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LOVE47(21)

2015 12 23
逢瀬が露見することはなかった。

年が明けてしばらくの後、葉子のもとに彼のメッセージが届いた。

「また会えますか」

もちろん、ためらいはあった。

自分は人妻。

夫、そして娘がいる立場なのだ。

だが、本当に会うつもりがないのなら、あの朝、携帯の番号を彼に教えるような真似はしなかったに違いない。

もう気づかぬふりなんて、しない・・・・・・・。

葉子は、自らの欲望に素直に生きることにした。

イコール、それは家族を裏切ることになる。

必ず、その罪を償わねばならない時がやってくるに違いない。

その覚悟は、しかし、既に葉子にはあった。

妻を過去から裏切り続けている夫は、そんな覚悟など持ち合わせてはいないのだろう。

47年間生きてきたなかで、葉子はついに目が覚めたような気分だった。

逢瀬の日、夕刻から出かける妻に、夫は何の関心も抱かず、言葉をかけることもなかった。

むしろ、女性看護師たちと過ごす時間が増えたことを、彼は露骨に喜んでいた。

だが、娘は少し違った。

夜に一人で外出することなど過去にほとんどなかった母親が、月に数回のペースで、夜の街に出かけるようになったのだ。

その事実を、葉子の娘、理穂が見逃すことはなかった。

「ママ、最近いいことあった?」

「えっ?」

2月のある朝、玄関先で出勤前の娘に突然そう聞かれ、47歳の母親は言葉に詰まった。

「別に・・・・。いいことなんかないわよ」

「ふーん、そうかなあ。最近、何か表情が明るくない?」

「失礼ね、昔からママはこんな風に明るいでしょう」

「いや、そうじゃなくてさ、なんていうか・・・・・、そう、若返った?」

「こら」

「ふふふ・・・、じゃなかったら、ママ、恋でもしてるの?」

「まさか・・・・・」

葉子は、戸惑いを隠すことができなかった。娘にこんな風に聞かれることを、想定もしていなかった。少女のように顔を赤らめてしまう自分を、葉子は感じた。

「えっ、まじで? ママもやるなあ」

「ちょっと、変なこと言わないでよ、理穂」

「いいじゃない。パパは好き勝手やってるんだから。私、前から言ってるでしょう。ママ、年の割にはきれいなんだから、もっと楽しめばいいのにって」

「年の割って表現、ひっかかるわね」

「最近、たまに出かけてるじゃない」

「あれは、学生時代の友達と会ってるだけ。ほら、年末のコンサートで会ったって言ってたでしょう、ママ。そこからどんどん古いネットワークが繋がってね」

「そうか・・・・、そういえばそうね・・・・・・」

「な、何よ・・・・・・」

「あのコンサートの夜から、ママ、少し変わったわよね。やっぱり、男の人と再会したんだ、あの夜」

「理穂、いい加減にしなさい。だから、そんなんじゃ・・・・」

なかなか玄関のドアを開けない娘に、葉子はプレッシャーをかけるように言った。そして、強引に話題を変えた。

「それより理穂、あなたのほうこそどうなのよ」

葉子は、依然として娘が誰かと付き合っているらしい、ということしか知らなかった。娘から、それについて告白されたり、相談されたりしたことは、一度もない。

「私? 私は、さあ、どうかしらね。いけない、長話しちゃったわね。じゃ、行ってくるね!」

「ちょっと、理穂!」

母親に振り向くことなく、理穂は冬の朝の道を走って駅へと向かった。

娘が年配の妙な男に引っかかってなければいいいけど・・・・・・。

葉子は、理穂の交際相手のことを想像すると、いつも妙な胸騒ぎを感じている。

娘が出勤したあとの自宅は、自分が孤独であることをいつも教えてくれる。

夫は今朝も、早々にクリニックに姿を消している。

一人になった葉子は、再び「彼」のことを考えた。

逢瀬を重ねるたびに、互いを求めあう感情は高まる一方だった。

目立たぬ場所のホテルの一室で、葉子は彼に激しく抱かれ、奔放に声をあげた。

「あっ・・・・・・・・、ああっ、いいっ・・・・・・・・・」

彼は、やはり、女性経験が少ないようだった。

葉子もまた、別に豊富な経験があるわけではない。

しかし、彼女は彼に大人の技巧を手ほどきするように、ベッド上で振る舞った。

「そう・・・・・・・、そんな風に・・・・・・・・・、もっと激しくっ・・・・・・・・・・・・」

自分がそんなことをする女であることを、葉子は初めて知った。

葉子は感じていた。

抱かれるたびに、彼の熟していく技巧に溺れ始めている自分を・・・・・・・。

「また会えますか」

行為の後、濡れた体をシーツにくるみ、二人はきつく抱き合った。

指を絡めながら、彼がそうささやく時、葉子はいつもこう答えた。

「連絡して」

いつの日か訪れる崩壊の瞬間を予感しながら・・・・。


(↑クリック、更新の励みです。凄く嬉しいです。次回更新、12月25日クリスマスの予定です)
Comment
No title
ブログ再開ですか。
不安は払拭できたのでしょうか?
頑張ってください。

さて、この物語のこれまでのSEX描写をあっさり書いているのは、”本行為”の序章でしょうか!? やはり佐伯との濃厚なSEXがあるのでしょうね? 旦那にのぞかれながら・・・
期待しています。

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