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LOVE47(36)

2016 02 12
彼からの連絡はなかった。

しばらくは会わないほうがいいかもしれない。旅行の後、そんな風に確認しあい、それぞれの生活に戻った二人。

彼の仕事が多忙になったことも理由の一つだった。

だが、状況は一変した。

もはや、一時的な停止ではない。

永遠に彼からの連絡はないのだ。

葉子は、彼がそう決断したことを、確信していた。そして、自分がそれを受け入れなくてはいけないことも。

夏の夜、人妻は今、一人で自宅にいた。

夫が不在なのは別に珍しくないが、今夜は、娘、理穂もここにはいない。

「今度、剛と海に行くから」

あの日以来、娘は彼のことを母親に名前で呼ぶようになった。その呼び方には、母親が深く戸惑うほどの親密さがあった。

水着姿の娘を、彼が見るのだ。だが、それがどうだっていうんだ。既に二人は、もっと深い関係にあるのだろう。

葉子はそれを信じ、一方で、それをまだ信じてはいなかった。

彼が娘を抱く光景を、葉子はとても想像できないし、したくもなかった。

一線は超えていないのかもしれない。どこかで、葉子はそんな淡い希望を抱いていた。

だが、娘の言葉が、母親の懊悩を簡単に打ち負かした。

「週末、泊まりで行くから。いいよね」

拒否することもできず、それをあっさりと許した自分。

自宅に連れてきたことは、こうした行為への容認を求めるための伏線だったのだろうか。

もはや、母親には公認の仲であるかのように、理穂は振舞い始めている。

葉子は怖くなっていた。

ここまでの生涯の中で、かつて抱いたことのない感情を、私は娘に対して感じ始めている。

人間として、それは許されるべきものではない。

だが、葉子は、女であることを、既に思い出してしまった。

彼と出会ったあの夜から。

女であることが、葉子に母親としての姿を忘れさせ、たとえ娘であろうと、そんな感情を抱くことを許している。

週末の夜、ベッドの上で、葉子は一人、座っている。

照明を付けることなく、周囲は闇に包まれている。

今頃、娘は彼と何をしているのだろうか。

闇の中で握りしめている携帯を見つめ、葉子は午後11時を過ぎていることを知る。

彼は、垣内剛は、今ごろ、海辺のホテルの一室で、娘と一緒にいる。

ここと同じように、暗い部屋の中で、二人は同じベッドにいるのだ。

生まれたままの姿で・・・・・。

目を閉じ、葉子は苦悶に顔を歪ませた。

彼が、娘を激しく抱く光景を、葉子はありありと思い描いた。

理穂が漏らす喘ぎ声を想像し、彼が激しく腰を突くさまを想像した。

二人の、快楽に溺れあう熱い息遣い。

葉子自身の呼吸が乱れていく。

激流のような嫉妬。

あなた、おかしいわ・・・・・・・・。

理性のささやきも、一人の女と化した人妻には、聞こえることはなかった。

葉子はベッド上で一人、服を脱いだ。

大胆に下着を脱ぎ去り、長い美脚を折り曲げ、そして、広げる。

敗北感は、しかし、押し寄せる興奮の波を止めることはできなかった。

葉子は指先をそっと動かした。

既に、たっぷりとした潤いがそこにある。

唇を噛み、腰を僅かに振り、指先を迎え入れた。

指を重ね、次第に激しく、往復させていく。

裸体を震わせ、汗を光らせたまま、やがて、葉子は顔を上に向け、唇を開き始める。

「あっ・・・・・・・・、あんっ・・・・・・・・・・・・・」

かすかな吐息が、寝室を妖しく、官能的に満たしていく。

シーツを濡らし、葉子はどこまでも激しく手首を運動させ、そして美乳を愛撫した。

ああっ・・・・・・・・・・・・・

火照った肉体が、彼を激しく求めている。

今ごろは娘を抱いている、彼の体を・・・・・。

昇りつめることのできぬまま、人妻はどこまでも自分自身を癒し続けた。

同じころ、違うベッドの上で、女のささやきが聞こえた。

「奥様のことが好きなんですよね」

腕の中にいる若い女性の言葉に、佐伯は珍しく言葉を失った。

「有名ですよ、私たちの中では」

「何がさ?」

「佐伯さんがずっとシングルでいる理由」

「聞いてみたいものだ」

「院長の奥さんを昔から狙ってるからだって」

まだ汗ばんでいる裸体を押し付けるようにしながら、女は佐伯に擦り寄ってくる。その乳房を愛撫しながら、佐伯は余裕を感じさせる声色で言葉を返す。

「幼馴染の妻を俺が寝取ろうとしてるとでも?」

「ええ」

密かに彼氏のことを想像しながら、女は佐伯の言葉を待った。

彼は巧みに話題を変えるように、言った。

「波多野っていえば、理穂ちゃんに最近彼氏ができたそうだな」

「ええ。この前、家に連れてきてましたよ、彼を」

「自宅に?」

「院長がいないときを狙ったように。奥様だけに紹介したんですね、きっと」

「やけに詳しいな」

「だって、私、見たんですから、理穂ちゃんの彼」

「見た?」

「ええ。それも2度」

自分が何を今から言い出してしまうのか、女は自分でもよくわからなかった。

ただ、自分の彼氏のことを考え、そして、彼とのこれからの生活のことを考えた。そして、随分裕福だという噂の佐伯のことも。

「佐伯さん、あきらめたほうがいいですよ」

「おいおい、俺は理穂ちゃんはまさか狙ってないぜ」

「違いますよ。奥様を、です」

木崎菜穂子は、悪女になった。


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Comment
No title
のりのりさんが別サイトで書かれてる『人妻コレクション』
第5章に登場する早水エリカさん。表現がおかしいかもしれないけど【そそのかす】キャラクターが好きでした。木崎菜穂子さんも似たようなキャラクターですね。のりのりさんの作品にはあまり出てこないようなキャラクターなのでわたしは気に入ってますm(__)m


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