子の膨らんだ胸元をそっと包む。

「先生・・・・・・」
菜穂子は、息を吐くようなか細い声を再び漏らした。

「Bカップかな?」
「・・・・・」
「男性にはこれぐらいのサイズのほうが好きな連中も多い」
「・・・・・」
「私もその一人だ」

両手で情熱的に乳房を愛撫されるにつれ、菜穂子は白衣が乱れていくことを知った。

巧みな手つきで全身を触られ、乳房に愛撫を与えられていくうちに、菜穂子はいつしか背後の男にしなだれかかるような格好になっていた。

「先生、もう受付が・・・・・・・」
「まだ30分はあるさ」
「誰か来てしまいます・・・・・」
「ここには誰も入ってはこれない。たとえ、妻であってもね」

後方を向かされた菜穂子は、波多野直弘に唇を吸われた。

全てを忘れ、ただここでの職を維持することだけを考える。

声をあげ、この医師の行為を糾弾する代わりに、木崎菜穂子は自分から舌先を絡めていった。


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