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LOVE47(12)

2015 10 27
「あいつはこんなことしてくれないんじゃないですか、奥さん」
人妻のなまめかしく盛り上がった胸元をシャツ越しに愛撫しながら、男は自分の膝を開くように姿勢を変えた。

その上に座っていた葉子は体勢を崩し、背後にいる彼の体に肢体を預けるようにもたれかかっていく。

「佐伯さん、いけませんわ・・・・」
47歳の人妻は、再びささやくような声で抵抗の言葉を繰り返した。

激しく抵抗しないのは、男が言う通り、自分に負い目があるからなのだろうか。葉子は、彼に好きに肢体を愛撫させながら、そんなことを胸の内で思った。

夫、直弘と佐伯は同い年であり、子供のころからの付き合いだった。

学生時代、いったんは途切れた二人の関係だったが、一方が整形外科医として、そしてもう一方が会計士としての道を歩み始めたころ、交際は再開された。

そして、それが起こった。

もう10年以上も前のことになる。

ある事故のため、患者として直弘のクリニックにやってきた佐伯。

その際の初期処置に誤りがあり、原因は特定できないものの、佐伯の左足にわずかなしびれが残ることとなった。

裁判で争うこともなく、直弘はクリニックとしての過失を認め、佐伯との示談に応じた。

二人がどのような条件で和解合意に達したのか、それは葉子も知らない。

だが、それ以来、直弘が佐伯に強い姿勢で臨むことができなくなったのは事実だった。

「グアムにはいいゴルフコースがたくさんありましてね」
人妻のシャツのボタンをはずしながら、背後から佐伯がささやいてくる。

「海越えのショートなんて、日本ではお目にかかれないようなホールを備えたコースもあるんですよ」
「佐伯さん、それ以上はいけません・・・・・・・・」

彼の話を無視し、葉子は前を向いたまま、か細い声でその行為を制しようと試みる。

「でもね、やはり足が痛くなりましてねえ」
「・・・・・・・」
「彼女とのゴルフも結局できずじまいですよ」

この男は、意図的にそんなことを喋っている。私から抵抗の意志を完全に奪うために。葉子はそう思うと、やはり勝気な本音を隠さずにはいられなかった。

「佐伯さん、主人のことは私には関係ありませんわ」
「奥さん、別に俺は波多野のことを言っているわけじゃないですよ」

「そうでしょうか・・・・・・・」
「それに、本当に関係ないと言い切れるんですか、奥さん」

「・・・・・・・」
「夫の不始末を少しでもフォローするのが妻の役目。違いますかね」

「勝手なことを言わないでください・・・・・・」
「相変わらずいい胸をしてる」

ボタンを数個外され、葉子のシャツがはだけていく。そこに生じた隙間から、佐伯の指先が潜り込む。

ブラに彼の指が触れるのを感じる。

直弘と結婚した当初から、葉子は佐伯のことが好きになれなかった。

彼の視線には、明らかに好色な気配が存在していた。

そして、夫がいない場面で、彼はあからさまに迫ってきたりもした。

勿論、葉子は彼に何も許したことはない。

だが、あの医療ミス騒動の後、葉子は僅かにその防御の柵を低くした。

過去、10年程度の間に、こんな風にこの男に服の上から肢体を撫でられ、揉みしだかれたことが、数回あっただろうか。

どれもそれだけで終わらせることができたが、年月を重ねるにつれて、葉子は彼の自分自身への欲情が更に高まってくることを感じていた。

完全に佐伯のふところの中に入ってしまうような格好で、葉子は今、ブラの上から彼に好きなように胸をいじめられている。

「波多野は忙しいから、もうこんなことは奥さんにはしてくれないんじゃないのかな」
意味深に笑いながら、佐伯の口が葉子の首筋に触れる。

「馬鹿なやつですよ。若い女ばかり追いかけまわして。目の前にこんないい女がいるのに」
乳房を愛撫する彼の手つきに、欲情が一層深くこめられていく。同時に、情熱的に人妻のうなじに吸い付いていく。

懸命に冷静さを維持しようとする葉子。

だが、佐伯の言う通り、もうずいぶん長い間、夫にはこんな行為をされていない。

「奥さんが乱れる姿が見たいんですよ、俺は」
「そんなこと、あるわけないですわ」
「気のせいですかね。お体が苦しそうですが」
「別に・・・・・、何も感じてませんから・・・・・・・」

47歳の自分の肉体が、意外に敏感なことに、葉子は腹立たしささえ感じてしまう。

体奥から、紛れもない熱が湧き上がってくる。

僅かな息苦しさ、そして、徐々に高鳴ってく鼓動。

「佐伯さん、もう、これ以上は・・・・・・」
自分自身の声が妙に色っぽいことに、葉子は戸惑いを覚える。

「いつになったら最後までさせてくれるんですか、奥さん」
「そんなこと・・・・・・、できるわけがありませんわ・・・・・・・」
「じゃあ、裸だけでも一度見せてくださいよ」
「佐伯さん、私は人妻ですよ・・・・」
「波多野がいいって言ったらどうしますか、奥さん」

返事をすることができなかった。

夫はもう、自分のことなどどうでもいいのだろう。葉子自身、そう感じていた。

かと言って、まさか、この男に走るわけにはいかない。

「後ろを向いて、奥さん」
「いやです・・・・・」
「キスぐらいいいでしょう」

佐伯には、まだ唇を奪われたこともない。

今夜の彼のいつも以上に強い意志に、葉子は焦りを感じ始めていた。

「主人が戻ってきます」
「だからあいつも許してくれるって言ってるでしょう。ほら、こっち向いて」
「いやっ・・・・・・・、いやですっ・・・・・・・・」
  
片手で乳房を揉みしだきながら、佐伯は葉子の顔を強引に後方に向かせようとする。唇を噛みしめ、懸命に前を向き続ける葉子。

そのとき、玄関から音が聞こえた。

まるで、この応接にいる二人にはっきりとその音を聞かせるかのような、激しくドアを閉める音が。

「戻ってきましたわ」
葉子は、一瞬力を弱めた佐伯の体のそばから何とか立ち上がり、素早くシャツの乱れを直そうとした。

そのとき、直弘が応接のドアを開けた。

葉子は夫に背を向けるようにして懸命に服を整えると、そのまま言葉を発することなく、足早に応接を出た。

夫もまた、何も声をかけることはなかった。

佐伯だけが、椅子に深々と座り続け、おかしそうな視線で人妻が辞去するのを見送っている。

葉子は感じた。

夫はここで妻が何をされていたのか知っている。

いや、彼にそれをさせるために、自分がしばらくいなくなったのだ、と。

屈辱に包まれたまま、葉子はしばらくの間、閉じた応接のドアのこちら側で立ち続けた。

室内から佐伯の声が聞こえてくる。

「これが新しく入った女かい」
「なかなか上物だろう」

直弘が答える。

「波多野、お前、もう手を付けたのか?」
「まさか。まずはお前に紹介しないとと思ってな」
「いい体してそうじゃないか。今度の旅行には彼女を連れていくとするか」

ここは私がいる場所じゃない。47歳。これから先、ずっと私が居続ける場所じゃない・・・・。

葉子は、そう思わずにはいられなかった。


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