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LOVE47(41)

2016 03 01
自宅の応接にいることを忘れてしまうほど、葉子は心を乱されていた。

どこか知らぬ場所に連れてこられたかのような、追いつめられた感覚。

自分をどうにか維持しようとするように、葉子は顔を僅かに上に向け、そっと瞳を開く。

見慣れた応接の風景が、弱いオレンジ色の光の中に確認できる。

テーブルの上には、飲みかけのウイスキー、アイス、ミネラルウオーターに加え、グラスが二つ置かれていた。

ここに、自分がもう一人の男と一緒にいることを、葉子は知る。

「動くなよ、奥さん」
彼の声が、背後から聞こえてくる。

応接の壁のそば、葉子は両手を後頭部に重ね合わせて置きながら、立ち続けていた。

既にシャツを脱ぎ去り、人妻の上半身を隠すものは官能的な刺繍が施されたブラだけだ。

紺色のタイトスカートに包まれた下半身を、葉子は密かに緊張させている。

これからこの男に何を求められるのか、人妻はどこかで怯え、どこかで妖しげな熱を感じていた。

「今夜は逃がさないぜ、奥さん」

何度か、この応接で佐伯に猥褻な行為を仕掛けられたことを葉子は想起する。

その都度、ぎりぎりの段階で葉子は彼の欲情を巧みに交わし、逃げ切ってきた。

彼もまた、乱暴に、或いは執拗に人妻の肉体を襲うような真似はしなかった。

だが、今夜は違うのだ。

私は、この男の言いなりにならねばならない。

至近距離に佐伯が立つことを、葉子は感じた。

すぐ背後に彼はいる。

葉子は、唇を噛み締めたまま、前を向き続ける。

彼がつばを飲み込むような気配を、葉子は知る。

それが、人妻の鼓動をどうしようもなく高めていく。

男は何もしない。

葉子の肢体に手を伸ばすこともなければ、息を吹きかけるような真似もしない。

無言のまま、背後からただ人妻の苦悶の姿を見つめているだけだ。

息苦しい。

今度は、葉子がつばを飲み込む番だった。

頭上で手を重ねたまま立ち尽くすことが、葉子に決定的な無防備さを与えている。

汗を感じるほどに、葉子は追いつめられていた。

「佐伯さん・・・・・・」

たまらず、葉子は前を向いたまま、ささやいた。

「どうした、奥さん」
「い、いえ・・・・・」

自分から声をかけておきながら、葉子は佐伯にどんな言葉さえも言えないことに気付く。

早く抱いてください、とでも言ってしまえばいいのか。

私を好きにしてください・・・・・・。

ずっとそうしたかったんでしょう、佐伯さん・・・・・・・。

朝まで私を狂わせればいいわ・・・・・・。

心の中で叫びながら、葉子は深い戸惑いを覚える。

その叫びが、まるで自分自身の欲望のように響いていたから・・・・・・・。

「何をされるのか想像してるのかい、奥さん」
「・・・・・・」

「教えてやろうか」
「結構です・・・・・・」

葉子は、佐伯の言葉を聞きたくはなかった。だが、彼は人妻をどこまでもいじめるように会話を続けた。

「奥さんが想像していることさ」
「・・・・・・・」

「奥さんが波多野と結婚してから、ずっと俺が妄想し続けてきたことだよ」
「・・・・・・・」

彼のささやきが、すぐ耳元で聞こえる。

それだけで、葉子は裸身に鳥肌を浮かべてしまう。

そして、彼の冷たい指先が、葉子の両わき腹を挟み込むように、突然、そっと触れた

葉子は、立ったまま、びくっと震えるように肢体を反応させた。

「47歳でこのくびれを維持しているなんてね。これじゃあ若い男も奥さんの体を欲しがるわけだ」
「そんな言い方しないでください・・・・・・」

「彼を侮辱されるのは嫌なのか?」
「・・・・・・」

人妻の腰の曲線を確認するように、男の指先がゆっくりと上下に動き始める。

くすぐったさが入り混じった妖しげな気配が、腹部から全身に拡散していく。

両手を頭上に置いたまま、葉子はもじもじと下半身を動かしてしまう。

「もう感じてるのか、奥さん」
「そんなわけありません・・・・・」

「奥さんが感じやすいことは知ってるさ」
「知ったようなこと、言わないでください・・・・・・」

「全く知らぬ仲でもないだろう、奥さん」

葉子の腹部をさすりながら、佐伯の手がゆっくり、ゆっくりと上に向かって動いていく。

彼の手の端が、人妻の白色のブラに届くようになる。

「ブラを外してやるよ、奥さん」
佐伯の言葉に、葉子は思わず首を振った。

「いやなのか、このホックを外されたら」
男の指先が人妻の背中で意味深に動く。ブラの紐の下に指先が入り込み、葉子の乳房を刺激するようにその紐を持ち上げる。

「困ります・・・・・・・」
「ほんといい胸をしてるよな、奥さんは」

「・・・・・・」
「どうしても外してほしくないのかい、奥さん」

「はい・・・・・・」

無駄な抵抗と理解しながらも、葉子は背後の男に懇願する。それを想像していたように、佐伯は笑みの混じった声で、そっとささやいた。

「じゃあこう言うんだ、奥さん」
「・・・・・・」
「代わりに私の胸をブラの上から揉んでくださいって」

肢体を熱くしたまま、葉子は顔をうつむかせ、唇を噛んだ。

人妻を追い込むように、男の指先がブラの紐を引っ張り続けている。


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